概要
1974年に藤子・F・不二雄が『ビッグコミックオリジナル』に掲載した短編SF漫画。
人の思い出、ことに子供時代を過ごした故郷を思う”郷愁”がどれほど人を狂わせるのかを描いた異色作であり、藤子作品の中でも特に人間模様が生々しく描写されている。
あらすじ
太平洋戦争で一人孤島に取り残され、30年ぶりに日本へ帰郷した浦島太吉。
しかし、故郷の村はダムの底に沈んでおり、両親は既に他界。更に男女の契りを交わすことなく離別した妻すらも太吉に操を立てたまま亡くなっていた。
もう会えぬ家族らのことを想いながら、太吉は足を一歩一歩進めていく。そんな中、太吉は少年時代より座敷牢に長年閉じ込められていた気の触れた老人の存在に思い至り、老人の視線が時折、自分の生活を覗き見していた事に気がつく。
すると、目の前に見覚えのある風景が見えてきた。
目を疑いながらその先へ進んだ時、彼は驚くべき光景を目撃する……
余談
ネット上では座敷牢に閉じ込められた「気ぶりの爺さま」が、「抱けえっ!抱けーっ!」と絶叫する一コマが有名。「俺ちょっとやらしい雰囲気にして来ます!」などと同様に、漫画やアニメなどのじれったいカップルの恋愛成就を願う際に発せられることが多い。
ただ、作中でのこの台詞は単に下世話な発言ではなく、かなり重い背景を持つ台詞であり、ネットから興味を持って読んだ人は「ネタだと思って読んだら笑って良い内容じゃなかった」と愕然とする事も多い。
また、この作品が元ネタのスラングとして、くっつきそうでくっつかない二人に対し「とっととくっつけ!じれってぇな!」となる心境を「気ぶる(気ぶり)」と言うが、本来は「気が触れる=気触る」の意味で「キチガイ」「頭がおかしい奴」を指す、スラングと知らずに大っぴらに言うのはかなり良くない誤解を生むので注意しよう
(とはいえ「イカれている」「キチガイ」「ガイジ」等直接的な罵倒表現が増え、かつそれらが規制されている昨今、「気が触れる」はともかく「気ぶる」「気ぶり」という表現は使われなくなって久しいので単に通じないだけになる可能性もあるが)
関連項目
横井庄一 - 主人公のモデルとなった実在人物