時代劇とは、創作におけるジャンルの一つである。
解説
主に【近世前後の日本を舞台とした物語】を指す。実写・アニメ・漫画・演劇などを包括する。小説については『時代劇』ではなく「時代小説」と呼ばれることが多いが、このジャンルに包括して考えることができるであろう。
昔(戦前)は歌舞伎などの要素が強く旧劇と呼ばれていた。一方で現代劇は新劇と呼ばれていた。旧劇に新劇の要素を取り入れつつ昔を舞台とした作品を新時代劇と呼ぶようになり、後に時代劇という呼称になった。
戦国時代~明治維新辺り(特に文化・文政期の江戸、幕末)を舞台としたものが多く、南北朝時代以前や明治時代中期(西南戦争)以降を題材とした作品は『時代劇』というより『歴史ドラマ』とカテゴライズされることが多い。西郷隆盛、大久保利通ら幕末と明治にわたって活躍した人物が登場する作品など、このジャンルに含まれるか曖昧な作品も多い。
『時代劇』に分類される物語に多く見られる特徴
……等々(無論、例外は数多くある)
作品一覧
実写
※原作は小説・漫画・演劇など他ジャンルのものであることが多い。
- 鞍馬天狗
- 座頭市
- 用心棒
- 椿三十郎
- 七人の侍
- 水戸黄門
- 銭形平次
- 遠山の金さん
- 江戸を斬る
- 大岡越前
- 桃太郎侍
- 暴れん坊将軍
- 木枯し紋次郎
- 必殺仕事人(必殺シリーズ)
- 鬼平犯科帳
- 剣客商売
- NHK大河ドラマ(※近代以降を舞台とした大河もある)
- 新五捕物帳
- 大江戸捜査網
- 子連れ狼
- 長七郎江戸日記
- 三匹が斬る!
- 破れ傘刀舟悪人狩り
- 丹下左膳
- 影の軍団
- 旗本退屈男
演劇
アニメ・漫画
※実写化されたものもある
赤胴鈴之助 あんみつ姫 アッパレ戦国大合戦(クレヨンしんちゃん) 一休さん 犬夜叉 江戸の検屍官 影武者徳川家康 義風堂々!!直江兼続 公家侍秘録 シグルイ どろろ 信長の忍 バガボンド バジリスク〜甲賀忍法帖〜 花の慶次 へうげもの まんが水戸黄門 ムカデ戦旗 無限の住人 もののけ姫 るろうに剣心 鬼滅の刃
ゲーム
鬼武者 がんばれゴエモン 戦国BASARA 戦国無双 信長の野望 薄桜鬼
特撮
テレビ時代劇・絶滅の危機
かつては現在の特撮パロディのように時代劇が度々パロディされるほど認知度の高い存在であった。しかし、実写時代劇については、高度経済成長と生活の洋風化による文化の断絶、大道具・小道具等の制作や調達の困難化、開発による日本の景観破壊によりロケ地の確保が困難になったことなどから、時代劇の製作数は先細りの傾向にあり、時代劇作りのノウハウが失われつつある。
特に中心的な視聴者層の高齢化は極めて深刻であり、1996年に発売された必殺シリーズのサウンドトラック(オリジナル・サウンドトラック全集15)のジャケットの作品解説(必殺仕事人Ⅳ)にも、冒頭で「時代劇が完全に高齢者向けになってしまった現在では考えられないことだが、(以下略)」と書かれており、既にそれ以前から時代劇の衰退は始まっていたのである。
実際、時代劇に使用された舞台セットの制作技術・技法は非常に緻密かつ高度なものが多く、CG技術では補い切れないリアリティある質感を表現することが出来ることから、技術の喪失を惜しむ声は多い。
フィルムとビデオ
時代劇もフィルム撮影から磁気テープ、そしてCCDカメラによるHD撮影に移行していった。
新しいカメラなのだからいいだろう、と思いきや、画質による違和感が出てくる事も散見された。これは単にフィルムが低画質だからHD画面にそぐわないというわけではなく、むしろその逆なのである。
フィルムに合わせたこれまでの色彩設計だと色が派手に出過ぎてまるでコスプレ衣装のようになってしまう、夜のシーンの撮影だとくっきりしすぎてしまう、メイクやカツラの形跡が映り込む等、リアリティや迫力に欠ける画になってしまうのである。
またコマ数の違いも問題になる。特にチャンバラシーンおいて顕著で、コマ数が1秒間30コマの普通のビデオカメラの場合、体のふらつきが映りやすくなり、格好が悪くなってしまう。
そこでHD化が進んだ現在では時代物ドラマではフィルム撮影の質感を再現する補正が加えていたりする。これは時代劇の現代版である特撮でもビデオ移行時に起きた問題であり(初期の平成仮面ライダー等)、ニチアサではHD24Pカメラというのを使うことで解決された。
マンネリ化
正直、昭和の全盛期に高視聴率を稼ぐ定番に頼り過ぎ、新たな視聴者層を狙った作品の創作を怠った事が、平成の時代劇の衰退・一時期の壊滅に繋がったと言える。
これは「時代劇化」として恐れられている現象であり、曾ての刑事ドラマが一時期壊滅したのも、1970年代末の特撮番組壊滅も、2010年代頃からのTVアニメの衰退(全日アニメの長期・長寿定番化、深夜アニメでのなろう系などのワンパターン路線による保守化)にも共通点が見受けられる。
作品の減少
21世紀には、地上波テレビ放送を前提とした新作時代劇は少なくなり、新作はBSや映画へと移行する傾向がある。内容も勧善懲悪の作品は少なくなり、現代人がタイムスリップしたりその時代に存在しないものを登場させたりするなど特殊な設定のものが多い。(例:JIN-仁-)
特に問題になるのが昔の日本人のセンスが現代の美的感覚に合わない点であり(特に髪型、最悪なのはお歯黒)、キャラデザの関係で必然的に時代劇よりは「和風ファンタジー」になりやすい。
なお、アニメについては映像表現やロケ地等の制約がなく、若年層への訴求力が期待できるとあって、近年はアニメによる「和風ファンタジー」の制作がむしろ盛んである。
ライトノベル業界のジンクス
ライトノベル業界では「ラノベに時代劇は無理」というジンクスが存在する。これはラノベ特有の事情も絡んでいる。
- 時代劇である以上、時代考証や当時の文化への理解は不可欠。
- 時代考証が雑な場合、時代劇・歴史ファンからの厳しいツッコミが想定される。
- 時代劇特有の「お約束」(人情劇、勧善懲悪、「雨降って地固まる」の筋書き)。
- 上記を手堅く守るとシナリオの自由度が低くなるデメリット。
- 時代劇そのものに対する認識が芳しくない。
- 「古臭い」「テンプレートで味気ない」「意外性に欠く」といったマイナスイメージが拭えない。
上述の要素は、読者としてターゲットにする多感な時期の青少年にはいささか窮屈に感じられるであろう。
2017年から大きなムーブメントを巻き起こした蝸牛くも氏の『ゴブリンスレイヤー』も、元は氏が執筆した『天下一蹴今川氏真無用剣』の代案としてやる夫スレで執筆していた当作が起用されたという経緯があり、少なからず「時代劇のタブー」が出自にかかわっている。
作りにくい時代劇
奇想天外でファンタスティックなファンタジーやSFと比べると刺激が薄い。また、過去の時代をモチーフにしたものでも、時代考証がトンデモでもさほど気にされない(ジャガイモ警察という言葉があるように一部にうるさい読者はいるが)西洋や中国や近代日本(大正や昭和)を舞台にしたものと比べると、どうしても堅苦しく感じられてしまうようだ。
また書き手も、お約束や時代考証を「ある程度は」守って書いていかなければならず、奇抜なアイデアを採用しづらい。近代的なガジェットから現代の風俗まで闇鍋的にぶち込んだ破天荒な作風の時代劇もあるにはあり、作品世界を「江戸時代っぽい異世界」として描くといった逃げ道を採用した作品もあるが、そこまで突き抜けた発想なら普通にSFや異世界ファンタジーとして書けばいいじゃんとか言われがちである。
つまり書き手にも読み手にもある程度の教養が必要になり、決して素人が気軽に取り付ける題材とは言い難いという先入観が、題材にする際に大きな壁となっているのである。
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西部劇・・・アメリカの時代劇
レトロ…時代劇より新しい