第二次世界大戦のさなか、イギリス軍が世に問うた抱腹絶倒兵器。
概要
ノルマンディー上陸作戦においてコンクリート製の防護壁を爆破するために発案された。
火薬の入った円筒の両側に直径3mほどの車輪がつく。その車輪には推進力としてロケットがついている。
ロケットを点火すると車輪が回転して上陸用舟艇から発進。砂浜を転がって防護壁まで移動して爆破する予定だった。
現実
見た目でわかる通り大失敗。いわゆる「勝った側の駄っ作兵器」。
砂浜で空回りする、どこへ転がるか予測不能、などのトラブルが相継ぎ、開発は中止された。
もし前線に投入したとしても敵を盛大に笑わせるのが関の山だったと思われる。
(心理戦的にはある意味効果大かも知れないが)
航空エンジニア兼小説家のネビル・シュートが開発に参加しており、サミュエルフットの「The Great Panjandrum(偉大なパンジャンドラム=「お偉方」)」という詩からの引用で命名している。
余談ながらネビル・シュート財団のサイトにもパンジャンドラムの記事が存在している。
評価
もういったいどこをどうしたらこういう発想ができるのかというシロモノ。
これに比べたらドイツやアメリカのキテレツボツ兵器ほうがまだ可愛いもの。
無論、よく言えば堅実、悪く言えば独創性にかける日本人が発想しえなかったことは言うまでもない。
(竹製パンツァーファウストとでも言うべき対空竹やりが唯一肩を並べる事例か)
後日談
2008年にノルマンディー上陸作戦65周年の記念行事の一環としてパンジャンドラムのリバイバルが行われてしまった。
あるぇー!? なんで動くの?
補記
実は「自走式移動機雷」という発想そのものはそうキテレツではなかった。
そういう意味では式自走爆雷がいくつかの国で開発、計画がされている。
(ドイツのゴリアテやアメリカのローリングボムが有名)
問題は当時の技術力が全く追いついてなかった事、では決してない。
そもそもロケットで本体を回転させて前進させること自体に無理があるのである。
ロケットエンジンは基本点に直進しようとするのだから、単に中央部に固定して推進器とする方式ではなぜダメだったのかというのが最大の問題である。
ただし回転力としてロケットを使う事自体は完全な間違いではなく、遠隔操作により瞬間的に大きなトルクを得られることから現代においては不発弾の固着した信管の除去に『ロケットレンチ』という道具が使われている。
数回失敗した時点でなぜ気が付かないのか、という気がしないでもないが、そこはまあ英国だから仕方ない。
そんなイギリス軍は他にも第二次大戦のダンケルクの戦いにおいて大量の武器を失った英国政府はエンフィールドライフルの長さに切った水道管に大量に余った銃剣を溶接した槍を数千本製造した。
本土防衛の際に使用される予定だったとか。
創作物における扱い
戦場ジョークを元に各国の様子を描いた漫画『Axis Powersヘタリア』の中でイギリスがパンジャンドラムを作ろうとして怪我をする場面がある。