通常、というのはこの文字は日本語の音の中で唯一子音のみからなるため、本来は五十音表に含まれないからだ。そもそも少なくとも平安時代くらいまではかなどころか音も存在しなかったとも言われている(中国語などで「ん」を含む言葉の読みは「む」や「い」や「が」(英語の"song"や"long"の"ng"に当たる音に適用。正確に言えば、当時は濁点が存在しないので「か」)で代用していたようだ)。
五十音表の最後に置かれたのはインドが関係している。当時仏教を学ぶのに必須だった梵語(インドの言語の一つ、サンスクリット語とも)はインド・ヨーロッパ語族であるため、同じくインド・ヨーロッパ語族に属するギリシア語と同じくアルファから始まりオメガで終わった。梵語でアルファに当たるのがア=「阿(ア)」でありオメガに当たるのがオーム=「吽(ウン)」である。これを合わせたのが「阿吽の呼吸」の「阿吽」であり、仁王像や狛犬など日本の文化に深く根ざしている。
さて、空海に擬せられている五十音表を作った仏僧達は、梵語の順番を参考にした。「あいうえお」や「あかさたな」の順番も、梵字の並べ方から借用している。当然、「ん」の文字も「吽」に合わせて最後に置かれた。