概要
航空機の機体に異常が発生した際に、乗員を脱出させるための脱出装置の一つ。
ロケットエンジンや圧縮空気などにより座席ごと乗員を機外に排出する。
脱出後は座席は切り離され、パラシュートで降下する。
かつて航空機の速度が(比較的)低速だった時代は脱出用パラシュートを積んでおき、事故や被撃墜時にはパラシュートを背負ってそのまま脱出するというスタイルだったが、航空機の速度が上がると人力だけで機外に出ることが難しくなってきた。
このため開発されたのが射出座席である。
戦闘機がレシプロ式からジェット式になり、飛行速度が上がると瞬く間に普及した。
戦闘機などの小型機に使われることが多いが、爆撃機などの大型機にも採用されることがある。
現在のものでも乗員に高Gがかかる為に五体満足で脱出できればまし、というものであり、射出時に負傷したり、着地時に足を折るなどが起きている。
余談
- F-104の初期型は、鋭利な垂直尾翼に衝突して悲惨な事故になることを警戒し下向きに打ち出す射出座席を採用していた。もちろんこんなものを低空で使うと地面に激突してパイロットが乙ってしまうので、後期型からは普通に上向きに打ち出すタイプに変更されている。
- 英国機にはアームで乗員を放り出す、コックピットの下が開いて乗員を放り出すといったトンデモ機構を採用したものがある。
- 超音速爆撃機B-58の脱出装置は、低速では座席のみを打ち出す一般的な射出座席として機能するが高速では座席をシールドで覆って脱出カプセルとして打ち出すという二段構えとなっている。
- ヘリコプターは比較的低速なので人力での脱出が容易な上、下手に射出座席を使うとローターに乗員が巻き込まれてこれまた悲惨なことになってしまうので採用例は極端に少ないが、ロシアのカモフKa-50はヘリコプターとしては珍しく射出座席を採用している。ちなみに脱出前にローターを爆薬で吹き飛ばした後にロケットで乗員のみを引っ張り出す構造になっている。
- ボストークやジェミニなどの初期の有人宇宙船でも、大気圏内での脱出用に射出座席を採用していた。
- 米軍にはキャタピラーズクラブ(芋虫の会)とイジェクション・タイ・クラブという団体があり、共に射出座席でのベイルアウトして生存した者のみが入会できる。