ASM-3
えいえすえむすりー
ASM-3とは、日本の防衛装備庁が航空自衛隊向けに開発した超音速空対艦ミサイルである。
固体燃料ロケットとラムジェットエンジンを複合した「統合推進システム」により、最高速度マッハ3以上を発揮する。
パッシブ、アクティブのレーダー誘導システムを組み合わせて敵の電子妨害に対抗し、命中率を格段に高め、敵の迎撃可能圏外から発射することで、発射側の機体は安全な攻撃が可能となる。
F-2戦闘機に最大2発搭載して運用されるが、F-2に最大4発搭載可能だった既存のASM-2と比べると搭載数は減っている。
試作型の"XASM-3"と、それを元にした射程150kmの"ASM-3"の導入が当初予定されていたが、近年目覚ましく能力向上を続ける中国海軍に本ミサイルでは対抗できないとして、導入中止。
代わりに射程400km程まで延伸した射程延伸型の"ASM-3(改)"の開発を開始し、それまでの繋ぎとしてXASM-3をベースに「改」の開発途中の成果を反映させ射程延伸させた"ASM-3A"を量産、2021年から所得を開始している。
ASM-3Aは「改」程ではないとされるが、推定で射程300kmに達すると言われる。
対艦ミサイルというのは対空ミサイルとはかなり違った性能を求められる。何しろ対象が、戦闘機とは比べ物にならない大量のレーダーと迎撃用兵装を兼ね備えた艦隊である。
そのためこれまでの対艦ミサイルは、(できることなら)敵のレーダー視程外から発射できる長射程と、レーダーから逃れるための低空飛行能力を求められた。
一方で速度性能は軽視される傾向にあり、例えば空自で現役のASM-2は1,150km/hほど、米海軍のハープーンミサイルも時速1,040km程度で、音速(1,224km/h-マッハ1)にも届いていない。AAM-4やAIM-120のような空対空ミサイルがマッハ4だの5だのでかっ飛んでいるのと比べると、これは非常に遅い。
地面、海面近くの標的は、地面や海面に反射するレーダー波に紛れてしまう。そのため昔からレーダーというのは地面、海面近くを見張るのを苦手としており、遠距離となれば水平線下の飛行をしている航空機の探知は難しく、速度性能を犠牲にしても、低空飛行を徹底すればレーダーの目から逃れることができた(フォークランド紛争ではイギリス海軍の艦隊が攻撃を受けている)。
ミサイルとしては低速であっても、マッハ1の飛翔体に比べればたかだか時速数十キロでしか進めない艦艇など止まっているも同然であるから問題がなかった、というのもある。
しかし、艦艇のレーダー性能や近接防空システムの性能が向上し、更に艦載機による空からの目視やレーダーによる警戒も加わり、低空飛行程度では誤魔化しが利かなくなってきた。
そのため次の対策が同時に数を撃ち込んで防空システムを飽和させるというものだが、搭載する機体の機動性とのトレードオフであったり、そのために多くの戦力を割かねばならなず想定される損耗も馬鹿にならない、単独の艦を相手にするならともかく艦隊相手ではすべての防空システムを飽和できるだけの数を用意するのは難しいといった問題から、限界があった。
更に次の対策が「レーダーの反応速度を超えて命中させる」というものである。敵艦のレーダーが反応し、コンピュータが脅威判定、ミサイルや主砲に情報を入力して発射、迎撃、そして近接防御火器システムによる自動的な最終防御、この全ての作業が終わる前に突っ込んでしまえばいい。
そんな非常に思い切りのいいコンセプトのもと開発されているのが、このASM-3である。2014年11月の岐阜基地航空祭において初めて一般公開され、2017年には退役護衛艦「しらね」を標的とした発射試験が行われた。
2019年に量産開始を見込んでいたが、これを中止。中国海軍のさらなる能力増強(近々に米海軍並みの超水平線射撃能力を持つことが予想されている)に本ミサイルでは対応できないと判断され、より長射程の射程400kmクラスの改良型"ASM-3(改)"の開発を目指すことになった。2021年からは、XASM-3にASM-3改の開発で得られた技術をもとに改良を施した"ASM-3A"を導入開始しており、こちらはあくまでASM-3(改)導入までのつなぎとみられる。