「空で考えてたら死ぬ、俺を信じろ!」
演:トム・クルーズ
日本語吹替:渡辺裕之(フジテレビ版)、高橋広樹(日本テレビ版)、塚本高史(ソフト版)、森川智之(テレビ東京版、『マーヴェリック』)
概要
本名はピート・ミッチェル(Pete "Maverick" Mitchell)で、コールサインはマーヴェリック(元は焼印の押されていない牛を意味し、そこから転じて群れのルールに従わない逸れ者を指して使われる)。アメリカ海軍に所属するF-14のアビエイター。
プライベートではワッペン付きのフライトジャケットを着用し、カワサキのバイクであるニンジャに搭乗している他、戦闘機搭乗の際は黒地に赤と白のストライプの入った専用のヘルメットを着用する。
腕は立つものの、かつてパイロットだった父の死の謎を引きずり、そのコールサインの通り、無鉄砲な操縦ばかり行う問題児。非常に優秀でバックトゥバック(機体の底面をそのまま相手の機体の底面にピッタリ合わせる)からコブラ機動(機体を走ってる方向に対して直角90度に傾けた後、元の姿勢に合わせる)等のマニューバをいとも容易くやってのける等、飛行機乗りとしては天才の域にある。
一方で上官をはじめ彼の飛行を見てきている人物からは「直感でしか飛んでいない」と評価されており、実際に知識や理論に伴った飛行技術に長けていなかったことからトップガンでは同僚に敗北し、実戦を想定しすぎた結果ルールを無視した機動で減点されてしまう事も多かった。早い話が死に急ぎ野郎だった。
活躍
『トップガン』(1986年)
空母・エンタープライズにて勤務するF-14のアビエイターとして登場(階級は大尉)。着用するフライトジャケットはゴートレザー製のG-1ジャケットで、プライベートバイクであるニンジャはGPZ900Rに搭乗する。
レーダー士官(RIO)の“グース”ことニック・ブラッドショウとタッグを組み、問題行動を起こしながらもその優秀さで一目置かれていた。ある時インド洋で飛行している所をMiG-28と遭遇。この時は発砲はなく両者睨み合いで済むものの、この交戦で「死の危機」と「家族を残して死ぬ罪悪感」に苛まれ、彼より優秀なパイロットだったクーガーが退役。それに伴い、繰り上がりで上官である“スティンガー”ことトム・ジャーディアン中佐より推薦され、トップガンに派遣される。
トップガン編入後も主にグースとペアを組んで、“アイスマン”ことトム・カザンスキーと“スライダー”ことロン・カーナーのペアと二強を競っていたが、ルール破りや素行不良による減点、「直感でしか飛ばない」せいで作戦負けを喫するなど差を付けられていた。
そんな中でもビーチバレーで楽しんだり、教官の“チャーリー”ことシャーロット・ブラックウッドとの逢瀬を重ねるなど人生と青春を謳歌するが、ある演習の時、訓練中に乗機がアイスマン機に近づきすぎたことでジェット後流に巻き込まれてエンジンが停止し、機体がスピンを起こして失速。緊急脱出を行うものの、その時の事故によって相棒のグースが死亡する。
自分の操縦技術過信していたがために事故を起こしたという事実に自分の実力を思い知らされただけでなく、天涯孤独で生きてきたマーヴェリックにとって家族同然だったグースを失くしたことで「(誇れるものも大事なものも)全てを失った」と感じたマーヴェリックはトップガンを中退するか悩む。
トップガンから去りかけた彼を止めたのは上官の「ヴァイパー」ことマイク・メトカフ中佐で、彼はかつての同僚でもあったマーヴェリックの父の死の真相を語り、失意の底にあった彼を激励する。トップガンの卒業式にマーヴェリックは姿を現したが、その直後インド洋での領海侵入を行ってしまった僚艦の救援要請が入り、急遽任務に赴くことに。
そして再び現れるMiG-28。前回とは違い、今回は領海侵入によって怒り心頭で容赦の無い殺意を向けてきた。
マーヴェリックはMiG-28だけなく『グースの死を苛む自分』も含めた強力な相手との戦いに命を懸けて挑むこととなる。
最初、アイスマンとスライダー、“ハリウッド”ことリック・ネヴン大尉と“ウルフマン”ことレオナルド・ウルフ中尉のペアが2機で出撃するが、敵機は3倍の計6機で出向いており、ハリウッドは早々に撃墜され、控えで待機していたマーヴェリックも現場に急行する。
しかし、到着しかけた所で、マーヴェリックは再びジェット後流に巻き込まれた事で立て直しこそしたものの、グースのトラウマから一度は反転して立ち去ろうとしてしまうが、彼のドッグタグを握り祈る様に戦線に復帰する。
自身の技量を存分に発揮し、アイスマンとの連携も合わさって計4機(アイスマンは1機)撃墜する。
空母への帰投後、マーヴェリックはクルー全員に祝福され、アイスマンとも軽口を叩きながらも信頼関係を築く。
その後、上官であるスティンガーの計らいでトップガンの教官に推薦され、一度は自分の下を去ったチャーリーとも再会する。
『トップガン マーヴェリック』(2022年)
前作から30年以上が経過するが、度重なる問題行動が災いしてか、勲章こそ大量に授与されているものの、階級は未だに大佐止まり。しかしながら腕は衰えておらず、上官達からは疎まれている一方、その実力から多くの部下にも慕われている。
また、自分専用のガレージと飛行場を持っており、趣味で所有しているP-51を飛ばすなど、空を愛する気持ちは相変わらず。フライトジャケットはアラミドファイバー製のCWU-36/Pジャケットを着用し、プライベートバイクであるニンジャはニンジャ・H2となっている。
ダークスターの飛行実験でテストパイロットを担当し、前人未到のマッハ10を超えるも、それによって機体を失ったことから、トップガンの臨時教官に命じられる。本来ならば中止される筈だった計画を勝手に進行させた事、貴重な実験機を損失したのもあってクビだったが、海軍大将となっていたかつての同僚の"アイスマン"の口添えによって復帰することとなったのである。
招集を受けたマーヴェリックは、核拡散防止条約に違反して某ならず者国家が建造したウラン濃縮プラントの破壊という極秘任務を受ける。
摺り鉢状の渓谷内に存在し、GPS妨害装置と大量の地対空ミサイルに加え、周辺の飛行場から展開するSu-57と年代物のF-14によって強固に防衛されるこのプラントについて、マーヴェリックは、F-35とGPS誘導爆弾であるJDAMを用いた高高度対地爆撃を断念し、F/A-18E/Fとレーザー誘導爆弾であるペイブウェイを用いる低高度侵入からの対地爆撃を提案する。
極秘任務に従事する若きアビエイター達を持ち前の無鉄砲な手腕で鍛えるが、その中には、前作で失った戦友のグースの息子「ルースター」ことブラッドリー・ブラッドショウがいた。
グース亡き後、彼の妻にしてルースターの母であるキャロルから、「息子をパイロットにさせないで」と頼まれていた事から、マーヴェリックは彼の海軍兵学校への入学願書を勝手に抜いてしまい、再入学まで4年遅れを取る事になったルースターからはそれを根に持たれてわだかまりが解けずにいた。
マーヴェリック自身も、パイロットの夢を実質否定した母親で無く、恨むなら自分を恨めば良いという思いからその事情を説明出来ず、更にパイロットとして行動力にも欠ける彼に対してどう接するべきか思い悩む。
そんな中、マーヴェリックは任務遂行のための最終的な作戦の詳細を決定する。
その内容とは、『単座機と複座機の二機一組を二組、計4機編隊で飛行。地対空ミサイルに探知されない超低空で渓谷内を岩壁にぶつからない様、高速飛行しながら、濃縮プラントの存在する摺り鉢状の山に差し掛かった所で一気に上昇。登り切った所で背面飛行を行い、谷底へ急降下。そこで体勢を立て直し、レーザー照準の後にペイブウェイを投下すると同時に再び急上昇し(これを二組で二段階に分けて爆撃を完了させる)、登り切った所に待ち構えている地対空ミサイルは、空戦機動で回避する』と言った低空飛行から爆撃までは2分半以内に終わらせなければならない上に、強力なGに苦しめられた後は更に地対空ミサイルを自力で回避する必要があり、アビエイターの一人であるフェニックスが「そもそも、遂行可能ですか?」と漏らす等、トップガンを卒業したアビエイターからもツッコミを受ける程の高難易度だった。
そんな「理論的にはやれるが技術が追い付かず実質無理」とされる作戦でも『直感』で達成できると考え、そのために多くの試練や苦難を乗り越えさせられるよう生徒達を親身になって鍛えていくが、彼自身も30年の間に様々な事があり、それをなぁなぁのままにして生きてきたことへのツケをキャッシュ、時には甲斐性で払うこととなる。
そんな中、彼を庇い続けてくれていたアイスマンが持病により亡くなってしまい、いよいよマーヴェリックの軍属パイロット人生に後がなくなってしまう。
そのまま迎えた極秘任務の日。マーヴェリックと生徒達は作戦を無事成功させられるのか?
余談
なお、作中でF-14を駆って管制塔のすぐ近くを高速で飛び管制官を驚かせる有名なシーンがあるが、実際にやると衝撃波で管制塔を破壊しかねない危険な行為なので、良識あるパイロットの皆さんは絶対に真似しないように(撮影では安全に配慮して「速く飛んでいるように見せる」飛び方をしているだけで、実際には見かけよりかなり遅く飛んでいるとの事)。
また、『トップガン マーヴェリック』で彼が所有しているP-51は演じるトム・クルーズの私物である(もちろん操縦もトム本人が行っている)。
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以下『トップガン マーヴェリック』のネタバレ注意
サイクロン「パイロット全員を危険にさらすか、もしくは…私の全キャリアをかけて、君を編隊長にするか…」
後ろ盾となるアイスマンが亡くなった事や期日内に自身の作戦が可能である事を示せなかった事で、上官であるサイクロンからは自分への引き継ぎを命じられ、自身は飛行禁止命令を受けるマーヴェリックだったが、生徒達を誰も死なせたくないという想いから、体を張ってその作戦の有効性を示すべく、無断でF/A-18Eを駆り、低空飛行から爆撃完了までの時間を当初の予定よりも格段に早い2分15秒に設定してデモンストレーションを行う。
そして、サイクロンや生徒達が見守る中、見事デモンストレーションを成功させ、極秘任務は達成可能と自ら証明してみせた事で、サイクロンの意向により編隊長になったマーヴェリックは複座機に乗る搭乗員にフェニックスとボブ、ペイバックとファンボーイを指名し、ウィングマンにはルースターを指名する。ハングマンはスペアとして待機。
メンバーはトマホークミサイルによる飛行場攻撃を合図にウラン濃縮施設へと飛ぶ。
計画通り、地対空ミサイルとパトロール中のSu-57の探知を避けながら渓谷へ侵入、施設への爆撃は成功したが、避けては通れない地対空ミサイルの餌食となる棺桶ポイントにて全機はミサイルから逃げるのに必死になる。そんな中、ルースター機のフレアが尽きてしまい、2発の地対空ミサイルが接近しあわや撃墜、というところでマーヴェリック機が間に入ってフレアを放出し彼を助けるが、もう一つのミサイルにより被弾、大破してしまい墜落する(PVでも流れた撃墜され落ちていくシーン)。その光景を目の当たりにしたペイバックも「パラシュートが見えない」と発言していることから彼の生存は絶望的に見えた…
以下更にネタバレ
奇跡的に彼は脱出に成功しており、目を覚ますと付近にはMi-24が徘徊していた。
孤立無援の中、次第に追い詰められていく彼の窮地を救ったのはルースターだったが、彼の機体もまた地対空ミサイルの餌食となってしまう。(よく見るとパラシュートで脱出しているのが見える)そして合流後この場から脱出するために行ったのが、
ルースター「あれを奪って逃げるんですか…?」
敵のF-14を奪取して脱出するというものだった。事前のトマホークミサイルによる攻撃で混乱している最中の飛行場で、唯一無事だった格納庫に潜入し、エンジンを起動させ、可変翼を最大幅まで展開。瓦礫が散乱し、使える距離が限られる短い誘導路でありながら、艦上戦闘機特有のSTOL能力をフルに活用し、前輪を破損しながらも離陸を成功させた。
しかし空母に戻ろうとする最中、パトロールから駆け付けた2機のSu-57に発見されてしまう。
適当なハンドサインでやり過ごそうとするも、さすがに誤魔化すのは無理があったらしく、敵のウイングマンが撃墜すべく背後に回ったが、自身が教えた言葉「考えるな、動け」をルースターに言われた事で意を決して先制攻撃しドックファイトに突入する。Su-57に対し性能差の面で圧倒的に不利なF-14だったが、持ち前の操縦技術で何とか対等にやり合い、全兵装を使い果たしつつも敵地からの脱出に成功するが、海上に出た途端別の敵機が正面に待ち構えていた。最後の悪あがきとして機体を上昇させ、その際に脱出を図るも脱出装置が作動せず、万事休すとなった。
生き残れないことを悔やみ「すまない…すまない、グース」と嘆き、撃墜を覚悟したその時、ハングマンが援護に駆けつけた。彼の手引きで空母に戻るも先ほどの離陸の際に前輪が破損していたために緊急着陸ネットを用いて何とか着艦に成功。無事に空母に帰還した2人は過去を払拭して真の和解を果たし、若き頃のマーヴェリックとグースのように親友となるのだった。
マーヴェリック「君は命の恩人だ…」
ルースター「父の代わりです!」
その後自分のガレージにてルースターとともにP-51を修理し、その場に来ていたペニーを乗せて空に飛び立った。
余談
・前作のMiG-28と本作のSu-57の撃墜スコアを合計すると5機になるためエースパイロットになった(前作でマーヴェリックが撃墜したMig-28は4機だった筈だが、今作では何故か3機という事になっている)。
・脱出装置が作動しなかったのは故障ではなく、離陸前に行う射出座席の安全装置を解除してなかったからである。