概要
レーダーや通信施設などから輻射される電波を受信し、電波の発信源に突撃してそれらを破壊するための対地ミサイル。対輻射源ミサイルとも。英語ではAnti-Radiation Missileと表記され、ARMと略される。一般的には戦闘機などの航空機に搭載されて運用される。
戦闘機や爆撃機にとって、地上にレーダーを置いて長距離から地対空ミサイルを撃ってくるSAMサイト(地対空ミサイル陣地)は非常に厄介な存在であり、早急な無力化が求められる。しかし無誘導のロケット弾や爆弾でSAMサイトを攻撃するのは、敵の射程圏内に突入するので非常に危険である。これをどうにかすべく、敵SAMサイトの射程よりも遠くからSAMサイトのレーダーを無力化すべく、ベトナム戦争にてアメリカ軍が実用化した。
仕組みは至ってシンプルで、上記のように敵の電波発信源向けて突っ込んでいくだけである。敵が対レーダーミサイルを回避するにはレーダーを止めるだけで良いが、そうなると敵機の位置が分からなくなってしまうというジレンマに陥るため、対処が難しい。電波妨害で阻止しようものなら、その電波妨害用の機器に突っ込まれてしまう。
しかも探知したミサイルを避けるために一時的に切るという方法では、レーダー波を探知できなくなると上昇してパラシュートを開い上空て対空して待機してレーダーの再起動を待つ対レーダーミサイルに対処ができなくなってしまう。また、レーダー波の発信源の位置を記憶してそこに向けてINS(慣性航法装置)やGPS誘導で自律飛行する対レーダーミサイルもあり、単にレーダーを止めるだけでは守り切れず対空機関砲などでの迎撃が必要となるが、そうなると移動式のミサイル発射設備は大掛かりとなってしまい、隠れて移動することがむずしくなるので発見率が上昇してしまう。
主な対レーダーミサイルとしてはアメリカ合衆国製のAGM-88、イギリス製の上空待機能力を持つALARMなどが有名。日本では運用されていないが、航空自衛隊の対艦ミサイルであるASM-1やASM-3は終末航程にアクティブ・レーダー・ホーミング誘導を用いることから、対レーダーミサイルとして転用できると一部で主張する声がある。