J-20は中国人民解放軍空軍の第5世代型双発ステルス機の型番で、開発・生産は中国航空工業集団公司が行う。2024年現在では300機以上が既に生産されたと思われている。
中国語では殲-20(歼-20、Jiān-20)または殲撃20型と呼び、欧米メディアではChengdu J-20とも表記される。Chengdu(成都)はテスト飛行場を所有する成都飛機工業公司または所在地の四川省成都が由来。J-20という名称はメディア報道によるもので正式名称は不明とされてたが
2016年10月28日、中国人民解放軍空軍の公式メディア「空軍発布(空军发布)」が中国の新浪微博で初めて「殱-20飛行機」(歼-20飞机)という名称を遣い、「殱-20(J-20)」という表記は正式名称として定着した。
正式な愛称ではないが、J-20を含むJ-XXとして開発された機体のいくつかは、中国の軍事マニアからは「丝带(リボン)」と呼ばれている。これは第5世代機の中国での呼び方である四代机の「四代」と「丝带」の発音が同じことと、これらの機体の胴体が薄く平らな印象を与えることに由来している。また、欧米ではブラック・イーグル(Black Eagle)という非公式な愛称も使用されている。
ちなみに中国の萌えオタによる愛称は、なぜか秋山澪(けいおん!)である。
J-20とは
1990年代にコードネームJ-XXとして開発されたステルス機の1つで、第5世代ジェット戦闘機とされる。
2010年末までに「2001号」「2002号」の2機が製作され、成都飛機工業公司のテスト飛行場内で地上走行テストが行われた。この頃、軍事関連webサイト(非公式)にJ-20のものと思われる画像が掲載され、世界中から注目を集めることになった。
2009年、中国空軍首脳は『中国初のステルス戦闘機がまもなくテスト飛行の段階に入る』、『配備は今から8~10年後から始まる』との予測を発表。
2016年11月1日、広東省珠海で開催された中国国際航空宇宙博覧会で初公開。2機によるデモンストレーション飛行も公開された。中国国営中央テレビは2017年3月9日、空軍に実戦配備(おそらく訓練部隊への配備)されたと伝えた。2018年9月には『今年末から生産開始』との観測が報道された。
設計
公開されたJ-20試作機はPAK-FA(当時。現在はSu-57)やF-22「ラプター」と同程度の大きさで、欧米メディアはエンジンにロシア製サトゥールン117Sを2基搭載している可能性を伝えている。2019年からは再びWS-10エンジン導入が始まり、2024年には本命たるWS-15エンジンを搭載して更なる発展を遂げたJ-20が確認された。
機首の断面はF-22に似た、菱形に近い形状で、エアインテイク位置および形状もF-22に似ているが、翼はカナードとクリップドデルタを組み合わせたものとなっている。これはミコヤンの試作したMiG-1.44の配置に近い。
このような配置は『クロースカップルドデルタ(Close Coupled Delta:近づけて組にしたデルタ翼の意)』と呼ばれており、MiG-1.44に限らずタイフーンやラファールなどにも採用される。この翼形はデルタ翼の特性を生かし、空力でエンジン出力を補う事に重点を置いた方式で、エンジン技術で後れを取る欧州機にはよく見られる。中国機としては(単発機であるが)J-10もこのスタイルを採用している。
カナード
機首に設置する小型の水平翼(タイフーン等、必ずしも「水平」とは限らないが)で、前翼、先尾翼とも。運動性が増す反面、ステルス性能を下げると言われることもある。
しかし最近の研究では「カナードのRCS(レーダー反射断面積)全体における寄与は小さい」とするものもあり、一概にRCS増大の要因になるとは限らないだろう。
(もちろん無いほうが良い)
J-20は(カナードも含めて)Xバンド・レーダーに対するステルス性を特に重視して設計されているという。高速巡航時はカナードを固定してステルス性を重視した状態となり、探知された場合にはカナードを開放して機動性を重視する事で、それぞれ能力を発揮するものとされる。カナード固定状態でのステルス性(RCS値の小ささ)については『F-35やSu-57以上』ともいわれる。
空母航空隊にも採用?
香港の報道機関によると、2019年現在、軍部では空母艦載機としてJ-20の派生型が支持されている他、コクピットを並列複座としたAEW型が計画されているという情報がある。
しかし、艦上AEWとしてKJ-600が初飛行したため、並列複座型の必要性にも変化が起きる可能性がある。
pixivでは
pixivでは、このタグを付けているイラストにJ-20を航空機擬人化したものが多い。
ステルス機という特質からか、黒い髪のメカ娘として描かれる場合が多い。
派生型
2022年の段階で既に200機程が生産されたといわれ、現在もその数は続々と増えているようだ。
J-20A
2011年に初飛行し、2017年から本格的な生産を開始。
同年に訓練飛行隊も編制され、以来中国空軍の一角にはステルス戦闘機隊が加わるようになった。
J-20B
2022年12月に初めて目撃された新型で、コクピット後部やエアインテイクなどの機体各所の外形が変更されていて、識別は簡単な部類である。
とくに目立つのは機体後部のベントラルフィン(空力安定板)が無くなっている事で、これによりステルス性が一層向上するものと思われる。これを可能にしたのが新型のWS-15エンジンとTVC(推力偏向ノズル)で、これは最大推力160KN級という大出力を発揮するもの。エンジン本体の出力対重量比は9を超えており、世界最先端に比肩する高性能エンジンだといえる。
2023年現在では、小規模生産・飛行試験の段階にあると思われる。
J-20S
2021年10月に目撃された。
第5世代ジェット戦闘機として初の「複座ステルス戦闘機」であり、これは単なる練習機ではなく、後席員がレーダー手や爆撃手、または戦闘情報分析や無人機オペレータを務めるのではないかと推測されている。試作段階だと思われるが、詳細は不明。
表記揺れ
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