概要
乗り物(特に航空機や宇宙船)に異常事態が発生した時、乗員(或いは乗客)を脱出させるための装置。
一般的には射出座席などの「乗員を機外に放り出す装置」を指すが、旅客機の非常脱出用シュートとか或いは原始的な手法といえるパラシュートも広義の脱出装置に含まれる。
また、船舶に積まれている救命ボートや浮き輪も脱出装置の一種と言えるかも知れない。
地上の乗り物においては自動車や鉄道車両に積むことがある(窓ガラスを割るための)緊急脱出用ハンマーも、ある種の脱出装置といえる。
SF世界においては宇宙船の事故時に脱出するための「カプセル型の小型宇宙船」的な脱出装置がおなじみ(例『ドラゴンボール』の一人用のポッドなど)。肝心の脱出装置が作動しなく(かなりの頻度で故障が原因)てピンチに陥る、残された脱出装置を奪いあう、或いは「俺はここに残る、お前は脱出しろ」と主人公がパートナー共々押し込められる、脱出したのはいいがそのまま異次元や遠い宇宙を漂流してしまう、脱出カプセルで地球に流れ着いた・或いは地球人に救助された異星人の子供が「地球人の子供」として育てられる…など使い道は様々。
「ウルトラマン」や「スーパーロボット大戦」シリーズにおいては途轍もなく優秀なことに定評があり、特にスパロボでは何十回撃墜されても味方パイロットは絶対死なない、核兵器やブラックホールで攻撃されても脱出できる、さっき撃墜したはずの敵パイロットがすぐに次のステージで出てくるということもしばしばある。
(まぁ、その分敵が退場する場合は大体脱出装置の故障などで呆気なく退場するが)
脱出装置の形態
主に航空機用のものに関して記述する。
戦闘機等でよく見る最もポピュラーな脱出装置の形。座席を火薬ロケットや圧縮空気などで打ち出し、パラシュートで降下する。オメガ11の友。
座席自体もパラシュートも訓練を受けていなくては危険なので、民間機では使われない。詳細は個別記事を読むことを勧めるが、急加速して高速で射出される為身体にかかる負荷が大きく(あるデータだと30Gはかかるらしい)、首や脊椎を負傷したりして後遺症が残ったり最悪死亡する恐れがある。
また、戦闘機の場合は射出座席を作動させると同時にキャノピーを火薬で吹き飛ばして分離させるのだが、時と場合によっては分離したあと上空に留まり、それが後頭部を直撃する恐れがある(トップガンで後席のグースが死亡したのもこれが原因)。対策としてキャノピーブレーカー(導爆線を用いてキャノピーを粉砕する)を装備するなどがある。
- モジュール式脱出装置
コクピットなどの機体の(居住・搭乗用スペースとなっている)一部分を切り離し、そのまま脱出装置として使用するもの。高高度を飛行する・或いは極超音速で航行するなどの過酷な条件で運用される航空機に主に採用される。また海上に脱出した際には体が直接水に触れないため、低体温症で死亡する可能性が減る。ただし着地時の衝撃は普通の射出座席より大きくなる。
フィクションではR-TYPEシリーズに登場するR戦闘機・R-9Cがキャノピー部分を切り離すことによりモジュール式脱出装置の体裁を取る、機動戦士ガンダムにおいてRX-78が「コアファイター」という形で一種のモジュール式脱出装置を採用している…などの例がある。
- 脱出用シュート
旅客機における脱出装置といえばこちら。
出入口(非常口)に空気で膨らむ滑り台を展開させ、乗客を脱出させる。
万が一、使用する事になった際にはハイヒールなどのシュートを破ってしまう可能性のある履物は脱ぎ捨てるべし。
- 救命ボート
船でいう脱出装置はこれ。「小型ボート」の形状をしているものや、ゴムボートの体裁をとっているものがある(ゴムボートタイプのものは不使用時は円筒形のカプセルに格納されている)。
船内には非常食や無線機、信号の発信機、サメよけグッズなどが積まれている。
- 緊急脱出用ハンマー
自動車で言う脱出装置に相当するもので、最もメジャーなものの一つはこれ。
水没や横転時など、ドアを開けるのが難しい状況に追い込まれた際に使う最後の手段で窓ガラスを割るのに使用する。
窓ガラスを割りやすいように先端が尖っており、またシートベルトを切断するためのカッターを備えているものもある。
ちなみにオーストラリアの特急列車「ティルト・トレイン」には、標準装備。
- 宇宙ロケットの打ち上げ脱出システム
現実の有人宇宙ロケットにも脱出装置は付いている。
アポロ宇宙船などの先端に付いている棒状のものがそれである。
使い方としては、打ち上げ直後に墜落に至りそうなトラブルが発生した場合に作動させる。
作動させると宇宙飛行士を乗せた司令船と打ち上げ脱出システムが切り離され、打ち上げ脱出システムに組み込まれたロケットエンジンが噴射を開始する。そして打ち上げ脱出システムは司令船を引っ張り上げる形で飛んでいき、ロケット燃料を使いきった時点で切り離され、司令船はパラシュートを開いて着地する。
このようなふざけたコンセプトの装置ではあるが、打ち上げ直前に火災が発生、ロケット本体の爆発2秒前にこの脱出装置を作動させて乗組員が生還した実績があるスグレモノだったりする。
なお、これは打ち上げ時の高度が低い状況での脱出に使用するものなので、ロケットが一定の高度に達すると使用しなくても切り離してしまう使い捨ての装置である。
某国のビックリドッキリ脱出装置
一風変わったモノを作ることで定評のあるイギリスであるが、(航空機用の)脱出装置に関してもイギリス的な独自のセンスが発揮されることもある。
以下、そんなイギリスのあまりに個性的な脱出装置(の一例)を挙げる。
- スイングアーム式脱出装置
射出座席の大家、マーチン・ベイカー社がかつて大まじめに考案した脱出装置。
機体にクレーンのような脱出用アームを装備し、非常時にアームを使って機外にパイロットをぶん投げる。
アームの長さがあるため、確かに垂直尾翼などにぶつかる危険は無いが……。
- ボールトンポール P.100の脱出装置
デファイアントでお馴染みのボールトンポール社が考案した軽戦闘機・P.100で採用予定だった脱出装置。
P.100は「イギリス版震電」というべきデザインの、カナード翼・推進式プロペラの軽戦闘機である。が、通常の脱出装置では後部のプロペラにパイロットが巻き込まれてしまう。
…というわけで、機首の下半分が口のように開いてパイロットを機外に放り出すというもはやギャグ漫画並みの脱出装置を採用する予定だった。
- ハンドレページ・ヴィクターの脱出装置
3バカ、じゃなかった3Vボマーの一角をなすハンドレページ・ヴィクター。
この機体の乗員は、パイロットは通常の射出座席を使うが…後ろ向きに着座している残りの乗員は、二酸化炭素のカプセルを爆発させて機外に飛び出すという個性的にも程がある脱出装置を用いている。尚、成功例はない。
関連タグ
マミる(モジュール式脱出装置的な意味で)