どんな子供も大人になり、いつか働く日がくる…はずだが…。
(コロコロアニキ第4号より)
概要
1971年にCOM4月号に掲載された「白い童話シリーズ」の4作品目。コロコロアニキ第4号に再録。
当時は社会問題化していなかった引きこもりをテーマに描いているため、現代社会の予言した作品として評価されている。
藤子氏によると子供の頃にいじめられて学校に行くのが嫌だったことを思い出して描いた作品で、当時実際に聞いた話などを元に描いたわけではないとのこと。
また、掲載当初は坊一郎は医者に「一種の自閉症」と診断されているが、現在この台詞はカットされることが多い。おそらくは自閉症=引きこもりなどの偏見を助長しないような配慮と思われる。
坊一郎が行けなくなった理由はカウンセリングや相談所等、現代ではどうにかできるものの、
当時ではそれらががなかったため劇中の医者が引きこもりを助長させることを言ってしまった。
登場人物
田宮坊一郎
「だめだー、もう会社にいけない!!」
本作の主人公。
東西大学国文学部を卒業し、大丸商事株式会社に就職が決まったが、気の弱さからか、入社1日目に社屋に入るのを躊躇し、その行動を不審に思った守衛に厳しい口調で何の用があるのか問われその場から逃げてしまい、そのまま無断欠勤、帰宅後に両親から就職祝いをされ、期待の言葉をかけられたことや、後述の中田が仕事にやりがいを感じてることに負い目を感じたのか結局会社には一度も行けず、医者に「勤めにでることができない病気」と診断され、そのまま引きこもりになる。
それからは毎日部屋でただジッとして過ごす日々を送る。
坊一郎の母
「坊一郎や、つらいだろうけど、じっと耐えるのよ……」
とにかく過保護な性格で、坊一郎におやつの大福やこづかいを持たせ、疲れたらタクシーで帰ってきなさいとまで言い出す始末。
人によってはこの母の言動もかなりキツイだろう。
元々は太っていたが、坊一郎が引きこもりになってからは心労からか痩せ細っている。
坊一郎の父
「これでやっとわしも肩の荷がおりたよ、おまえを一人前のサラリーマンにするのが、わしの責任だったからな……」
母と違って、これから社会人になる坊一郎に対して心を鬼にして接している。まあ坊一郎より過保護な妻に対して怒鳴ることのほうが多いが。
それでも坊一郎のことは心配なようで、会社を早びけし、坊一郎の帰宅時には妻とともに迎えに出ている。
坊一郎が引きこもりになったあとも家計を支えるため老齢ながら仕事を続けている。
中田
「まさかこの時間に出勤じゃあるまいな!」
坊一郎の同級生と思われる青年。
広告代理店に就職し、入社そうそう買いかぶられ、やたらと仕事をおしつけられ閉口しているが、学生時代と違うシビアーな世界にはりあいを感じている。
守衛
「ちょっとあんた! うちの会社になんか用あるのかね!」
大丸商事の入り口をうろつく坊一郎に対して、やたら高圧的な態度で声をかけたことで、間接的に出社拒否の原因を作った人物。
これは本作が発表された1970年代は日本赤軍などの過激なテロ組織が積極的に活動していたためと推測されている。
医者
「しばらくは家ですきなようにブラブラのんきにさせておくことですな…」
坊一郎の診察した医者。
彼の状況をある程度は理解したものの、結局上記のアドバイスをしてしまい最悪の結末を迎えてしまった。
何故そんなアドバイスをしてしまったかは前述した通り、1970年代坊一郎のような人を助ける手立てや治療法等まだ手探り程度だったため、彼が立派な医者であろうともこのアドバイスをせざる得なかった。