Su-57
すぅーぴぢしゃーとすぃぇーみ
ロシア航空宇宙軍(旧ロシア空軍)への配備に向けて製造されているステルス戦闘機。
アメリカのF-22やF-35に相当する第5世代ジェット戦闘機として開発された。
設計はスホーイ。NATOコードネームは「フェロン(Felon:重罪人)」。ただしコードネームが「FELON」であるという報道が先行して実際にNATOや公的機関が使っているのかはなかなか明確にならず、実際に使われているのが確認されたのは2023年、英国国防省のTwitterだったりする。
1990年代末にロシア国防省は次期戦闘機開発計画『PAK-FA』を策定。これに基づいた機体案を提出したミグおよびスホーイのうち、スホーイ案を採用して開発が開始された。
2010年1月29日に、試作機T-50がロシア連邦極東管区コムソモリスク=ナ=アムーレにて初飛行。
その後、合計9機の試験機(試作機)が製造され、開発・飛行試験や耐久試験、破壊試験などに供されている。
ロシア国防省は、2017年8月にスホーイの試作機T-50の制式採用の決定を宣言し『Su-57(Су-57)』の制式名が与えられた。
日本や欧米では、制式名称が発表されるまでは、計画名のPAK-FAをそのまま機体名として呼ぶことがほとんどであったため、PAK-FAのタグが付いた作品が多く存在する。
2018年2月末より、4機の試作機が対テロ作戦へ派遣されたロシア軍部隊が展開中のシリアに送られ、巡航ミサイルの発射試験などを実施している。
概観
胴体と主翼を一体的な形状とするブレンデッドウィングボディや、その下側に吸入口を配置して2基のエンジンを左右に大きく離して設置する設計、2枚の大きな垂直尾翼にエンジンノズルのあいだの大きなテイルコーンといった特色は、Su-27以降のスホーイ製の戦闘機の特色を継承している。
一方で、従来機と比べると炭素繊維などの非金属素材の割合が大きく増やされている。外形はステルス性を確保するためにほかのステルス機と同じく機体表面の凹凸を抑え、各部の角度がそろえられた平行線・平行面で構成されており、ミサイルなどは機内に格納する形となっている。
水平尾翼と垂直尾翼は翼面全体が動く全遊式で、垂直尾翼はやや外側に傾けられている。
ストレーキは、エンジン吸入口の上部前端を可動式(LEVCON)とし、非常に高度な機動性を実現した。
エンジン
試作機や初期生産機は二代目Su-35のものと同系列のAL-41F1が搭載されたものの、不充分であるとして新たに設計された「Izdeliye 30」で更新する計画である。2018年には試作2号機が左エンジンを実際に換装して初飛行し、現在試験中。
いずれもノズルを任意の向きに指向できる可変ノズルを搭載することで、良好な機動性を実現させたほか、アフターバーナーを焚かずに超音速で巡航することが可能である。
インテークには金属製の網状の部品(レーダーブロッカー)と、インテーク壁面にレーダー波の減衰材を設置して、レーダー波を減衰させてステルス性を確保している。
ステルス性
RCS(レーダー反射面積:レーダーへの映りやすさの指標)は、機密に指定されているために正確な数値が発表されていないものの、ロシア側も含めて多くのメディアで「かなり小さいもののF-22と比べるとやや劣る」と認めており、「代わりに低コストに努めて機動性などほかの性能を充実させるように注力した」とされている。
兵装
固定武装は口径30mmの航空機関砲9A1-4071K 1基が右LEVCON近くに搭載されている。
これは、従来より主力戦闘機で用いられていたGSh-30-1(9A-4071K)の改良型である。
ミサイルを機内搭載するウェポンベイは、主たるものが左右エンジンのあいだの前後2箇所と、左右エンジンのインテーク外側、主翼付け根部分のバルジに補助的なものが2箇所。
そのほか、ステルス性を無視できる場合には、主翼の左右それぞれ2箇所と左右エンジンインテーク下に1箇所ずつあるハードポイントにも搭載可能である。
他国の同様の戦闘機と同じく、これまで使われてきたミサイルのなかにはウェポンベイに対して大きすぎるものも存在するため、Su-57のために新規開発や改良が行われている。
2019年6月の時点で、年内の部隊への配備と、合計76機の調達が計画されており、配備に向けて最終的な試験が行われている。
一方で、2010年に初飛行して以来、配備予定の発表と延期が繰り返されており、導入予定数も発表や会見のたびに増減するといった具合で、高コストや新機構の開発の難しさが開発・配備の枷となる第5世代ジェット戦闘機の宿命ともいえる洗礼を受けることとなった。
すでに述べたとおり、エンジンなどの開発作業が完了したという情報もなく、導入予定数(諸説あるが)の少なさや開発の進捗を加味しても目撃情報や衛星画像、広報映像などから推測される実際の生産ペースが低調すぎるのではないかという指摘もある。
2014年以降、ロシアはクリミア半島やウクライナでいろいろやらかして経済制裁を受け続けているため最新装備の生産に悪影響が出続けており、今後も改善は厳しいと思われる。
運用
タス通信が2020年12月に関係者の話として報じた記事によれば、最初の生産バッジの機体は南部軍管区の部隊に納入されたという。
一方で同じ記事では、南部軍管区管内の基地でSu-57を使用したミサイルの発射試験が行われている。とも報じられていたので、このための機体だった可能性もある。
ウクライナ侵攻でも使用されたのではないかとしている。
同年5月のタス通信によれば「関係者の話」として、ロシア領空内のウクライナ軍の防空識別圏外からの攻撃に使用されたという。
一方でウクライナ側のメディアも、防空識別圏外から長射程の空対地ミサイル Kh-59の発射に使われた。と報じているが、どちらも裏付けとなる情報がなく、検証が必要である。
これ以前に地上から撮影された動画が出回ったが、ロシア国内でのデモ飛行か合成ではないかと考えられる。
2024年になってロシアも実戦投入していることを認め、2月に2機のSu-35を護衛につけてウクライナ領空に侵入、ミサイル攻撃を行ったとされる情報が公開された。ステルス戦闘機に非ステルス戦闘機の護衛をつけるという端から見れば首を傾げる状況だが、これは「Su-57の損失を避けるための囮」だと考えられている。
輸出
高度な機密を有する最新鋭機ながらメーカーとロシア政府の双方は輸出も視野に入れており、開発試験中には本機をベースにインドと同国向けの機体『FGFA』の共同開発を行っていたが、頓挫してしまった模様である。
代わって、2019年夏の時点ではトルコに向けた売り込みが活発となった。これは、同国がロシア製地対空ミサイル『S-400』を導入したため対米関係が悪化し、当初予定していたF-35の獲得が不可能になったためで、2019年のモスクワ航空サロン(MASK-2019)では、プーチン大統領自ら案内する形でエルドアン大統領にコックピットなどを見学させる様子が報じられている。
とはいえ、昨今の状況を考えるとトルコも厳しい…かもしれない。
先述の通り前線に護衛を伴って出撃しているあたり、ウクライナ侵攻で多くが破壊されたロシア兵器の二の舞は避けたいという事情も垣間見える。
- ACE COMBATシリーズ:PAK-FAの名称で『アサルトホライゾン』と『3D』に、T-50の名称で『インフィニティ』に、Su-57の名称で『7』に登場。
- バトルフィールド4:『Su-50』という名称で登場。
- バトルフィールド2042:『Su-57 フェロン』という名称で登場。
- トップガン マーヴェリック:『第5世代戦闘機』という名称で登場。主人公たちの乗るF/A-18E/Fでは太刀打ちできないほど強いと紹介されている。