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IMAX

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あいまっくす

カナダのIMAX社(アイマックス・コーポレーション)が開発した動画フィルムの規格及びその映写システム。近年日本では映画館における施設の名称として知られる。

一般に、通常の映画で使われるフィルムよりも大きなサイズで映像を記録・上映することができる。また、音響やスクリーンを構成する座席配置などの要素も専用のものを採用することが多く、それによって総合的に高水準の映画上映が期待できる。

世界初のIMAX上映は日本で行われた。1970年大阪は千里丘陵で行われた「日本万国博覧会」内のパビリオンである。また、世界初のIMAX 3D上映も日本の「つくば科学万博」で行われている。

フィルムIMAX

狭義のIMAXと呼ばれるものはこのフィルム上映方式のものである。上記の世界初のIMAXも何れもフィルム上映方式であり、近年までこのフィルム方式のみが唯一のIMAXシアターとして維持されてきた。

通常の映画フィルムは35mmフィルムで撮られたものであるが、中には70mmフィルムという大型のフィルムがある。単純に倍の幅で撮影が可能なのだが、IMAXの場合、この70mmフィルムを横向きに使用する。

フィルムと言うのは通常縦方向より横方向のが長いわけで、35mmとか70mmという長さはこの横幅の長さを表すのだが、なんとIMAXは縦幅方向だけでも70mmサイズを使用するため、これらの通常フィルムより段違いに大きくなる。当然横幅はもっと大きく取る。

通常の70mmフィルムの縦幅が5パーフォレーションなのに対し、IMAXの横幅は15パーフォレーションである。

これがどのような効果をもたらすのかと言うと、要は1コマ1コマが通常フィルムよりはるかに大きくなる分、内容される情報量も増加する。

画像の要素を縮めるといっても限界があるから、当然フィルムそのものが大きい方が、高精細度の画像をコマに収めることが出来るのである。

IMAXを上映する劇場は、通常の映画館より大きなスクリーンを持つ。また通常の映画館は1:1.85~1.9程度(ビスタスコープスクリーンと呼ばれるもの)や1:2.4程度(シネマスコープスクリーン、シネスコと呼ばれるもの)の縦横比率のスクリーンサイズなのに対し、1:1.43程度と縦幅も大きく取ってある。

また、広い視野角を保てるように座席は急勾配に設置される。昔の映画館は床面がフラットで緩やかな傾斜が多かったが、IMAXシアターは近年のシネコンもびっくりの非常に勾配・階段のキツいスタジアム方式となっている。

しかしフィルム・カメラともに高額な上に撮影する際の合わせも非常に手間がかかることから、IMAX対応となるフィルムの撮影そのものが限られる傾向にある。

2000年代に入ってアイマックスDMRという事業により、旧作をIMAX対応フィルムに変換することが行われ、これにより一部の作品がIMAXで楽しめるようになったものの、やはり上映作品は少なく、学術的な記録撮影や星などの映像フィルムが多数を占めていた。

したがってIMAXシアターも博物館や美術館・記念館などに設置され、こうした記録映像を流すだけのシアターが(特に日本では)多かった。

本拠地カナダやアメリカでは商業映画用IMAXシアターもそこそこ普及したが、日本では少数が配備されたのみですぐに廃れてしまっている。原因は、撮影も高価だが劇場維持のコストも馬鹿にならないことによる。日本の商業用設備としては、プリンスホテルグループで展開された「メルシャンIMAXシアター」(品川と軽井沢のプリンスホテルに存在、品川のものは閉鎖後に東映グループのシネマコンプレックス「T・ジョイ」品川IMAXデジタルシアターに改修された)として展開されたものや、ユナイテッドシネマ札幌(こちらも後にデジタルシアターに改修)、新宿高島屋などに存在したが、何れも営業を終了している。

日本に2022年現在現存するIMAXフィルム対応シアターは、鹿児島市立科学館(鹿児島県鹿児島市)を残すのみである。これはいわゆるドーム型のIMAX DOMEと呼ばれるタイプで、主にプラネタリウムとしての機能を期待したもの。

他に近年まで生き残っていたものとして所沢航空発祥記念館(埼玉県所沢市)、浜岡原子力館(静岡県御前崎市)、スペースワールド福岡県北九州市)内の各施設などがあげられるが、スペースワールドの営業終了に伴い通常映画館タイプのIMAXフィルムシアターは全て姿を消した。なお大阪文化館・天保山(旧サントリーミュージアム)(大阪府大阪市)のように、劇場施設がそのまま残されている設備も存在するが、閉鎖されており、恐らくスクリーンはともかく上映設備はIMAX社に返却されていると考えられる。

IMAXデジタルシアター

2008年より新たに開発された方式。厳密には前者のIMAXとはシステムが異なり、単に「IMAX社の開発した新しい上映システム」という意味合いと言っても良い。

2台のプロジェクターを使用し、専用の音響システムや大型のスクリーンを採用することで、デジタル上映における通常より遥かに鮮明な画像による映画上映を提供しようというもの。

日本国内でも2009年より設置が開始され、主にシネコンにおいて、各サイトの目玉シアターとして各館1つのペースで日本各地に設置が進んでいる。

採用する109シネマズやユナイテッド・シネマが先行して採用し、シネマサンシャインやTOHOシネマズなどでも採用が順次進んでいる。

「LIEMAX(ライマックス)」?

こうして鳴り物入りでデビューしたIMAXデジタルシアターであったが、一つ問題があった。それは「フィルムIMAXより画像鮮明度やスクリーンの大きさで見劣りがする」という問題である。

先にも述べた通りIMAXとIMAXデジタルシアターは厳密には別のシステムである。しかしやはり同じIMAXと言われるだけあり比較されてしまう。また世界的に上映される作品は、主に新作において「IMAXフィルム」と「IMAXデジタル」で統一される傾向にあるため、否が応でも比較対象になってしまうのである。

さて、IMAXデジタルシアターの場合、確かに通常の映画館スクリーンより大きなサイズのものを用意することが多い。基本的にスクリーンは館内の端から端ギリギリまで張りつめられ、余裕がある一般スクリーンより見た目だけでもかなり大きい。

また、各シネコンはIMAXスクリーンを大体サイト(そのシネコン1つ全体のこと)内でもっとも大きなスクリーンで充てることが多いため、必然的に大画面が期待出来る。

しかし、元々専用の劇場を有するフィルムIMAXよりスクリーンサイズは小さくなることが多く、またスクリーン縦横比率もIMAXフィルムの「1:1.43」ではなく、ビスタスコープサイズに近い「1:1.85~1.91」程度になっている(一部の改修シアターではシネマスコープサイズ近似の1:2.08~2.41ほどになっているものもある)。そもそもIMAXデジタルの標準フォーマットが1:1.91なので仕方ないといえば仕方ないが、1:1.43比率の映像は全てを投影出来ないということになる。

また、IMAXデジタルシアターは一般に「2K」と呼ばれる画像鮮明度しかないのに対し、フィルムはそれより遥かに鮮明な画像を映せるとされる。

こうした傾向に対し、従来からのフィルムIMAXに慣れ親しんだアメリカ人はデジタルシアターを「嘘のアイマックス」、つまりlie IMAXから縮めて「LIEMAX」と呼ぶようになったという。日本でもそのまま「ライマックス」と呼ぶものがいる。

こうした批判は、「インターステラー」「ダークナイト・ライジング」「スターウォーズ フォースの覚醒」などの作品において、近年衰退傾向にあったIMAXフィルム撮影を断行することによって顕著になった。

これらの作品では通常スクリーンではシネスコサイズとして縦幅を大幅に削った映像を提供する。IMAXデジタルだとビスタサイズのため少し縦幅は伸びるが、それでも足りない部分は削られる。そしてその削られた部分を見れるのは、縦幅のもっとも大きいフィルムIMAXだけ、というカラクリである。

これによって、デジタルシアターだけを見た場合の不満が溜まり、フィルムの再評価が巻き起こるきっかけとなった。特に「ダークナイト」シリーズや「インターステラー」の監督であるクリストファー・ノーランは、熱狂的なデジタルアンチであり、意図的にフィルムを使用してデジタルとの差をつけた意を表明している。

しかしながら、これまでIMAXフィルムが商業的には到底成り立たない水準である場合が多かったのも事実である。日本で記録映像上映館以外は絶滅したのもこれがそもそもの原因である。そして、IMAXデジタルシアターの場合、既存のシアターを改装するだけで比較的容易に導入できる。更に運用コストは遥かに安い。こうしたプラス面から、デジタルシアターの導入が圧倒的優位となっているのが現状である。

なお、技術的にスクリーンサイズはどこまでもでかく出来るのではないかとされているが、実のところある程度以上大きくすると、デジタルシアターの場合解像度が足りず映像が雑になるため避けられているという。スクリーンサイズについは後述する。

なお、そもそもデジタルで撮影した作品をIMAXフィルムでかける場合においては、フィルムソースが無いためにデジタルで上映するハメになる(既存のフィルムシアターにデジタル上映機器を増設)。この時上映はデジタルシアターと同じ2K上映となってしまうため、ただ馬鹿でかいだけのIMAXデジタルシアターとなるばかりか、上述の問題でそこそこの大きさのIMAXデジタルシアターより映像が雑になる問題が存在する。

レーザーIMAX

そんなIMAXファンの不満にお答えするかのように、第三世代のIMAXシアターが早くも2014年にはお目見得した。最新式のレーザー映写方式を使用したIMAXシアター「IMAX with LASER」である。

同方式ではこれまでのデジタルシアターより遥かに鮮明な4K対応となっており、デジタルシアターより遥かに高鮮明かつ大型のスクリーン導入を可能とした。

つまりフィルムIMAXの正統な後継として名乗りをあげたわけである。ただし、一部の鮮明度は未だフィルムに軍配があがるとするデータもある(IMAXフィルムそのものの解像度は15Kとも言われており、フィルムシアターでこれを上映する場合はおおよそ8K~10Kの解像度で提供出来る)。もっとも、最新式のレーザー投射方式により画面の明るさや鮮やかさはフィルムに勝るとも劣らぬ質と言えよう。

ついでに言えばデジタル作品はデジタルシアター規格で上映するしかないフィルムシアターと違い、デジタル作品でもデジタルシアターより鮮明な画質をお届けできるようになった。

ただし、レーザー照射固有の事情により「スペックル」と呼ばれる明暗の斑点模様が発生する現象(スペックルノイズ)があり、特に白い画面ではギラつきのように見えることから、一部の客は不快に感じることもある。映画館によってスペックルノイズの減少を図っているところも多いが、完全に解決はしていないようだ。また、人によっては気にならず視聴出来たりもするという。

導入コストも通常のデジタルシアターより高額なものの、フィルムに比べると低く、本格的な代替シアターとして期待されている。

日本では、2015年新たに誕生した大阪府吹田市の109シネマズエキスポシティにて採用されたのが第一号である。そう、何を隠そうこの地は1970年に初めてIMAXが上映された万博記念公園の地であった。

他に日本では、2019年にオープンしたグランドシネマサンシャイン」に導入された。

この2館のものは現在はIMAXレーザー/GTテクノロジーと呼称されている。GTの意味について具体的に言及されているものは少ないが、どうもそのまま「Giant Theater」らしい…。

シングルレーザーIMAX

第4世代とも言えるIMAXで、こちらはIMAXデジタルの置き換えを想定している。つまり、IMAXデジタルをレーザー映写方式としたもの。

映写比率は1:1.91のIMAXデジタルサイズのままである(IMAXデジタル置き換えにおいての話である)が、上述したレーザー方式が二台映写方式となっているのを更なる技術進歩によって1台映写としたもので、より低コストで運営可能。その上4K・4K3Dに対応出来ている点も同じである。これに伴い、上述レーザー方式は「GTテクノロジー」と称されるようになった。

大元であるフィルムIMAXの置き換えは上記GTテクノロジータイプのツインレーザーがメインであるが、デジタルIMAXの諸々の不満のうち、映写比率を除く部分をある程度改善したと言える。

こうした進歩は、GTテクノロジータイプが元々フィルムIMAXを導入していた高コスト館プラスアルファ程度への普及に留まっていること、レーザー映写方式をとるプロジェクターや大型画面の映画館が世間に増加(ことに「ドルビーシネマ」など世界的にブランド化した規格も存在する)し、IMAXのウリであった「圧倒的な映像美」の優位性が大きく崩れてきたことから起こったものと思われる。

日本ではデジタルIMAX・レーザーIMAX共に一番手に取りいれた109シネマズがやはり一番手となり、最初期のIMAXデジタルである川崎・名古屋の両サイトを改修する形で導入した。なお、ツインレーザー同様1:1.43比率に対応出来るのかについては現在のところ不明(川崎・名古屋ともスクリーンサイズに変更は無い)。

続けてユナイテッド・シネマでも順次導入されているがこちらも改修での導入であり、スクリーンサイズが変更されていない。

また、シングルレーザー方式ではツインレーザーに見られたスペックルノイズが低減されていると言われる。

スクリーンの大きさ

よく「IMAXはでかい」と言われているスクリーンサイズ。どのくらい大きいのか参考までに述べる。

フィルム

世界最大のシドニーアイマックス(2016年9月閉鎖、レーザー式に置き換え予定)が縦29.4m・横35.7mというとてつもないでかさのスクリーンを有していた。これは常設館のスクリーンサイズとして、全ての映画館の中で最大のものであるといわれる。

日本国内で常設されたものはスペースワールドの「ギャラクシーシアター」が最も大きく、縦21m横28mとこれまたとてつもない大きさになっていた。所沢のものは一回り小さい縦15m横20mとされる。IMAXドームと呼ばれる、天井貼り付けのドームタイプのものでは、直径サイズで表記される。現存する鹿児島市立科学館のものは直径23mで、概ねこの前後の大きさのものが多い。

誤解されがちだが、一概にあらゆるIMAXフィルムシアターが巨大なわけではない。しかしそれでも、小さいものでも横幅20m以上あるものが普通と言えよう。

IMAXフィルムの縦横比率は1:1.43程度であり、後に紹介するツインレーザー式で新設されたものはこのサイズに忠実に沿ったものも多いが、当時多数建設されたフィルムIMAXシアターは単純に横4:縦3の比率となっているものが多い。これは、当時の家庭用テレビのスクリーン縦横比率とほぼ同じである。

デジタルシアター

国内のIMAXデジタルシアターで最も大きいのは成田HUMAXシネマズのもので縦14.5m横24m(推定値)の大きさである。先に述べたがデジタルシアターではこのくらいの大きさが限界サイズと考えられている。新設されたデジタルシアターは概ね横幅20m前後のビスタサイズに近いスクリーンサイズである。

これは近年増加しつつある他の大型スクリーン(プレミアムラージフォーマット=PLF。国内では東宝の「TCX」やイオンシネマの「ULTIRA」などが知られる)とほぼ横幅で近似しているか少し上回る程度である。

他のシアターは公表していないものが多い。IMAX側によると、スクリーンサイズで劇場を選ばせないという配慮によるものらしい。

これに対して先述の「ライマックス」呼ばわりをする一部のファンを中心に「フィルムより明らかに小さいのがばれるのが嫌だからだ」という批判もある。ただ、成田のサイズを見てもやはり一回り以上小さいのは否めないだろう。

なお、109シネマズなどの初期の改修スクリーンサイズの参照値としておおよそ「縦8.5m横17.6m」程度のスクリーンが用意されていると考えられている。シネコンのIMAXデジタルシアター、特に一般スクリーンの改造によって誕生したもののサイズは概ねこの程度と考えられる。フィルムIMAXシアターの劇場跡地を流用した札幌や品川のものでは横幅は22m前後に達するが、縦幅は10m前後に過ぎないなど、改修シアターはビスタよりもシネスコサイズに近いスクリーンも多い。

なお、デジタルIMAXを改修したシングルレーザー方式であれば、解像度が4Kになるために単純計算では倍の大きさまで拡張できる。が、1台映写では映写機の限界値も横30m前後が限界になると思われるので、それ以上となると後述のツインレーザーを利用する必要がある。

レーザー

まだまだ登場したばかりのレーザー式が最大どの程度のスクリーンを造成出来るかは未知数である。一先ず参照値として国内唯一の109シネマズエキスポシティのものを置いておくと、縦18m横26m。これは国内で視聴可能な商業用映画館スクリーンとしては最大サイズであり、スペースワールド閉鎖後は日本最大サイズのIMAXシアターとなる。

また、池袋のグランドシネマサンシャインの予定値もほぼ同じ、縦18.9m横25.8mである。

現行のフィルムシアターのスクリーンをそのままレーザー用に流用することも多く、メルボルンIMAXシアターは縦23m横33mの巨大なシアターを装備し、これはシドニー亡き後世界最大級のスクリーンである。

なお、シドニーIMAXは2020年にレーザー方式で新規開業予定であったが新型コロナウイルス感染拡大等により現在閉鎖中。建て替え後のレーザーシアターについて「現行より縮むが世界最大にはなる予定」としている。ファンによる推定値はおよそ縦26m横35mと見積もられている。

フレームブレイク

IMAXシアター(ここではデジタルシアターを主に指す)においては、通常のシネマスコープスクリーンより縦幅が大きいことから、近年の一部の3D上映作品では、上映時にシネスコサイズで上映しつつ、際立つシーンでIMAXにのみ生まれている余白部分に映像を飛びださせる、という演出を行うことがある。

これが「設定された映画のフレームを飛び越えている」ように見えることから、フレームブレイクと呼ぶ。

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