斎森美世
さいもりみよ
概要
『わたしの幸せな結婚』の主人公にしてヒロイン。物語冒頭時点で19歳。
没落しかけた旧家・斎森家の娘として生まれたが、政略結婚だった両親に愛はなく、生まれて程なくして実母は他界、実父と継母、そして異母妹に虐げられる日々を送る中、久堂清霞との出会いにより、それまで知ることのなかった幸福を享受しつつ、自身の血脈にまつわる困難に立ち向かっていくことになる。
人物
癖の無い真っ直ぐな黒髪を持つ。左目の下にほくろがある。母親似。
継母と異母妹には(特に異能を持たないことを発端として)「美人でも無い」「何の取り柄も無い」「長所の一つもない」「出来損ない」と散々に蔑まれてきた。
(継母と異母妹は美世を貶めるのが目的で蔑んでいるので当てにできるような評価ではない)
呉服屋『すずしま屋』の女主人・桂子曰く
「あの方はいわば原石ですわ。あの髪も肌もお顔でさえも!計り知れないほどの伸びしろがございます。磨けば(清霞を指して)お坊ちゃんと並んでも遜色がないほどの美人になりますわ」
と美世の魅力を絶賛する。
また清霞から見ても「決して不美人ではない」と評価されていることから、
世間一般から見た美世の評価は美人と言える。
実家で使用人以下の扱いを受けていたことから家事全般はお手の物。
裁縫は自身の着物がほつれたら自ら針を持って修繕できる。
料理の腕も高く、作った料理を食べた清霞も「上手い」と絶賛する程。
令嬢らしい教育(茶道・華道・舞踊等)は幼いころは受けていたが、継母(香乃子の嫌がらせ)により辞めさせられた。尋常小学校を出た後は女学校にも通わせてもらっていない。
清霞と婚約後、美世は清霞の妻となるのにこれまで令嬢教育を受けていないことが不安になった。後日、清霞の計らいにより清霞の姉で後の義姉となる久堂葉月から令嬢としての教育を受けることになり、葉月との交流が始まる。元々美世が怜悧な性質であったこと(アニメ版では筆記の上達が見られる描写がある)本人の並々ならぬ努力のおかげで葉月も驚くほどの淑女としての教養を身に着けることになる。
生い立ち
異能者の家系及び異能者の両親を持って生まれながら見鬼の才を持たず、実母・澄美を亡くしてからは継母・香乃子とその娘・香耶に毎日のように虐げられてきた。
(判明している限り)
- 容赦無く熱い茶をぶちまけられる(漫画版・アニメ版では顔にかけられている)
- 美世を貶める内容の暴言を吐かれる
- 美世の分の食事を用意しない上に食卓を囲むこともしない(食事は美世自身で用意し、一人で食べていた様子)
- 着物や日用品といった生活必需品も買い与えられない(着物は斎森家にいた歴代の使用人達から譲り受けた古着を着ていた)
- 元々持っていた実母の形見や高価な品々は取り上げられるか壊される。(特に澄美が着用、使用していた日用品や着物は香乃子に処分された)
- 使用人のように大量の家事全般を言いつけられる
父親の真一との関係
父親・斎森真一は、異能が無いと見なした美世には何の期待もしておらず、また酷く疎ましがられている。そのため美世には基本的に無関心、更に前妻・澄美との結婚の経緯から香乃子に負い目があるため、香乃子ら母娘の所業を諫める事も無い。
真一の態度が美世への虐待が激化した遠因と言える。
(真一の性格や態度から、美世だけでなく香耶に対しても本当の意味で父親としての愛情を与えていないのではないかと見る読者もいる)
漫画3巻書下ろし小説では、美世は斎森の家から独立を願っていた時期があり、女学校への入学か独立を懇願したが、外に恥を出したくないと理由を付けに真一は承諾しなかった。
また漫画版3巻、実写映画版では真一が美世への暴言を発言し、清霞を激怒させた。
継母の香乃子との関係
継母・斎森香乃子は恋人だった夫との仲を引き裂いた元凶の前妻・澄美への憎悪から、澄美の娘・美世に対し「泥棒猫の娘」と評し暴言や暴力等で辛く当たり、名前を言うことすら嫌なのか美世のことは「あれ」と呼んでいた(だが後半になっては「おまえ」に変わっていた)。美世には良家の令嬢らしい教育を受けさせず、尋常小学校のみ通わせた以降は女学校にも通わせず、更に嫌がらせで令嬢が受けるような稽古などを辞めさせた。また着るものや食べるものといった生きるのに必要最低限のものすら与えない(美世の分の食事は自分で用意したり、着物は元使用人からのお下がりを着用していた)といった、現代では虐待やネグレクト、育児放棄と言ってもおかしくない扱いをしていた。
また実娘の香耶に対しては「(美世を指して)あれと同じになってはいけない」と幼少の頃から歪んだ価値観を植え付けたり、少々の失敗も許さないほどの厳しい教育を施し、更には異母姉にあたる美世とは普通の姉妹らしい関係性を作らせるどころか、美世を下に見るように仕向けた。
(上記の教育方針から、読者の中には香耶に対しても本当の意味で母親らしい愛情を与えていないのではと見る人もいる)
異母妹の香耶との関係
異母妹・斎森香耶とは(上記の香乃子の教育もあり)姉妹仲は悪く、異能も教育も恵まれた環境で溺愛されて育つ香耶からは「何もできないお姉さま」と日々蔑ろにされており、香乃子と一緒になって毎日虐められていた(一見恵まれた環境で育っている様に思えるが、両親共に香耶に対して最も身近な家族で実の姉である美世への思いやりや気遣いを躾ける様子もない、教育方針が香耶の将来を真剣に考えているとは思えない言動が感じられる描写がいくつかあるため、読者の中には香耶も美世と同じく本当の意味で愛されていないのではと考察されている)
美世は異母妹・香耶には特に苦手意識を持っており、1巻の中盤(アニメ4話)にてゆり江と一緒に買い物に行った際偶然再会した香耶から暴言を吐かれても言い返す事もできず立ち尽くしてしまい、自己嫌悪に陥ったこともある。
※後から合流したゆり江は「(美世が久堂家で使用人として扱われていると決めつけた上で)使用人の同僚か?」と問う香耶に対し「(美世は)使用人の同僚ではなく旦那様の妻になる方」と否定している。(ゆり江の性格上やんわりと接しているが、香耶の発言は「久堂家は嫁いできた女性を使用人扱いする家か?」と言っているようなもので久堂家に対して大変失礼な発言である)
上記の経緯や幼少期の経験から美世自身も、彼らには何を言っても無駄と思い、我慢を重ね続け、笑うことも怒ることも出来ず己の人生を諦めていた。
そのせいか「自分に価値はない」と思い込んでおり、何事に対しても悲観的で卑屈な考え方をしてしまうことが多かった。
斎森家の使用人との関係
また使用人以下であるため斎森の屋敷で働く使用人たちと仕事をしているが、香乃子と香耶の嫌がらせに無関心を貫く者ややるせない気持ちになる者もいるが、解雇や罰を恐れて見て見ぬふりをしている。
そんな状況でも美世を気にかけてくれる使用人はわずかにいたが(アニメ版1話では、女中頭の女性が美世が嫁ぐ前日に道中で食べる用にとこっそり食べ物を渡しに来たのと、清霞の悪評を伝えに来た)表立っての手助けは香乃子の目もあってか難しかった様子。
かつて斎森家で働いていた使用人の女性・花は、美世に対して親身になって味方をしていた数少ない一人であった。過去、香乃子が澄美の遺品を勝手に処分したことを美世が追求、激高した香乃子は美世を蔵に閉じ込めた。花は香乃子の所業を非難し嗜めようとしたが、香乃子の怒りは収まらず強引に解雇され、以降花は斎森家に近づくことも出来なかった。
花の解雇以降の美世は、余計に風当りが強くなり孤独な状況になった。
漫画1巻の書下ろしでは美世を密かに気にかけていた使用人で、香乃子から受けた怪我をした腕を手当てをしてもらい、斎森家から受ける虐めを見て見ぬふりをしてきたことへの謝罪を直接受ける。その際に手持ちの櫛を貰い、久堂家に嫁いだ時にも唯一の身だしなみとして使っていた。
幼馴染みの辰石幸次との関係
斎森家での辛い日々の中でも常に側にいてくれた幼馴染みの辰石幸次の存在は美世の心の支えであった父親の意向で異母妹・香耶と婚約することになった時は(半ば実家を追い出される形で久堂家に嫁がされることになっていたこともあり)内心激しいショックを受けていた。絶望の余り幸次の言葉も聞こうともせず、そのまま久堂清霞の元へ嫁がされる。
(当初は幸次に対し好意のようなものを寄せていた節があったが、原作者は「美世は斎森家で生きることに精一杯で恋愛する余裕はなく、故に幸次に対して恋愛感情は抱いていなかった」旨をツイッターにて発言している。また後の美世の述懐では実家でのつらい状況から脱するために幸次との縁談を望んでいたという描写があり、美世が幸次のことを好きだから縁談を望んだという訳ではないことがわかる)
美世の嫁入り支度について
作中世界に最も近いモデルとなる時代(明治・大正時代頃)は、女性は嫁ぐ際に実家から
- 鏡台
- 桐箪笥
- 訪問着、留袖、喪服等の礼服に準ずる着物一式
- 普段着や下着等の衣類一式
- 婚礼布団一式
- 着物等を入れるための長持・行李
- 裁縫道具一式
- 化粧道具一式
- 宝飾品類
- その他個人的に思い入れのある品物
(時代背景や地域ごとの事情もあるので一概には言えないが)
主に上記の品々を嫁入り道具として用意して嫁ぐのが一般的であった。
本来、嫁入り道具は実家からの財産分け(生前贈与)の意味合いもあるが、婚家に対して嫁の実家は娘にこれだけの支度ができる家という権勢を世間へアピールする意味もある。
また、当時は嫁の立場が現代人が想像する以上に弱いので、婚家で娘が恥ずかしい思いをしないように嫁入り道具はできるだけ良いものを持たせ、嫁実家の威光を示し娘の立場を守ろうとした。そのため、嫁実家は多少無理をしてでも豪勢な嫁入り支度を行った背景がある。
だが、斎森家が美世に用意したのは新しい着物一着のみ、残りは美世一人で持ち運べる程度の荷物があるだけだった。
そして嫁入りの際の付添いは道案内の女中一人のみ(しかも道案内の女中は途中で帰宅)
結果美世一人で久堂家を訪れた。
※アニメ版1話では真一の用意した真新しい着物を着用し(髪型はいつも通りで化粧もなし)古びた着物数枚と歯の欠けた櫛(漫画1巻では味方だった使用人から譲り受けたもの。アニメ版では澄美の形見であったが、香乃子に草履で踏みつけられ損傷した)のみをまとめた巾着一つに入る程度の荷物だけの身支度の上、家族や使用人の見送りや付添も無く一人で家を出て、久堂清霞の家まで徒歩と電車を乗り継いで向かっている。
この時代、治安上の問題から通常時でさえ良家の娘が一人で出歩く事はあり得ない事態である(戦前の日本における中流階級以上の人間が外出するときは一人で出歩くことはほぼ無い。使用人が同行するのが原則)ましてや嫁入りという娘の晴れの日に仲人や付添人すらいないことについては言うまでもない。
上記の美世の嫁入りの用意は名家の娘が大身の家に嫁ぐにしてはあまりにもお粗末としか言えない嫁入り支度と言えた(後に清霞が斎森家の態度を不審に思う理由の一つとなった)最低限以下の嫁入り支度で娘を嫁がせることは、双方の家の面子を潰すことにもなる。
上記の嫁入り支度は、斎森家は久堂家を侮辱していると疑われてもおかしくない失礼極まりないものだった。
また、美世の嫁入りが粗末な理由として考えられるのはできるだけ美世に惨めな思いをさせたいからという香乃子の悍ましい意向が反映されていると思われる。
久堂家に美世を嫁がせた理由として考えられるのは
- 美世を体よく追い出す口実として、たまたま来ていた久堂家からの縁談を利用した(斎森家としての意向)
- 世間では冷酷無慈悲と恐れられる清霞の元で、美世を更に惨めな境遇に追い込んで溜飲を下げたいから(香乃子の意向)
- 久堂家から美世が追い出されようが、適当な理由を付けて出戻りを許さなければ家に戻ってこないように仕向けられるから(真一の意向、辰石実とのやり取りで言及)
香耶も美世を絶望させるためと自身が勝ち組として優越感に浸るために幸次との婚約を結んだが、実際は婚約後も内心両者良好な関係ではなく(そもそも香耶も幸次もお互い好意を持ってすらいない)香耶自身も美世を慕う幸次に不平不満を持っている。
異能者の家系の中でも最上位クラスの久堂家と没落寸前の斎森家とでは元々の家格が違いすぎる。作中の時代における結婚は当人の意思よりも両家の繁栄を目的としたものなので、結婚後も両家の付き合いは継続する。両家の格差による価値観や金銭感覚が違いすぎることが原因で、当人たちの結婚生活や両家の関係に悪影響を及ぼす可能性もあるが故に基本的には同格の家同士で婚姻を結ぶケースが多い。
よって余程の事情が無い限り、格差の大きい家同士の縁談を承諾すること自体が相当勇気ある行動であった。
(美世の場合、辰石家からも縁談があったので久堂家しか嫁ぎ先が無かった訳ではない。斎森家側としては辰石家か他家との縁談を取るか、香耶を久堂家に嫁がせる選択肢もあった)
格上の久堂家に嫁がせる選択をしたにもかかわらず、縁談が成立するように配慮しなかったのは真一の当主としての才覚の無さと父親としての愛情の無さが垣間見える。
それだけでなく斎森家の人間全員が、どれだけ久堂家を甘く見ていたかがうかがえる。
嫁いでからは当初こそ清霞に畏怖していたものの、噂とは異なる “彼の優しさ” に触れていくうちに、「清霞に自分は見合わない」と諦めつつも「そばにいたい」と願うようになる。
それまで自らの存在価値を見失っていた美世は、清霞の隣という居場所を得たこと切っ掛けに、清霞の家族や軍関係者、薄刃家の親族等との邂逅を通じ、紆余曲折を経つつも愛情を受け続けて自信を取り戻し、清霞の妻に相応しい女となるべく成長していく。
1巻の後半(アニメ6話)のネタバレ
実家での劣悪な環境から抜け出し、清霞との婚約生活にて徐々に健康や自身を取り戻し、美しく見違えるようになった美世。清霞との仲も良好になった時だった。
何とかしても美世を辰石家に迎え入れたい辰石実や自分よりも優位になった美世を憎悪した斎森香耶が互いの利益のために共手を組み、実の手の者に拉致され、無理やり斎森家に連れ戻される。幼少期に継母に閉じ込められたトラウマだった蔵で両手足を縄で拘束され身動きが取れない美世の前に香耶と香乃子が現れる。清霞との仲に不服を持った二人から「縁談を破棄しろ」と言い寄られ、二人に今までとは比べ物が付かない程の脅迫・暴力を振るわれる。(香乃子から扇子で張り倒される、草履で何度も踏みつけらる、アニメでは天井に吊るされ香耶に鋏で脅迫される)だが今まで恐怖で怯えるしかなかった美世だったがついに反抗し、自身は清霞の婚約者であり絶対に譲らないと宣言し、初めて二人に歯向かった。拒否し続ける美世にしびれを切らし始めた香乃子は美世の首を絞めさらに脅迫するが(アニメ6話では口を割らないことで焦りを覚えた香耶が美世の首を絞めていた)美世の拉致に気づいた清霞と幸次が駆けつけ救出される。美世は救助に来た清霞に感謝し、間もなく香乃子たちから受けた暴力が原因で気を失った。
その後、実の異能により炎上する斎森家から脱出し、夢の中で澄美と再会する。
清霞達の献身的な看病もあり、のちに奇跡的に回復しその後清霞と晴れて婚約した。
回復した美世はそれ以来、斎森家の人間とは会っていない。清霞の口からそれぞれの行先を知らされたのみである。
- 真一と香乃子は一連の騒動の責任を取るため夫婦で地方の別邸へ移住、それにより事実上の没落
- 香耶は両親と引き離されて特別厳格と有名な家への女中奉公
- 使用人は大半が解雇
異能(小説版2巻~6巻のネタバレ含みます)
異能者の家系に生まれながら見鬼の才を持たなかった為、異能が無いと父親にさえ失望されていたが、実は美世には異能が存在していた。
(小説版2巻より)
美世の従兄・鶴木新によると、美世の異能は夢見の力と呼ばれるもので、薄刃家の異能の中でも別格の力とされる。
夢見の力について
- 自身を含めたあらゆる人間の眠りの中に入り込み、夢を操ることができる
- 相手の精神を操作し、洗脳も可能とされる
- (更に実力次第では)夢の中で過去・現在・未来の全てを見通すことができるとされ、帝の天啓をも凌駕する
正に異能の中でも最強の力とおそれられてきた。
小説版6巻では、薄刃家に歴代の夢見の異能者が書き残した記録が保管されていた。
記録によると、過去や未来を見通す能力として重宝されただけでなく、
失せ物探しや神仏を装って夢枕に立つ等の使い方をしていたとされている。
夢見の異能の使い方
- まず夢見の力を使う対象を定める(その際、対象者の身体の一部に触れているとより能力の効果が強固になる)
- 内に宿る異能を意識しながら、目的を定める(過去未来を見通したい、誰かの夢に入り込みたい、等)
- 定めた相手へ、定めた目的を現実にできるよう、異能で働きかける
※夢見の異能も普通の異能と使い方は同じとされる。
薄刃家の女性にのみ発現する異能であり、夢見の異能者の母親は必ず精神感応(テレパシー)の異能を持つ。
夢見の力を持つ異能者は「夢見の巫女」とも呼ばれ、巫女の格好をさせる習慣がある。
薄刃の一族の中には夢見の巫女を神同然に崇める者もいる。
薄刃家の掟の中に、夢見の力の異能者が現れたなら彼女を一族全員で守り支えるべしというものがあり、代々一族の中から選ばれた異能者がつきっきりで世話をし、命を懸けて守る役を担った歴史がある。
見鬼の才が無いことについては、新曰く
- 薄刃家の異能者には見鬼の才が無い異能者が生まれることは普通のこと
- そもそも薄刃の異能は人心に影響するという所謂人間を相手にする異能であり、その為には異形を見る必要が無いため。
とのこと。
また、美世の異能の存在が斎森家にバレなかった理由として考えられるのは
- 美世の実母・澄美が悪意ある人間に夢見の異能を利用されることや帝によって美世の命に危険が及ぶことを恐れ、封印したから(異能がバレなかった最大の理由)
- もともと薄刃家が同胞の異能者を余所の家に出さない程徹底した秘密主義であったから(そもそも異能の家の間でも半ば架空の存在となっていたことや、斎森家が余りにも薄刃の異能について無知であったこと、薄刃家との親戚付き合いが無かったらしい状況から)
- 父親の真一が美世に見鬼の才が無いことで異能が無いと判断したから(薄刃由来の異能者に見鬼の才が無いのが当然と知らなかった可能性がある)
- 時の帝が、澄美が夢見の異能者を産む可能性を危険視したから(薄刃家の事業を裏から手を回してわざと経営を傾けさせ、薄刃家とは無関係の斎森家に資金援助の金を提供し、縁談を組むよう仕向けた。当時の斎森家は、澄美との縁談以前から異能者の家としては落ちぶれかかっており、それを危惧した当時の斎森家当主(真一の父)が御家再興をかけて真一との縁談を組んだ。帝の真意を把握していたかどうかは現時点では不明)
以上の理由が考えられる。
- 小説版1巻・2巻で斎森家を離れた後に美世が度々悪夢を見てうなされる描写があるが、これは美世の異能が無意識に暴走したためと小説版2巻で判明する。
- そして異能が暴走した理由は、封印自体が術者の死と経年により劣化、更に美世が斎森家を離れたために封印が弱まり消失したからと義浪は分析している。(小説版1巻で美世が燃え尽きた桜の切株に触れた時、電流が走ったような感触を受けている。この時に封印が解けたと思われる描写がある)
- 小説版2巻では(新のサポート付きだが)清霞を助ける為に清霞の夢の中へ入り、異能を初めて用いて救助する。夢の中での美世は一言だけ「消えて」と命じただけで清霞も敵わなかった異形たちを殲滅した。
- 小説版3巻では、新からは美世の異能について、異能が封印されていた期間が長く、それまで異能を使用する訓練を受けていないことや薄刃家の異能そのものが大変危険なものであることから、絶対にひとりでの判断で故意に異能を使ってはいけないと釘を刺されていた。
- 清霞の両親の住む別邸のある村を訪れた時、意識を失った村人を助けたいと自分の意思で異能を使用(修行の成果や新のサポートもあり)村人の意識を取り戻した。
- 異能に目覚めたばかりのせいか、美世が異能を使用すると体調不良になるようだが(一時的なものだったのか、異能を使用することによる反動によるものかは不明)しばらくすると回復している。
- 小説版5巻で、以前より実母・澄美の過去を夢に見ることがあったが、これは美世の夢見の異能で甘水直の夢の中に入り込んでいたためと判明する(それまで美世は薄刃家の過去を見ていたと思い込んでいた)
- 小説版6巻では、辰石一志と共に監禁された清霞の救出に向かう。
- 夢見の異能で『視た』経路を把握していたため、妨害に遭うことなく清霞の元へ向かうことが出来た。
余談
- 精神感応の異能を持って生まれた澄美は、幼少の頃から夢見の力を持つ異能者を産むことを期待されていた。また薄刃家の異能の危険性も十分理解していた。もし娘が夢見の力を持っていたことを外部に知られたらどんな扱いを受けるかは安易に予想出来た為(主に帝室関係者への情報漏洩を恐れたと思われる)父親の真一にもすぐに伝えることはしなかった様子。
- これは私利私欲にまみれた連中や帝室関係者から娘を守る為に行ったことであったが、真一は澄美の言葉の意味を理解することもなく、更にきちんと確かめもせずに美世には異能が無いと思い込んだ為(手を尽くして薄刃家を探しだし確認すれば判明したことだが、それすらしなかったのは真一のミスとも言える)美世は斎森家で惨めな日々を過ごす羽目になり、本来の澄美の思惑とは異なる悪い方向に向かってしまった。
- 小説版3巻で久堂芙由曰く「(斎森真一を指して)当主の頭もいかにも悪そう」という評価も(芙由の高慢な性格を差し引いても)あながち間違いではないかもしれない。
- もし斎森家が美世の異能を正しく理解、又は接し方を全うなものにしていれば斎森家の未来も少しはましなものに変わっていたかもしれない。
- 斎森家が没落したのは美世のせいではなく当主(真一)の至らなさが直接の原因と言えるだろう。