概要
「超・モンスター事典_奈落の彼方に(以下、『超モンスター事典』)」とは、ゲームブックシリーズ「ファイティング・ファンタジー(以下、FF)」シリーズのゲーム内世界「タイタン」に登場する、各モンスターのデータ集である。
著者はアンドリュー・ライト。
原題は「BEYOND OF THE PIT」。
「モンスター事典_奈落の底から」の続編で、同作に未収録のモンスターや種族、及びFFシリーズの新作(日本未訳作品)に登場するモンスターを主に取り扱っている。
また、それに伴い、舞台となるタイタン世界の知られざる未開の地域、新作にて明らかになった地域なども、一部だが記載されている。これは「タイタン」には未収録(ただし、地図上で記されているだけで、解説は書かれていない)。
元は90年代のネット黎明期に、FFシリーズのファンたちはネットを介して繋がり、そこから「モンスター事典の新作」を希望する声が上がるように。
実際、FFシリーズの後期に登場するモンスターたちは数多く、それらのデータベースの必要性はあったものの、膨大な量ゆえに関係者たちは二の足を踏んでいた(加えて、既存作品に登場するモンスターでも、「モンスター事典」に未収録のものも多かった)。
さらに、ファンやFFシリーズの関係者たちなどが、独自に追加のモンスター事典をまとめる事も行っており、FFシリーズ公式サイトにも不完全ながら「超・モンスター事典」が掲載されていた。
これらを時間をかけてまとめ上げ、一冊の書籍にしたものが本書である。
また、TRPG「アドバンスド・ファイティング・ファンタジー(以下AFF)」の改訂版を出す事も関係している。
日本でも書苑新社より、2020年に邦訳版が出版された。
その内容は、「モンスター事典」同様に、
1:ゲームブック作中に登場する各モンスターの解説。
2:TPRGとして遊ぶとき、モンスターのデータブックとして活用してもらう。
という狙いで書かれており、モンスターのデータ以外にも、タイタン世界の新たな地域を記した地図も併録されている。
内容
「モンスター事典」とほぼ同じため、詳細はそちらを参照。
ただし、AFFに対応するため、以下の三点が追加されている。
- 武器:モンスターが戦闘で使用する武器のタイプを表す。素手で戦う、または最初から武器を持たない・持てないタイプのモンスターであれば、それに準じる記載がされている(爪や牙、触手や尻尾など)。
- 防具:同じく、戦闘でモンスターを守る鎧のタイプを指す。これも鱗や毛皮など、モンスターに準じた記載がなされている。
- ダメージ修正:モンスターの強弱により、ダメージの値に咥えられる修正の有無。
収録された代表的なモンスター
やはり膨大な数の為、他作品にみられないと思しきものに留める。分類に関してもモンスター事典を参照。
なお、「モンスター事典」掲載されたモンスターは250種だが、本書は270種のモンスターを掲載している。
ドラゴン(竜)
本書で、タイタンにおけるドラゴンは6種(赤、黒、白、緑、金、銀)に分類され、それぞれが伝説に伝わる「竜の議会」で代表権を有する……と記載された。
後に、他のタイプのドラゴンも存在することが明らかに。
- シードラゴン(海ドラゴン、海竜)
「深海の悪魔」にも登場した、海洋に棲むドラゴン。
前脚と翼を欠き、蛇を思わせる。ブレスは水中では用いず、海岸・海面で遭遇し、戦闘に陥った場合、煮えたぎる海水のブレスを吐く。
強欲で、商船や海賊船を襲い宝物を略奪する事を好む。また、水中の住処に到達した冒険者には、二枚の金貨を打ち付ける事で呼び出す契約を結ぶ事もあるらしい(ただし、約束を破り召喚者を襲って食う事も珍しくない)。
アトランティスの海底に棲むものも居れば、旧世界ガランタリアやフェンフリィ西岸の沖合「ウナギ海」にも見られる。
また、クール・八幡国の霧深い奥地に存在する「緋色の仏塔」には、魔法の庭園が存在し、そこにはシードラゴンの巨像が安置。まれに生命を得て、周囲に襲い掛かることもあるらしい。
- ブルードラゴン(青竜)
青い鱗を持つドラゴンで、希少種。山頂や遺跡、砂漠の最奥などに棲み、集めた財宝とともに他のドラゴンを憎み続けている。
ブレスは雷撃。
かつてドラゴンの神キラニラックスが、嵐の神スークへと贈ったドラゴンの一族が先祖で、その末裔がブルードラゴンという伝説が残っている。それゆえか、竜の議会の一員と認められておらず、それが憎悪の原因となっている。
地域の君主やウォーロードなどと手を組み、疎外者と開き直ったり、その背に乗せて戦争に参加したりする者もいる。
- 龍(タツ)
「サムライの剣」に登場した、翼を持たないが飛行できるドラゴン。八幡国の隔絶された場所などに棲息している。他に、ザマーラの都市国家や、旧世界の南の果て「神々の金床」にも存在するらしい。
希少な種であり、グレーターおよびレッサーの二種が存在する。前者は更に希少。
非常に賢く、旅先で出会った者に対しては神聖な儀式……謎かけを求める。勝てばそのまま旅を続けられるが、負けたら食われる羽目になる。
戦いに際しては牙と爪の他、口から吐く火炎を用いる。
魔術を使用する龍も知られており、幻影の兵士に巣穴を守らせたり、嵐を起こし稲妻を落とすといった呪文を用いる。
これらの魔力の源は、頭骨に埋まった魔法の宝珠によるもので、入手出来たら値段が付けられないほどの価値がある。
上記謎かけに成功した者や、宿敵スターラマックを倒すなど手助けした際には、まれに龍の形のヒスイのお守りを入手する事がある。これは所有者に幸運をもたらしてくれる。
- スターラマック
ドラゴンに似ているが、ワイバーンの近縁種。脚は二本。
八幡国やシオズイイ山脈の人里離れた高地、曙群島などに棲息。
全体的にワイバーンに酷似しているが、頭から背にかけ魚のヒレ状のたてがみがある。また、鼻づらが短く、その顔はドラゴンより猫に似ている。また、腹部には、表皮に無数のウジまたはミミズに似た虫を張り付けている。
牙と爪の他、エネルギー状の火炎の矢のブレスを吐いて攻撃する。
また、敵から放たれた呪文の魔法エネルギーを吸収する能力を有する。呪文で攻撃されても、ダメージを受けず回復してしまう。
さらに、腹部の虫を、敵の頭上に大量に落として攻撃する事も可能。この虫どもは食欲旺盛で、防御の手段がない限りは生きたまま貪り食われるはめになる(即死攻撃に該当する)。
この虫は、スターラマックの幼生ではないかという説がある。
アンデッド
- ゴースト(亡霊)
死者の魂。何らかの行いを遂げる事で解放(成仏)するまで、霊界(スピリットプレーン)と現世の間に囚われている存在。通常は燐光とともに生前の姿、または死の瞬間の姿で出現する。
スペクター(悪霊)やレイス(死霊)と異なり、ゴーストの多くは生者への憎しみは無い。自身が解放される手段と引き換えに、伝承や財宝の情報を提供する事もある(ただしこの場合、断ったら呪いや災いが降りかかる事もまた多い)。
しかし生者への憎しみは無くとも、自身の運命に屈服し、邪悪なアンデッドになる者も存在する。その場合、銀や魔法の武器、魔法、僧侶や司祭の祝福などが無ければ、此方からの攻撃手段は存在しない。
マジックアイテム「精霊の扉」……肉体を持たないアンデッドの侵入を防ぐ黒檀の扉で、全てのゴーストは防ぐ事が可能。
また、「スピリット・トラップ」という銀の鎖付き虎バサミで捕獲されると、銀のフラスコに移され、ゴーストは保管されてしまう。
特定の地域に強い結びつきを持つゴーストの場合、先祖に呼びかけ鎮める事で、協力的な存在になる場合もある。
タイタンには、下記の特殊なゴーストが確認されている。
:アイス・ゴースト(氷幽霊)
「甦る妖術使い」に登場。冷風が吹いてから、苦痛に歪む顔とともに出現。叫び声とともに襲い掛かってくる。
飛び去るのを避けられず、触れてしまったら、強烈な震えとともに蒼白になり、気を失う。この時点で司祭の癒し、または冷気を体から吸い取る魔法の小石を額に当てる事ができれば、体力は失うが復活できる。
しかしそれらの手段がない、またはアイス・ゴーストに二度触れられた場合、体温低下で死亡した後、犠牲者の死体は蒸発。その魂は新たなアイス・ゴーストと化し、付近にいる仲間に襲い掛かる。
:サルファー・ゴースト(硫黄ゴースト)
「城砦都市カーレ」に登場。火山地帯や荒野を彷徨うゴーストで、これらの場所で死した者の魂と言われている。生者に対しては即座に襲い掛かり、その身体を構成する毒の気体で窒息死させる。
- スペクター(悪霊)
ゴーストと同じく霊的存在のアンデッド。しかしこちらは、悪意と生者への憎しみに満ちている。通用するのは魔法および魔法の武器のみで、通常の武器はもちろん、銀製の武器も通用しない(すり抜けてしまう)。また、「スペクターベイン」という魔法の混合液を、魔法の武器に塗って攻撃すると、僅かな時間だが追加ダメージを与えられる。
グレーターとレッサーとがあり、通常遭遇するのはレッサー。
グレーターは、生前強力な戦士や術者だった者がスペクターとなった存在。当然、此方の方が数は少ないがはるかに強力である。
- デス・スカル
浮遊する、巨大な漆黒の頭蓋骨。眼窩と顎から鮮血を流している。
あまりに恐ろしいため、初めて遭遇した者は、自動的に技術点と体力点を減らさねばならない。噛みついて攻撃し、相手を殺した後にその魂を貪り食う。
ある島では裁定者として召喚されており、無価値と判断した者の魂を食らうらしい。
- スカル・ビースト
死霊術師が召喚するアンデッドモンスター。巨大な頭蓋骨を、蜘蛛を思わせる骨の八本脚で支えている姿を持つ。口からは触手状の長い舌が四本あり、これを長く伸ばして獲物に巻きつけ、口の中に引きずり込む。
逆に攻撃しても、本体の頭蓋骨は堅く、打撃系の武器でなければダメージは減らされてしまう。
倒すと爆発するが、悪臭と骨粉とともに、影が残される。この影は、強力なマジックアイテム製造の材料となる。