概要
AGM-88は、アメリカ合衆国で開発された対レーダーミサイル。
英名のHigh-Speed Anti Radiation Missile(高速対輻射源ミサイル)を略し、「HARM」(ハーム)とも呼称される。
High-Speedは前任のAGM-45シュライクよりも高速との意味だとされる。
敵防空網を制圧するために戦闘機から発射され、敵のレーダーの電波を探知し、発信源に突っ込んで攻撃する兵器である。1983年からアメリカ軍で運用が始まり、1991年の湾岸戦争でもイラク軍の防空網を制圧すべく多数が使用されている。近年はウクライナ侵攻でウクライナ空軍に供与され、MiG-29やSu-27など旧ソ連製戦闘機にも搭載して運用されている。
最大射程は推定100km以上。改修を重ねることで現在も用いられており、比較的新しい改良型のAGM-88Dでは、敵がレーダーを止めてもその座標を記憶してGPS誘導で突っ込むようになっている。
発展型
- AGM-88E AARGM:AGM-88の改良型。名称はAdvanced Anti-Radiation Guided Missile(先進対レーダーミサイル)を略した「AARGM」に変更されたが、外観の変化は少ない。しかし複数の種類のセンサーを搭載することで高精度化を果たしている。冷戦終結後、以前まで敵対していた旧ソ連構成国の東欧諸国がNATOに加盟し、味方が旧ソ連製レーダーを用いた場合に誤爆する危険性が高まったことで開発された。
- AARGM-ER:AARGMの発展型。射程をさらに延長し、F-35ステルス戦闘機のウェポンベイに収納すべく翼を小型化。Extended Range(射程延伸)を略した「ER」の文字が付与された。設計的にはもはや別物レベルとなっている。
なお、AARGMの方は今まで通り「HARM」の愛称で呼ばれる場合がある。