もしかして→ヴェロキサウルス
生物としてのヴェロキラプトル
ヴェロキラプトル / ベロキラプトル(学名:Velociraptor)は、84.9–70.6Ma(※1|約8,490万年~約7,060万年前|中生代白亜紀後期(カンパニアン~マーストリヒチアン初期)のアジア大陸の中緯度地域、現在のモンゴルと周辺地域に棲息していた小型肉食恐竜(小型獣脚類)である。ドロマエオサウルス科ヴェロキラプトル亜科に分類される羽毛恐竜の一種。
学名 "Velociraptor" は、「素早い泥棒」や「鋭敏な掠奪者」などといった意味になるよう造語された新ラテン語 (New Latin) である。
全長約2m、体高0.5m、体重は推定15kg程度。
細身の体格と、やや大きく細長い頭蓋骨が特徴。後肢の第二指には深く曲がった大きな鉤爪を具えており、これを獲物の喉や頭部に叩き込むことで仕留めたほか、樹上に登る際にも用いたと考えられている。
特に鳥に近い肉食恐竜の一つで、風切羽の痕跡すらある鳥の翼にごく近い前肢を有している。この前肢は折り畳むような形で曲げることが可能であった。2007年の発見で、前肢の骨に鳥類特有の特徴(羽毛が生える土台になる小突起)が確認され、少なくとも前肢には羽毛が生えていたと考えられている。
尾は腱で硬化しており、竹竿のようにまっすぐピンと張った状態で固定されていた。
群れを成したとする明確な証拠は現在(更新情報:2023年確認)のところ発見されておらず、集団で巨大な獲物を倒すハンターというイメージは、同科でより大型の属であるデイノニクスの生態を参考にしたものである。しかし、のちの研究で、デイノニクスやヴェロキラプトルが群れで暮らしていたイメージが誤りである可能性が高まった(※詳細は記事『デイノニクス』を参照のこと)。
強膜輪の大きさから黒目と白目の比率が現生の夜行性動物に近いことが判明している。このことから、夜間に行動し、卵や小動物や他の恐竜の幼体などを襲撃するという、「夜盗」とでも呼ぶべき生態を持っていた可能性が指摘されている。
体格的に手頃な獲物と言えるプロトケラトプスと格闘するかのようなダイナミックな姿勢のまま化石化したものが、1971年にゴビ砂漠から出土している。印象的で想像力を掻き立てるこの標本は、「闘争化石」「格闘化石」の名と共に広く知られるようになった。この標本は、攻守に分かれた2頭の恐竜が取っ組み合っている最中に砂嵐に呑み込まれて生き埋めになり、共倒れの形で落命してしまったものと解釈されているが、格闘しているわけについては、捕食者ヴェロキラプトルが被食者プロトケラトプスを仕留めようと襲い掛かったものの手痛い反撃を受けて互いに身動きが執れない状態に陥ったものと見做す説のほか、営巣中で自分の卵を守ろうとするプロトケラトプスとそれを奪おうとするヴェロキラプトルの争いであるとする説などがある。当初は、プロトケラトプスの死骸を漁っていたヴェロキラプトルが砂に呑まれたもので、格闘しているように見えるのは偶然に過ぎないとの説も出されていたが、格闘中でなければ生じ得ない状況がいくつも確認できることをもって否定されている。また、激しい砂嵐をやり過ごそうとうずくまっていたプロトケラトプスを向こう見ずなヴェロキラプトルが襲ったのではないかとの解釈もされている。この化石については、ウィキペディア記事「プロトケラトプスとヴェロキラプトルの格闘の化石」に詳しい。ピクシブ百科事典の記事「プロトケラトプスとヴェロキラプトルの格闘の化石」はまだ作成されていない。
関連イラスト
生態復元想像図等
生態復元想像図(その時期の科学的知見に基づいて生態を復元した想像図。パレオアートの一種。)のほか、骨格図なども、良いものがあれば掲載する。
空想イラスト
最古シリーズ
- 生物としてのヴェロキラプトルを描いた現存最古のイラストは、ken「Velociraptor」(2007年10月1日01時34分投稿|左の作品)。このイラストは「生物としての羽毛恐竜を描いた現存最古のイラスト」でもある。
- 生物としてのヴェロキラプトルを描いた現存最古のカラーイラストは、ろんすー「ヴェロキラプトル」(2007年11月14日03時49分投稿|右の作品)である。
関連タグ
生物
- リンネ式階層分類体系[ 脊椎動物 > 四足類 > 爬形類 > 有羊膜類 > 竜弓類 > 爬虫類 > 真正爬虫類 > 双弓類 > 竜類 > 主竜様類 > 主竜類 > 鳥頸類 > 恐竜様類 > 恐竜類 > 竜盤類 > 獣脚類 > テタヌラ類 > コエルロサウルス類 > マニラプトル形類(手盗形類)> マニラプトル類(手盗類)> エウマニラプトル類(真手盗類)> デイノニコサウルス類 > ドロマエオサウルス科 > ヴェロキラプトル亜科 > ヴェロキラプトル属 ]
- 異説による分類[ … マニラプトル類(手盗類)> 羽盗類 > 原鳥類 > ドロマエオサウルス科 … ]
- 古生物 恐竜 羽毛恐竜 ラプトル
- 棲息時期と棲息地:84.9–70.6Ma(※1|約8,490万年~約7,060万年前|中生代白亜紀後期(カンパニアン~マーストリヒチアン初期)のアジア大陸の中緯度地域
- 化石の産出地と産出件数(※1):東アジア(モンゴル〈12〉、中華人民共和国内モンゴル自治区〈2〉、タジキスタン〈1〉)
- 関連する生物:プロトケラトプス(獲物) ドロマエオサウルス(近縁) デイノニクス(近縁) ユタラプトル(近縁)
脚注1
- ※1 "Velociraptor" - Fossilworks. 2023年月9日20閲覧。
フィクションの中のヴェロキラプトル
ジュラシック・パークシリーズの影響か、高い知能を持った鱗肌の獰猛な恐竜として描写されることが多い。
ジュラシック・パークシリーズ
ヴェロキラプトルを世に知らしめたパニック・アクション大作。
シリーズを通してティラノサウルス・レックスと並び立つメイン恐竜として扱われており、劇中の「ラプトル(ラプター)」という呼称と共に一躍有名になった。
どの作品でも大きな見せ場があり、特に原作では一貫して最大の脅威として描かれている、シリーズの常連である。
実際のヴェロキラプトルの身長はコヨーテ程度であるのに対し、映画のヴェロキラプトルは約2m以上あり、どちらかというとデイノニクスやユタラプトルに近い体型をしている。また、頭骨の形状も実際のものとは大きく異なる。これは原作発表当時、デイノニクスをヴェロキラプトル属に含める説があり、それが採用されたことが原因の一つとされる(他にも劇中にて本種の血液を含んだ蚊の琥珀が発見されたのが中国だったことにも合わせているのも理由にある)。尤も、スピルバーグ監督が「ヴェロキラプトル」という名前を気に入ったことや、意図的に大きなサイズにしたという映画的な事情もあるようだが。
(左:映画におけるラプトル、 右:実際のヴェロキラプトル)
また、近年のヴェロキラプトルは鳥のように腕を折り畳んでいたと考えられているが、本シリーズでは一貫して腕を幽霊のように垂れ下げたデザインを採用している。世界観的に言えば、「ジュラシック・パークで孵化したヴェロキラプトルに共通する特徴」ということなのだろう。
アラン・グラント博士は『ジュラシック・パークⅢ』にて、知能の高さから「もし絶滅しなければヒトに代わる知的種族に進化したかもしれない」と言及している。いわゆる恐竜人間説であるが、一般的にはこれに相当する種はトロオドンとされており、これをシリーズ常連のヴェロキラプトルに置き換えた形となる。
(その後2020年の研究結果においてラプトルが群れで暮らしていなかった可能性が高まったことについて研究者は、この映画を例に出して「『ジュラシック・パーク』のラプトルの描写は間違っていた」とコメントしていた)
シリーズを通して
ジュラシック・パークシリーズには第1作、第4作、第5作に登場する「サイトA」こと「イスラ・ヌブラル島」、第2作および第3作に登場する「サイトB」こと「イスラ・ソルナ島」という二つの舞台が存在し、ラプトルはそのどちらの島においても極めて危険な捕食者として知られている。
公式サイトによれば、生息数は1993年時点のイスラ・ヌブラル島において3頭(同年に3頭とも死亡)、1997年時点のイスラ・ソルナ島において18頭である。
空腹でなくとも他の動物を殺す獰猛さと、チンパンジー並みの知能を兼ね備えるハンターとされる。全作品において数頭~十数頭の群れを成して行動し、それぞれが連携して獲物を仕留めるほか、鳴き声によって仲間同士でコミュニケーションを取る描写がある(ただし仲が良いわけではないらしく、状況次第で互いに争うこともしばしば)。ハンティングの際は群れで対象を囲うようにして追い詰めていき、キルゾーン(有効射程圏)に達した段階で一気に襲い掛かって仕留める性質を持つ。
その賢さは所詮は動物と侮った人間を悉く驚愕させ、場合によっては死に至らしめるが、一方で鏡や瓦、3Dプリンターで作られた骨の模型といった自然界の産物ではない代物には翻弄される一面もある。
ちなみに、作品によってデザインや体色が最も異なっている種である。これは単純に個体群による差のほか、作品によっては当時の最新学説を取り入れていることが原因。また、最近は現在の学説に合わせて「遺伝子学者が(展示用等のために)化石記録よりもかなり大きく創った」という裏設定も後付けされている。
ジュラシック・パーク(映画1作目)
イスラ・ヌブラル島の「ジュラシック・パーク」で誕生、飼育されている雌個体が登場。
体色は灰色で、黄緑色の瞳と猫のように細長い瞳孔を持つ。また体格はシリーズを通して最もゴツい。
生後8ヵ月で成体になるとされており、成体は時速64~100kmとチーター並みの俊足を誇る。
当初は8頭いたとされるが、ファンから「ビッグ・ワン(The Big One)」の愛称で呼ばれる最も強大で賢い雌によって5頭が殺され、成体のラプトルは3頭しか残っていない(ラボでは幼体のヴェロキラプトルが孵化しているほか、放棄された「ヴェロキラプトル・パドック」内には殻になったラプトルの卵が残されていたため、幼体は他にも複数個体存在する可能性がある)。
あまりにも危険すぎるため、劇中時点では「ラプター・ペン」と呼ばれる隔離プラントの中で飼育されており、餌についてもクレーンで吊るした牛を与える形を取っていた。この辺りの飼育環境は、後のシリーズに登場するインドミナス・レックスと類似している。
冒頭、イスラ・ソルナ島から輸送されてきた1頭がパークスタッフを襲撃し、一人が犠牲になっている。
中盤に「ラプター・ペン」から3頭が脱走、島の管理のために残っていたアーノルドやマルドゥーンといったスタッフを次々と殺害した。
その後は主人公たちがいたビジターセンターに侵入、食堂やコントロール・ルームなどを縦横無尽に移動し、最期まで執拗に主人公のグラント博士達を襲撃した。
最終的に、1頭はティムとレックスによって調理室の冷凍室に閉じ込められ、残りの2頭はメイン・エントランスに現れたティラノサウルス・レックス(レクシィ)に捕食・撃破されて全滅する。
ジュラシック・パーク(原作小説)
ヴェロキラプトル・モンゴリエンシスとされる3頭のラプトルが登場。
リーダー格の1頭はロバート・マルドゥーンにより「ビッグ・ワン」と呼ばれており、これが映画版のボスの愛称にもなった。
原作では最大の脅威として描かれ、物語後半はほぼ主役同然の立ち回りを見せる。
殺害した人物は映画版と異なっており、恐竜のクローン再生を成功させた張本人であるヘンリー・ウーのほか、作業員も複数犠牲になっている(一方でマルドゥーンは生還し、逆にミサイルによって1頭を殺傷した)。
映画では描かれなかった、野性化し繁殖したラプトルの群れも登場している。
ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク
イスラ・ソルナ島(サイトB)に生息していた個体が登場。
体色はトラのような黒い縦縞模様が入った茶褐色となっており、黄色い瞳を持つ。
背の高い草むら(ブッシュ)に生息していた7頭の群れ、および廃墟となったワーカー・ビレッジを根城としていた3頭の群れが描写されている。
前者はサイトBから脱出しようとした恐竜ハンター団を襲撃して少なくない犠牲者を出し、後者は主人公のマルコム博士達に襲い掛かった。
最終的にマルコム達は間一髪のところで3頭のラプトルを撃退し、ニックが呼んだヘリによって脱出に成功する。
最後まで脅威であり続けた前作とは異なり、今作では中ボスのようなポジションであり、サイトB脱出後は全く出番がない。「多数からなる群れによる脅威」という新たな側面が描写され、作中で最も人間を殺した恐竜ではあるが、第1作での狡猾さや恐ろしさは鳴りを潜めた感が強い。
ジュラシック・パークIII
イスラ・ソルナ島にて、雄と雌が入り混じった5頭の群れが登場。
雄、雌ともに全長4m、体高1.7m。
走行速度は時速72kmとされており、ビッグ・ワンらと比較するとやや遅い。
前作と同じ島に生息する個体群のはずだが、体色及びデザインが大きく異なっており、第1作および第2作と比較するともはや別種に近い。
体格は全体的にかなりシャープで、頭部に厚みがない。眼は小さく、前眼窩窓の上部に緩やかな突起が確認できる。また、雄は後頭部から首にかけて羽毛の痕跡が見受けられる。
体色および瞳の色は雄と雌で大きく異なり、雄はくすんだ紫色に白いラインが入った体色と赤い瞳を持つ。雌は白を基調として黒い斑点が浮き出た体色で、檸檬色の瞳を持つ。
知能が更にパワーアップしており、硬直したまま人形の如く立ち尽くすことで人間を油断させる、とどめを刺せる人間を敢えて生かして仲間の人間を誘い出そうとするなど、人間並みの狡猾さを誇る。また、第1作と同様に自力で卵を産んで繁殖しているが、今作ではこのラプトルの卵が重要な役割を担う。
物語冒頭でエリックと共にパラセイリング中に事故に遭い、止むを得ずイスラ・ソルナ島の密林地帯に降下したベン・ヒルデブランドを殺害した。
中盤、違法なクローニングで恐竜を生み出していた研究施設「インジェン・コンパウンド」に潜んでいた雄一頭が主人公のグラント達を襲撃。そのまま仲間を呼んで一行を密林地帯へと追い込み、最終的にユデスキーを殺害した。
ラスト近くで島を脱出する寸前のグラント達の前に群れで立ち塞がり、実質的にこの作品における最後の障害となった。
ジュラシック・ワールド
イスラ・ヌブラル島に建設(再建)され遂にオープンしたテーマパーク「ジュラシック・ワールド」にて、主人公のオーウェン・グラディによって育てられた4姉妹が登場。
公式サイトではいずれも全長5m、体高2mとされ、デザインは第1作のそれに最も近い。
長女は「ブルー(Blue)」、次女は「デルタ(Delta)」、三女は「エコー(Echo)」、四女は「チャーリー(Charlie)」と名付けられており(すべてオーウェンの命名)、それぞれ体色が異なっている。なお、「アルファ(Alpha)」はオーウェン自身である。
2012年から始まったヴェロキラプトルの知能を研究するIBRIS(Integrated Behavioral Raptor Intelligence Study)計画の為に産み出されたとされる。
当初は「V-2(Subject V-2)」と名付けられたヴェロキラプトルも誕生したが、攻撃的かつ予測不可能な行動を繰り返したため安楽死による処分がなされ、先に紹介した4姉妹のみが残った。
4姉妹は孵化した当初からオーウェンに付き添われ、刷り込みの習性によって誕生に立ち会ったオーウェンを親(リーダー)的存在と認識している。この認識はオーウェンにとっても同様で、彼女ら4姉妹は実の娘同然の存在である。
成長していく間もオーウェンやバリーらによって人間を信頼するように訓練されており、とりわけオーウェンの指示にはかなり従順に対応する。
遺伝子操作と戦闘訓練により以前の個体よりも戦闘能力が高く、シリーズを通して最強のラプトルとされる。
第1作の教訓か前述したV-2の影響か、2015年時点では一般公開はされておらず、ヌブラル島の最東端に新しく設けられた「ヴェロキラプトル・パドック」にて飼育されていた。
物語中盤にて、オーウェンの指揮のもと凶悪なキメラ恐竜「インドミナス・レックス」の討伐作戦に繰り出すことになるのだが……。
詳細はラプトル四姉妹を参照。
Jurassic World Evolution
『ジュラシック・ワールド/炎の王国』のタイアップ作品となるテーマパーク建設シミュレーションゲーム『Jurassic World Evolution』にも登場。
デザインは『ジュラシック・ワールド』のものを踏襲しており、全体的な体色は前述のデルタに近い(全く同じというわけではない)。
PVではヤギを捕食しているが、意外にも映画シリーズにおいてヴェロキラプトルがヤギを襲うシーンはなく、ある意味夢の共演となった。
ディノクライシス
劇中で敵キャラクターとして登場。
クロスオーバー作品『ナムコクロスカプコン』でもザコキャラとして登場している。
古代王者恐竜キング
第1紀から「最後の力」「必殺ふうじ」といったわざカードの恐竜として甲虫王者ムシキングのミツバチと差し替えで登場する。ショルダーネームは「リトルファイター」。
テレビアニメでは第36話に登場。ノーピスによってトリプルスラッシュカードになって登場。上記の2枚のわざカードの効果を1枚で使用できる。
- アーケード版のトリプルスラッシュカードは3枚のわざカードがセットになっており全て超わざとなっている。
関連タグ
フィクション
- ジュラシック・パーク ティラノサウルス・レックス(レクシィ)
- インドミナス・レックス インドラプトル
- トロント・ラプターズ:カナダのトロントを拠点とするNBAのプロバスケットボールチーム。チーム発足時に『ジュラシック・パーク』が公開されて人気を博していたことから、“ラプトル”の名を冠したチーム名となった。また、2015年まではユニフォームを着用した恐竜の描かれたチームロゴを採用していた(下のイラスト)。
ヴェロキラプトルをモデルとしたキャラクター
- ジュプトル(ポケットモンスター)
- ライドラプター(爆竜戦隊アバレンジャー)
- キョウリュウグリーン&ザクトル(獣電戦隊キョウリュウジャー)
- ブレイブキョウリュウピンク&ラプックス(獣電戦隊キョウリュウジャーブレイブ)
- コスモラプター(騎士竜戦隊リュウソウジャー)
- ガンスナイパー/スナイプマスター/レブラプター(ZOIDS)