初めにこの意見を主張したのは、東京裁判(極東国際軍事裁判)のインド代表ラダ・ビノード・パール判事が始まりである。その後、パール判事のこの主張は、パール判事と非常に親しかった田中正明氏の著作『パール博士述・真理の裁き・日本無罪論』により発表された(なおこの書籍の内容が小学館文庫より『パール判事の日本無罪論』と題し一冊にまとめられ発売されている)。
内容
同著によれば、東京裁判は国際法に基づくものではなく、戦勝国が押し付けた事後法により、裁かれる側にある日本がリンチされるのと変わらない裁判であるため、裁判そのものが無効であるという。
また、この軍事裁判の不当さに同じ戦勝国側の国家など(たとえばこの軍事裁判の判事であるベルト・レーリンク(オランダ代表)なども彼の意見に一部同調している)からでさえ批判が相次いだという。
これらの意見はこの軍事裁判においては「少数意見」として黙殺された。
パール判事が主張したのは「日本の行った行為にまったく問題がないため被告人に対して罪に問えない」という訳ではなく「裁判の形式が不当、かつ罪の適用が不適切であるため、裁判自体が無効であり被告人に対し罪を負わせることは出来ない」ということであることを勘違いしないで欲しい。これはパール判事の残した格言にも表れている。
その他
パール判事自身はこのタイトル(日本無罪論)に関してはあまり気に入っていない様子であった。
『パール判事の日本無罪論』にはインド独立時の逸話や東京裁判に対する著名人の意見等が巻末に載せられている。
また、パール判事の東京裁判の判決文(正しくは「反対意見書」)は日本語では共同研究パール判決書(講談社学術文庫)があるが、この資料の冒頭には判決書に散見する日本に否定的な表現をわざわざつまみ食いし、拡大解釈して「パール氏は実は日本を肯定していなかったと思える」と解説されており、パール氏の真意が歪められている。
今でも判決書はこの曲解解説と抱き合わせで出版され、判決書の全文を読もうとするほど「パール判決書は日本無罪ではない」と思われてしまう状態となっている。パール判事もまさか日本人法学者がこんな解説を書くとは夢にも思わなかっただろう・・・。
小林よしのり氏もパール判事を敬愛しているようであり、ゴーマニズム宣言シリーズの『いわゆるA級戦犯』や『パール真論』などでパール判事について語っている。小林氏によれば、田中正明氏と会談した際に、田中氏は「『日本無罪論』というタイトルに間違いはない」と、生涯確信されていたという。