1969年3月3日 米海軍はトップ1%のパイロットのためにエリート学校を設立した
目的は失われつつある空中戦の技術訓練 世界最高のパイロット学校の呼び名は
TOP GUN
概要
アメリカ海軍戦闘機兵器学校の訓練生となった主人公ピート・ミッチェル(本編中ではコールサイン(TACネーム)の『マーヴェリック』で呼ばれることが多い)が、訓練や実戦、恋愛や友の死を乗り越えて成長する物語。
タイトルの由来はアメリカ海軍の海軍打撃作戦センター(NSWC)傘下の海軍打撃・航空作戦センター(NSAWC)の一部門であるアメリカ海軍戦闘機兵器学校の通称から。
戦闘機アビエイター(パイロット)のトップを育成するアグレッサー(アドバーサリー)部隊のひとつでもある。
転じて、精鋭のパイロットや精鋭部隊を指す通称にもなっている。映画で有名になりすぎた言葉ではあるものの、トップガンは精鋭や選抜されたという意味なのでアメリカ海軍とは関係なく使われることが多いが、「航空自衛隊のトップガン」といった例えとして使われるのはまだましな方で、中には「アメリカ空軍のトップガン」といった侮辱ともとられかねない使い方がされる事もある有様(トップガンが米空軍の映画の勘違いされることもかなり多かったようで、米海軍関係のSNS等でかなり語彙を強めにトップガンは米海軍であることを指摘する例も)。
当時24歳だったトム・クルーズの出世作として知られ、世界中で大ヒットとなり、1986年の全米興行収入、1987年の日本の配給収入でそれぞれ年間1位となった。興行収入は2013年のIMAXでの再公開も含め、北米で1億8,000万ドル、全世界で3億5,700万ドル、日本でも67億円を記録。その後も何度かTVで放映されている。
撮影にはアメリカ海軍が協力しており、洋上に浮かぶ空母や戦闘機が飛ぶシーンはCGなどを使わず実際に戦闘機を飛ばし(撃墜されるシーンは模型、コックピット内はセットであるが)、人気の高いアクションシーンに仕上がっている。
人気作にもかかわらず長年続編が作られていなかったが、2022年、遂に待望の第2作となる『トップガン マーヴェリック』が公開された。
ストーリー
ピート・ミッチェルことコールサイン:マーヴェリックは、アメリカ海軍のアビエイター。腕は立つが、同じくアビエイターだった父の死の謎を引きずり問題行動ばかり起こすはみ出し者だ。
ある日、マーヴェリックと相棒のレーダー操作士官グースの2人は、ミラマー海軍航空基地に所在する上位1%のエリートが集うアメリカ海軍戦闘機兵器学校、通称トップガンで6週間の訓練を受けることとなる。
民間人の教官チャーリーとの恋や、ライバルのアイスマンらとの競い合いの日々に身を投じていくマーヴェリック。
しかし、訓練も中盤に差し掛かるころ、不慮の事故に見舞われグースを失ってしまう。
意気消沈するマーヴェリックを、教官のヴァイパーは彼の父の死の真相を語ることで鼓舞する。
そして、トップガンの卒業式当日。マーヴェリックに緊急の出撃命令が下される。
スタッフ・データ
監督 | トニー・スコット |
---|---|
脚本 | ジム・キャッシュ / ジャック・エップス・Jr |
製作 | ドン・シンプソン / ジェリー・ブラッカイマー |
製作総指揮 | ビル・バダラート |
音楽 | ハロルド・フォルターメイヤー / ジョルジオ・モロダー |
撮影 | ジェフリー・キンボール |
編集 | ビリー・ウェバー / クリス・レベンゾン |
配給 | パラマウント・ピクチャーズ / UIP |
公開 | 米国:1986年5月16日 / 日本:1986年12月6日 |
上映時間 | 110分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
キャスト
※吹き替えはテレビ東京版とフジテレビ版のものを記載
主要人物
主人公。F-14のアビエイター。愛車はKawasakiのNinja。
腕は立つものの、かつてパイロットだった父の死の謎を引きずり無鉄砲な操縦ばかり行う問題児。
クーガーの退役に伴い、繰り上がりでトップガンに派遣される。
シャーロット・“チャーリー”・ブラックウッド
宇宙航空物理学の権威で、民間からトップガンに招かれている女性教官。
当初はMiG-28との戦闘経験からマーヴェリックに興味を抱いていたが、次第に男性としての彼に惹かれていく。
マーヴェリックのライバルで、凄腕のアビエイター。「氷のように冷静な男」と評される。
自己中心的で危険な操縦を行うマーヴェリックを非難する。
口下手でジョークも決して達者ではないが、根は好人物。
ニック・“グース”・ブラッドショウ海軍中尉
マーヴェリックのRIO(レーダー操作士官)にして親友。ピアノの弾き語りができる。
身寄りのないマーヴェリックにとってはただひとりの家族といえる存在。
妻子を愛する陽気な青年だが、訓練中に悲劇に見舞われる。
トップガン関係者
マイク・“ヴァイパー”・メットカーフ海軍中佐
(演:トム・スケリット / 吹:小川真司および一部分のみ佐々木睦、前田昌明)
トップガンの教官。
マーヴェリックやアイスマンですら敵わないほどの圧倒的な操縦技術を誇る。
マーヴェリックの父の死の真相を知る数少ない人物。
リック・“ジェスター”・ヘザーリー海軍少佐
トップガンの教官。落ち着いた性格でヴァイパーを補佐する。
訓練初日にマーヴェリックとアイスマンに撃墜される(ただし、マーヴェリックは機体の下限高度制限を越えていた)。
ロン・“スライダー”・カーナー海軍中尉
アイスマンのRIO。大柄な体格が特徴。
クールなアイスマンと対照的に激しやすく、ことあるごとにマーヴェリックを挑発する。
レオナルド・“ウルフマン”・ウルフ海軍中尉
ハリウッドのRIO。
グースを失い意気消沈するマーヴェリックを気に掛けるナイスガイ。
リック・“ハリウッド”・ネヴン海軍大尉
ウルフマンとコンビを組むアビエイター。
トップガンでの成績はアイスマン、マーヴェリックに次ぐが、劇中では専ら噛ませ役。
マーカス・“サンダウン”・ウィリアムズ海軍中尉
(演:クラレンス・ギルヤード・Jr / 吹:竹田雅則、吉村よう)
チッパーのRIO。ノリノリでカラオケに興じるなど陽気な性格。
グース亡き後、マーヴェリックと一時コンビを組むが、息が合わず口論になる。
チャールズ・“チッパー”・パイパー海軍大尉
(演:エイドリアン・パスダー / 吹:不明)
サンダウンとコンビを組むアビエイター。
トップガンの卒業式では、サンダウンとともに姿を見せないマーヴェリックのことを案じていた。
上記のマーヴェリック組、アイスマン組、ハリウッド組、チッパー組に加えカウボーイ(アビエイター)・ウッディ(RIO)組、サイコ(アビエイター)・ババ(RIO)組の6組12名でトップガンの首席を争う。
その他の人物
ビル・“クーガー”・コーテル海軍大尉
(演:ジョン・ストックウェル / 吹:加瀬康之、曽我部和恭)
マーヴェリックの僚機。優秀なアビエイターでトップガン行きが決まっていた。
物語冒頭、インド洋上で国籍不明の敵機と戦闘を行い、その際のショックで軍を退役してしまう。
サム・“マーリン”・ウェルズ海軍中尉
(演:ティム・ロビンス / 吹:斉藤瑞樹および羽鳥佑、小野健一)
クーガーのRIO。クーガーが退役した影響でトップガン行きを逃す。
…が、クライマックスでまさかの再登場。相棒を失った者同士でマーヴェリックとコンビを組む。
トム・“スティンガー”・ジャーディアン海軍中佐
CAG(空母航空団司令官)。マーヴェリックたちの上官。
問題行動を起こすマーヴェリックを煙たがりながらも、トップガンへの派遣が決まった際は激励する。
キャロル・ブラッドショウ
グースの妻。明るくおしゃべりな女性で、グースとの夫婦仲は良好。
夫を失った際は悲しみに暮れながらも、マーヴェリックに再び飛ぶよう促す。
(演:アーロン・ワイス、アダム・ワイス)
グースの幼い息子。
デューク・ミッチェル
マーヴェリックの父。劇中では既に故人であり、写真のみ登場。
優秀なアビエイターだったが、戦闘中に帰らぬ人となる。
彼の死の詳細はなぜか機密事項とされている。
登場兵器
【F-14 トムキャット】
【A-4 スカイホーク】
【Mig-28 F-5 タイガー】
※映画オリジナルの架空機。
【スタースクリーム 】
ご存知、悪のデストロン軍団に所属する永遠のNo.2…え、トップガンにトランスフォーマーは出ないだろって?
それは作品を見て確かめよう!
日本語吹き替え
地上波初放送でもあるフジテレビ版では渡辺裕之が、日本テレビ版では高橋広樹が、テレビ東京版では森川智之(現在はクルーズの本人公認の専属声優でもある)がトム・クルーズの吹き替えを担当。それぞれが個別の人気を博している。
セルソフト版の吹替ではタレントの塚本高史がトムの吹き替えをしているが、この吹替版の評判は非常に悪く、某大手オンラインショッピングのカスタマーレビューで酷評や星一つ(5つ星中)のレビューが相次いでいた。※1 日本国内における同作の評判も落としかねないほか、一時期は演者である塚本に対するヘイトも集中してしまうほどであった。
のちにこれを見兼ねたのか、渡辺と森川によるテレビ放送の吹替版が収録された※2「パラマウント思い出の復刻版ブルーレイ」が発売され、以降に発売された円盤の音声トラックからは塚本によるセルソフト版の吹替は削除された。
また、森川によるテレビ東京版に関しては今後発売の映像ソフトにおける吹替として塚本版と差し替えるにあたって同「思い出の復刻版」レーベル初となる吹替の補完作業が敢行された(放送当時カットされた部分を当時の声優および一部代役で追加録音し、本編ノーカット化)上での収録という異例の特別対応がなされた。なお、この音声トラックから塚本版が削除されて初となる同作の円盤は同レーベルの売り上げ一位を記録するなど大きな売り上げを収めている。
続編『トップガン マーヴェリック』では、クルーズの吹替に森川が定着していたこともありテレビ東京版の声優陣が続投となった。
Amazonプライムビデオをはじめとする各種サブスクリプションでは上述する通りお世辞にも評判が良いとは言えないソフト版が配信されているので、初見の人に勧めるのには適していない。また『マーヴェリック』とはクルーズとヴァル・キルマーの声優が異なってしまっており、続編に向けての予習にも適していないといえる。予習に向けて、声優陣の統一された吹き替え版を視聴したければ思い出の復刻版ブルーレイを購入した方がおすすめ。
また、こちらは同じ日本語版でも字幕版の話となるが、塚本版音源の削除以前の字幕版は続編で重要キャラクターとなる登場人物「ペニー・ベンジャミン」の名前を言及するシーンにおいて彼女の名前を「ベニー」と誤訳するミスがあったことが判明しており、続編公開予定の無かった当時は些細なことであったものの、現在となっては大問題になりかねない誤訳であるために続編公開時にリリースされた円盤からは塚本版音源削除とともに「ペニー」表記に修正されている。結論、吹替にしろ字幕にしろ「思い出の復刻版」以降の2020年に発売された円盤を買って鑑賞するのがベストと言える。
※1 本来トム・クルーズの吹替は鈴置洋孝と森川智之が専属、その他の経験者も山寺宏一や小杉十郎太など、大御所の声優が務めてきたこともあり、声優業を主体としていない彼には分が悪かったとも言える。また、アフレコ当時はクルーズの初代専属声優であった鈴置が存命であり、翌年に逝去したため鈴置版『トップガン』を作る機会を逃してしまったこと、現在クルーズの吹替を専属で務めている森川がこのソフト版「トップガン」ではクルーズのライバル役のヴァル・キルマーの吹替をしているという混乱を招きかねない複雑なキャスティングである点も厳しい評価を集める要因になっていると思われる。
※2 高橋のバージョンは、テレビ放送用に特殊な編集が施されておりカットも多い為に収録が見送られたと思われる。なお渡辺版は初回放送の時点でノーカット、森川版はカット部分を当時と同じ声優(一部代役)で追加録音を施しノーカット化されている。
サウンドトラック
劇伴の人気も高い作品であり、サウンドトラック収録曲は現在でも幅広くBGMに使われている。特に、ケニー・ロギンスの歌う主題歌『Danger Zone』はよく使用されるため、映画を見たことのない人でも耳にしたことがあるのではないだろうか。そのほかにも、世界的ギタリストであるスティーヴ・スティーヴンスの演奏による『Top Gun Anthem』、後述するように多くの賞に輝いたベルリンの『Take My Breath Away』、エンディングを飾るチープ・トリックの『Mighty Wings』などが有名。
収録曲リスト
1."Danger Zone" Kenny Loggins
2."Mighty Wings" Cheap Trick
3."Playing with the Boys" Kenny Loggins
4."Lead Me On" Teena Marie
5."Take My Breath Away" Berlin
6."Hot Summer Nights" Miami Sound Machine
7."Heaven in Your Eyes" Loverboy
8."Through the Fire" Larry Greene
9."Destination Unknown" Marietta
10."Top Gun Anthem" Harold Faltermeyer・Steve Stevens
また、サウンドトラックとは別に劇中でマーヴェリックやグースが歌う曲としてライチャス・ブラザーズの『You've Lost That Loving Feeling』、ジェリー・リー・ルイスの『Great Balls of Fire』が、チャーリーの自宅でマーヴェリックが両親の思い出を語るシーンで流れる曲としてオーティス・レディングの『(Sittin' On) The Dock Of The Bay』などが印象的に使われている。
受賞
本作は音楽面を中心に様々な賞を受賞した。
第44回ゴールデングローブ賞ではジョルジオ・モロダー、トム・ウィットロックが『Take My Breath Away』で歌曲賞を、第29回グラミー賞ではハロルド・フォルターメイヤー、スティーヴ・スティーヴンスが『Top Gun Anthem』で最優秀ポップ・インストゥルメンタル・パフォーマンス賞を受賞。
そして第59回アカデミー賞では歌曲賞、録音賞、音響編集賞、編集賞の4部門にノミネートされ、ジョルジオ・モロダー、トム・ウィットロックが劇中歌の『Take My Breath Away』で歌曲賞を受賞した。
また、第11回日本アカデミー賞では優秀外国作品賞を受賞している。
影響
1983年に雑誌『California magazine』に掲載された『TOP GUNS』という記事が本作の元ネタ。
また、日本製アニメ『超時空要塞マクロス』(米題・ROBOTECK SAGA EP1)に触発され、影響を受けたと当時のスタッフは公言していた。ストーリーの原型は1982年の映画『愛と青春の旅だち』とも言われている。
一方で、本作に触発されて1990年に織田裕二主演の映画『BEST GUY』が、1991年にチャーリー・シーン主演のパロディ映画『ホット・ショット』がそれぞれ製作された。他にもアニメ作品『トップをねらえ』(タイトルの元ネタのひとつ)、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』など、さまざまな作品に影響を与えている。
上述した通り、トム・クルーズがスター俳優としての地位を確立した大ヒット作品である。この1986年のトップガンに始まり、同年公開の助演「ハスラー2」と、その次の88年の主演作「カクテル」もヒットを記録した。しかし、これら三作はどれも基本的なプロットが同じであり(荒削りな才能を持ちながら内面に欠点を抱える主人公が、オシャレなアメリカン・ライフを送りながら師匠やライバルとの衝突、ヒロインとの恋や仲間の死などを乗り越えて劇中最強最高の存在へと成長するサクセス・ストーリー)、その大ヒットしすぎた悪影響か、後年の主演作「デイズ・オブ・サンダー」等でも類似のプロットが焼き直されていき、こうしたキャリアはやがて「トム・クルーズ作品はワンパターンなオレ様映画ばかり」などと批判される原因にもなってゆく。
クルーズ本人もこうした評価を覆すため、プロデューサー業へも活動の幅を広げて自身で異なる作風を選んで出演したり、「ミッション・インポッシブル」シリーズを立ち上げてそれまで未経験だったスタントマン無しの過激なアクション撮影に挑むなど、新たなキャリアを追求してゆくことになる。
トム・クルーズのカッコよさに影響され、当時の若者の間ではフライトジャケットが流行し、特にMA-1ジャケットが人気ファッションアイテムとなった。劇中でマーヴェリックは一度も着ていなかったが。
『ウマ娘プリティーダービー』の登場キャラクター、マヤノトップガン(ウマ娘)のモデルとなった競走馬の名前の由来であり、そのため彼女の衣装や家族構成など設定のモチーフには本作にちなんだものが数多く盛り込まれている。そして、続編では公式で宣伝パイロットに就任。まさかの展開である。
関連動画
オフィシャルトレーラー(2020年5月)
Kenny Loggins - Danger Zone(2011年3月)
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