概要
元々「空亡」と「妖怪」という言葉を並べて扱ったのは、荒俣宏(博物学者、小説家、神秘学者、妖怪評論家、タレント)による『陰陽妖怪絵札』だった。この本は、真珠庵の『百鬼夜行絵巻』(室町時代に制作)を元にして作られており、最後の場面で太陽が「空亡という時期」を利用して夜明けをもたらすことが述べられている。
>空からころがり落ちてくる火の玉のような太陽は、まさに闇を破る万能の力といえる。
>太陽は、夜の闇を切り裂いて夜明けをもたらすとき、空亡という「一日の暦の切れ目」を
>ついて、夜の中に割りこんでいく。この空亡の隙間は、どんな妖怪にも塞ぐことができない。
妖怪「空亡」の発生源
常闇ノ皇(とこやみのすめらぎ)
その後、カプコンのアクションゲーム『大神』のラスボスとして登場したこのキャラクターは、ゲーム内の妖怪絵巻物(モンスター図鑑のようなもの)の解説で「「常闇ノ皇」は別名「空亡」とも呼ばれる。」と書かれている。そして設定資料集『大神絵草子』では「デザインしたときは空亡と言う名前で、実際にいた妖怪だ」「真珠庵の百鬼夜行絵巻のラストで妖怪を押し潰す最強の存在」と解説された。
なお、百鬼夜行のラストに暗雲や幽霊のようなものを描いている絵巻もあるが、それは文化人類学者・民俗学者にして国際日本文化研究センター教授・副所長である小松和彦が2007年7月に発見した『百鬼ノ図』である(発売日が2006年である『大神』に影響は与えてない)。
つまり
- 室町時代に『百鬼夜行絵巻』が制作され、真珠庵で所蔵された。後に「真珠庵の百鬼夜行絵巻」または「真珠庵本」と呼ばれるようになる。
- 真珠庵本を元にして作られた『陰陽妖怪絵札』という本が、百鬼夜行のラストは太陽が空亡(一日の暦の切れ目)という時間に現れると解説した。
- その後『大神』というゲームの設定資料集が、空亡(くうぼう)を妖怪扱いして、真珠庵本のラストを、空亡が「妖怪を押し潰す」とした。
ちなみに、小松和彦は『百鬼夜行絵巻の謎』216-217頁にて以下のように述べている。
真珠庵本の妖怪たちの<楽園>は、「巨大な火の玉」(陀羅尼の火)の出現で終わり
百鬼夜行(妖怪たち)の出没するときは、「夜」であり、「朝日」とともに沈黙し、
どこかに立ち去っていきます
その後
「空亡(くうぼう)」を、「そらなき」と訓読みにした妖怪が創作されることがある。