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空母いぶき

くうぼいぶき

空母いぶきとは、かわぐちかいじ作、恵谷治監修・原案協力によるミリタリー漫画。もしくは作中に登場する艦艇のこと。
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概要編集

小学館の青年漫画雑誌『ビッグコミック』にて、2014年24号から2019年24号まで連載されたミリタリー漫画であり、漫画『沈黙の艦隊』、『ジパング』などで有名なかわぐちかいじ氏が原作を、ジャーナリスト恵谷治氏が監修を担当していたが、氏が2018年に亡くなった後は「原案協力」とクレジットされている。


尖閣諸島を巡る日本海上自衛隊中国人民解放軍海軍との衝突を発端に、日本の危機を察した日本政府の要請により、最新鋭戦闘機を搭載した事実上の航空母艦である艦艇『いぶき』を就役させ、新たに編成された新艦隊が、中国軍から尖閣諸島と日本を守る戦いに挑んでいく様子が描かれている。

中国海軍の人民解放軍内での複雑な位置づけや主人公秋津のライバル・劉の過去など必ずしも中国を悪として描いているわけでもない。


2020年1号からは続編『空母いぶき GREAT GAME』が連載されている。


あらすじ編集

20XX年、嵐の中で遭難者に擬装した工作員が、尖閣諸島南小島に上陸。「この島は中国保有の領土であり中国本土の船舶を待つ」と主張する尖閣諸島中国人上陸事件が発生。日本の領海に侵入する中国海警局の船舶と海上保安庁の巡視船の衝突、調査目的で尖閣諸島に向かった海上自衛隊の護衛艦への中国軍攻撃機のミサイル攻撃など事態はどんどんエスカレートしていった。

日本政府は半ば中国の要求に屈するような形で事態を収拾したが、この状況に危機感を覚えた垂水慶一郎首相は新型護衛艦を旗艦とした新設護衛隊群による「ペガソス計画」の前倒しを決断した。

事件の翌年、事実上海上自衛隊初の航空母艦「いぶき」が竣工。艦長には元航空自衛隊のエースパイロット秋津竜太、副長には新波歳也が任命される。

さらに翌20XY年4月、「いぶき」が南鳥島沖で演習航海をしている最中、中国軍が「曙光工程」を発動、先島諸島と尖閣諸島を武力により制圧する。

一連の行動に一切の声明を出さない中国。垂水は史上初の防衛出動を発令し、「いぶき」以下第5護衛隊群を現場に急行させる。

それに対抗し中国軍も最新鋭空母「広東」を有する艦隊を先島諸島に派遣。とうとう日本政府は尖閣諸島・先島諸島を武力により奪還する「隼」作戦を発動する。


登場人物編集

海上自衛隊第5護衛隊群編集

秋津竜太編集

航空機搭載護衛艦「いぶき」初代艦長。二等空佐→一等海佐。

初登場時点では航空自衛隊の戦闘機パイロットで、「空自始まって以来のエース」と称されていた。

自らの立場を"軍人"と称し、「アジアを守らなければ日本も守れない」、「力には力を」と公言し抑止力による戦争回避を信念とする。

ベルリンの壁崩壊に居合わせた過去がある。

新波歳也編集

航空機搭載護衛艦「いぶき」初代副長兼航海長。二等海佐。

秋津とは「いぶき」艦長の座を争った関係でもある。

自衛隊が発足以来60年間任務で一人も殺傷してこなかったことを誇りとし、尖閣諸島中国人上陸事件における垂水首相の決断を「勝ち戦」と評する。

「自衛官に必要なのは何があっても戦争を阻止する覚悟」を信念とし、秋津の信念を危険視している一方、艦長としての技量は評価している。

涌井継治編集

ミサイル護衛艦「あたご」艦長→第5護衛隊群司令。一等海佐→海将補。

尖閣諸島中国人上陸事件当時最前線に居合わせていた。

中国軍に待ち伏せされた際に先制攻撃を行うべきか苦悩した末、飛来した敵機の撃墜を決断する。

浦田鉄人編集

涌井の後任のミサイル護衛艦「あたご」艦長。一等海佐。

専守防衛を信念とし、「いぶき」竣工にはしゃぐ隊の空気を諫めている。

秋津の思想を危険視している点は新波と共通する。

浮船武彦編集

ミサイル護衛艦「ちょうかい」艦長。一等海佐。

関西弁が特徴のイケイケな人物。「いてまえー!」

瀬戸斉明編集

汎用護衛艦「ゆうぎり」艦長。二等海佐。

第5護衛隊群の先頭を担う。

清家博史編集

汎用護衛艦「せとぎり」艦長。二等海佐。

尖閣諸島攻略戦で「あたご」を援護する。

海老名洋子編集

汎用護衛艦「あまぎり」艦長。一等海佐。

被弾して戦線離脱した「せとぎり」に代わって第4護衛隊群から参戦した女傑。

滝隆信編集

AIP通常動力型潜水艦「けんりゅう」艦長。一等海佐。

中国軍潜水艦の性能向上とその物量、日本の領海の広さから自衛隊の潜水艦では手が回らないことを危惧している。

戦闘を躊躇する政府には「いつまで現場に政治を負わせるつもりだ」と苦言を呈する。

一方で「あたご」への攻撃を優先した敵の潜水艦に対して「戦闘下のサブマリナーとして命取り」と断じ撃沈している。

淵上晋編集

第92航空団司令兼飛行隊長。一等空佐。

滝と同じく物量差を問題視しているが、「無い物ねだりをしても無駄。技量を上げるしかない」と割り切っている様子。

迫水洋平編集

アルバトロス隊隊長。三等空佐。

F-35JBで構成された同小隊を率い、初交戦で敵機4機を撃墜した。

柿沼編集

アルバトロス隊隊員。一等空尉。

殲20からのミサイル攻撃を受け、レッドアウト目前まで追い込まれる。高価な機体を守るために回避を優先するか、自らの命を優先して脱出するか躊躇するが、迫水に叱咤され脱出する。

映画では「柿沼正人」というフルネームが設定された。

池谷編集

スパロウ隊隊長。三等空佐。

中国軍早期警戒機の撃墜任務を託される。

日本政府編集

垂水慶一郎編集

内閣総理大臣。

内閣官房長官時代に「ペガソス計画」を承認したことから周囲からはタカ派と思われていた。

しかし尖閣諸島中国人上陸事件当時、上陸した中国人を保護して中国に引き渡すという決断をしたことから「中国の圧力に屈服した」と批判された。

アジアでのアメリカの軍事的影響力が低下し、中国の軍事力が台頭してきたことから独自の防衛力を高めるべきという考えは変わっておらず「夢や祈りでは国民の頭上に飛んでくるミサイルを落とせない」と断じる保守的な人物。

沢崎勇作編集

アジア大洋州局参事官。インドネシア・ジャカルタで勤務していたが外務省に呼び戻された。

「ペガソス計画」には一歩引いた立場で慎重派とされているが、一方で垂水の現状認識も尊重している参謀役。

石渡俊道編集

内閣官房長官。垂水が内閣官房長官だったころは防衛大臣を務めており、ともに「ペガソス計画」の絵図を描いた。

尖閣諸島中国人上陸事件当時は政権へのダメージを考えて強硬策に出ることを主張し、「ペガソス計画」の前倒しを狙うなど垂水以上のタカ派の節がある。

民間人編集

一の瀬一編集

東都新聞政治部の記者。沢崎の旧知だが「報道に中立は存在しない。追従か批判か」と断言する政府批判派の急先鋒。

抑止力による戦争回避は現実的ではないと断じ、「ペガソス計画」ならびに「いぶき」建造に反対を表明していた。

しかし下地島に潜入した際にF-35JAを目撃しても、利敵行為に当たらないように直ちに撮影した写真を送ることなく場所が特定できない構図にするなど決してマスゴミという訳ではない。


中華人民共和国・人民解放軍編集

劉長龍編集

海軍北海艦隊・空母「広東」艦長。大校。

「いぶき」を脅威と捉えて全面対決を試みる。

天安門事件の現場に居合わせた過去があり、それを知った秋津は「力を渇望している」と分析している。

馬大奇編集

海軍駐在武官。大校。「釣魚島は中国の領土」と主張する。

沢崎は「今まで人民解放軍内部で軽視されてきた海軍の権勢拡大を狙っている」と分析している。


登場兵器編集

自衛隊編集

第5護衛隊群編集

ペガソス計画によって生み出された、自衛隊初の航空機搭載型護衛艦。新設された第5護衛隊群の旗艦である。分類上は軽空母

艦名は第二次世界大戦中「マル急計画」により重巡洋艦から設計変更されたものの、未完成のまま終戦を迎えた幻の空母「伊吹」にちなむ。建造中はコードネームの「ペガソス」の名で呼ばれていた。

ヘリコプター搭載護衛艦「いずも」を改設計したもので「改いずも型」とも呼称される。

大きな特徴としては、日本初のスキージャンプ式の飛行甲板の採用がある。

艦載機はF-35JBが15機のみ配備されているが、これは専守防衛を鑑みて、航続距離の長い対地攻撃型ではなく、あくまで対潜水艦用であると説明するためである。

ただし野党からは「対潜水艦戦ならばヘリコプターで事足りる。対地攻撃能力を持つ固定翼機の搭載は専守防衛に反する」と批判されている。

対空火器は「いずも」同様他の護衛艦と比較して少なく、SeaRAM2基とファランクス20ミリCIWSだけであり、艦隊の防衛は随伴する護衛艦に任されている。

また自衛隊初となる洋上での協同運用がなされており、航空管制を航空自衛隊、操艦を海上自衛隊が担当する。

続編の「GREAT GAME」では二番艦「ほだか」が就役している。


  • F-35JBステルス垂直離着陸機

「いぶき」に15機配備された新型機で、各5機編成の3小隊から成る。

AIM-120 アムラーム空対空ミサイルを搭載する。機体価格は1機あたり150億円。

短距離空対空ミサイルはAIM-9X サイドワインダーではなく04式空対空誘導弾を搭載する。

空対艦ミサイルは93式空対艦誘導弾を搭載。

前述のとおり表向きは対潜攻撃機として搭載されているが、対潜装備は確認できない。

殲20との性能比較では「ステルス性では当機が上回る」とされている。

映画版では「F-36」という機種名で登場。


  • F-35JAステルス戦闘攻撃機

F-35Aの航空自衛隊仕様で那覇基地に配備されている。

第5護衛隊群を支援するために下地島空港に進出し、与那国・多良間両島の上空警戒に当たったが、下地島空港が殲20に爆撃されて壊滅したため那覇基地に撤退した。


現実世界では2018年1月から三沢基地に配備され、他の基地にも順次配備が進められている。

尖閣諸島中国人上陸事件当時、「てるづき」と共に調査目的で尖閣諸島に派遣され、中国軍空母「遼寧」と対峙する。

第5護衛隊群編成にあたり、対空戦闘指揮艦として同隊に配属された。

尖閣諸島に上陸した中国軍による基地化を防ぐため、LRLAP弾により地上施設を破壊する。

映画版では「DDG-190 あしたか」という名前で登場。

第5護衛隊群所属。南大東島沖で給油中の第5護衛隊群が殲20に攻撃された際、スタンダードミサイルでこれを迎撃、自衛隊で初めて敵機を撃墜した。

多良間島沖では上陸作戦の支援のため駆逐艦「哈爾浜」、「洛陽」を速射砲のピンポイント射撃で無力化、多良間島に上陸した中国軍の飛龍2型地対艦ミサイルを破壊した。

映画版では「DDG-161 いそかぜ」という名前で登場。

第5護衛隊群を強襲してきた殲20のパイロットが海上を漂流しているのを発見し救助・収容する。

「広東」艦隊との決戦で前衛を務めるが、殲20の放った対空ミサイルが艦橋左舷ウィングに直撃、死傷者を出したため後衛に回る。

映画版では「DD-122 はつゆき」という名前で登場。

尖閣諸島に上陸した中国軍を攻撃する「あたご」を援護し「あたご」を狙う中国軍潜水艦「遠征103」の魚雷から「あたご」を守るが、阻止できなかった魚雷から「あたご」を庇って被弾。宮古島に後退する。

映画版では「DD-124 しらゆき」という名前で登場。

第4護衛隊群所属。「せとぎり」の被弾・離脱に伴い代わりに後衛を務める。

「ゆうぎり」の被弾後は前衛に移り、殲20の攻撃から「あたご」を守るべく魚雷を破壊、被害を最小限に抑えた。

映画版では登場せず、2隻の汎用護衛艦はほとんど見せ場のないまま早々と戦線を離脱してしまう。

多良間島沖の戦闘で「遠征103」の放った魚雷を魚雷で迎撃する『沈黙の艦隊』を思わせる荒業を見せる。

尖閣諸島沖の戦闘では「あたご」に集中する「遠征103」の背後から魚雷を放ち撃沈する。

映画版では「SS-515 はやしお」という名前で登場。

  • ましゅう型補給艦 AOE-426「おうみ

第5護衛隊群所属。洋上補給などで艦隊を支援する。

その他編集

尖閣諸島中国人上陸事件当時「あたご」と共に佐世保基地から出航した。

多良間島沖で第5護衛隊群と行動を共にする。

「遠征102」の雷撃から第5護衛隊群を守るために「遠征102」に体当たりを敢行。艦底部に損傷を受けるが「遠征102」を撤退に追い込んだ。

尖閣諸島武力奪還作戦「隼」のために陸上自衛隊の上陸部隊を積載して出航する。

那覇基地から離陸して中国軍に制圧された多良間島を上空から偵察。殲20に捕捉されるが偵察を続行し、敵機のミサイルが直撃、撃墜された。

「いぶき」ほかの艦載機として対潜警戒や漂流するパイロットの救出にあたる。

那覇基地まで水陸機動団を輸送した。

東京上空を飛行する場面がある。

那覇基地上空を飛行する場面がある。

防衛出動の発動後から陸上自衛隊の輸送にあたる。

飛龍2の破壊後、特殊作戦群の空挺降下を敢行した。

水陸機動団所属の車両がLCACにより多良間島に上陸する。


中国編集

  • 中国人民解放軍「広東(カントン)」

中国初の国産正規空母。艦名は広東省にちなむ。同型艦として2番艦「天津(ティエンジン)」も就役していた。

艦の外観は登場当初は旧ソ連が開発していたウリヤノフスク級空母に酷似していたが、第15ソーティ以降は002型空母そのものの外観で描かれている。

発艦は「遼寧」と同様にスキージャンプ方式で発艦し、アレスティング・ワイヤーで着艦させる方法を採っている。

「遼寧」とは段違いの性能と装備を持ち、北海艦隊空母部隊の中核をなす。

映画版では「グルジャ」という名前で登場。


  • 殲20(J-20)艦上戦闘機

中国初のステルス戦闘機。空母「広東」で運用されている艦載型が登場。

現実世界での運用は2017年に開始されたが、空母艦載機は殲31になると目されている。

映画版ではMiG-35が代わりに登場している。


旧ソ連が建造していたクズネツォフ級航空母艦「ヴァリャーグ」を改装した中国初の航空母艦。

尖閣諸島中国人上陸事件に際し「あたご」、「てるづき」と対峙する。

  • 071型揚陸艦「長白山(チャンペイサン)」

海洋監視船「海警3901」と共に尖閣諸島に前進、海兵を上陸させて周囲の島々を占領した。

「あたご」の艦砲射撃で尖閣諸島に設営した施設が被害を受けた際に負傷兵を艦内に移送する姿が確認されている。

「いぶき」の性能を調査するために2隻で追尾していた。

「遠征102」は「いぶき」への雷撃を試みるが、「せとしお」の体当たりにより撤退を余儀なくされる。「遠征103」は「けんりゅう」へ雷撃するが「けんりゅう」は魚雷で迎撃。対潜ヘリの威嚇射撃を受けて撤退した。

その後は後述の「遠征115」、「遠征116」を従え3隻で襲来。尖閣諸島沖で「あたご」の雷撃を試みるが、手柄を焦ったか「けんりゅう」を見失ったまま「あたご」を狙い続けていたため、背後からの「けんりゅう」の雷撃に気付かず撃沈された。

  • 元級潜水艦「遠征115・116」

「遠征102」の撤退後、「遠征103」と共に尖閣諸島沖で第5護衛隊群を攻撃するが、「遠征103」が撃沈されたため撤退する。

その後は明言はされないが「広東」艦隊の攻撃に向かう「けんりゅう」の進路を塞ごうと現れる両艦らしき潜水艦が登場している。

多良間島沖で海上警戒を行っていた駆逐艦(フリゲートの「洛陽」も劇中では駆逐艦と呼称されていた)。「ちょうかい」の精密射撃により兵装を破壊され撤退した。

  • 殲15(J-15)艦上戦闘機

尖閣諸島中国人上陸事件当時、「遼寧」から発艦した機体が「あたご」に警告のためミサイルを発射した。

多良間島上空の戦闘では空警500早期警戒機の護衛として2機が登場。スパロウ隊を一時は圧倒するが撃墜された。

与那国島に03式空挺歩兵戦闘車を空中投下する。

  • 03式空挺歩兵戦闘車

Il-76輸送機から空中投下されていた。

  • 武直10(WZ-10)攻撃ヘリコプター

与那国島に上陸した陸上自衛隊特殊作戦群を襲撃。多数の損害を与えたが「いぶき」から飛び立ったF-35JBに3機が撃墜され、さらに特殊作戦群の携帯SAMによって1機が撃墜される。

  • 红旗7地対空ミサイル自走型

Il-76によって輸送され、分散収容された民間人を「人の盾」としてわざと近隣に配置していた。

  • 飛龍2(フェイロンFL2)地対艦ミサイル牽引型

多良間島と尖閣諸島に配備されていたが共に第5護衛隊群によって撃破された。


映画版編集

まさかの実写映画化編集

若松節朗監督、西島秀俊主演で2019年5月24日公開。

原作の時系列は4月であり、映画もまた5月公開でありながら物語の舞台はクリスマス直前の12月下旬となっており、映画の結末にかこつけた安直な要素として批判の声も少なくない。


物議をかもした発言編集

公開直前のインタビューで垂水総理大臣役の佐藤浩市が「演じるにあたってストレスが溜まると下痢を起こすキャラクター付けをした」と発言。当時の安倍晋三首相を揶揄した発言ではないかと物議をかもした。

実際には原作にあった洗面所で垂水が嘔吐する場面を垂水が胃腸薬の空き瓶を携えて洗面所から出てくる場面に変更したものだが、佐藤が「まだ権力者側を演じるのには抵抗がある」と続けたこともあって炎上してしまった。


自衛隊非協力?編集

近年の自衛隊を題材にした映画・ドラマは防衛省並びに自衛隊の協力を得ている作品が多い。

しかし本作は登場する装備が軒並み架空の名前に差し替えられているなど「自衛隊の協力を得られなかったのでは?」と思われる点が多数見受けられる。事実エンドロールには防衛省も海上自衛隊も航空自衛隊もクレジットが確認できない。


過去にも北朝鮮(映画では架空の「北東人民共和国」という名前に変更された)の武装工作員が原子力発電所への攻撃を企てる『宣戦布告(2002年・石侍露堂監督)』が防衛庁並びに自衛隊の協力を得られず、小道具を自作したり米軍の映像を流用したりしている。

また戦国時代といえども自衛官が民間人に銃を向ける場面がある『戦国自衛隊(1979年・斎藤光正監督)』、権力志向が強く目的の為なら民間人の謀殺も辞さないなど事実上自衛隊が悪役として描かれている『野性の証明(1978年・佐藤純彌監督)』、自衛隊がブルートレインを乗っ取ってクーデターを起こす『皇帝のいない八月(1978年・山本薩夫監督)』など過去にも自衛隊の協力が得られなかった作品は多数存在する。


また『亡国のイージス(2005年・阪本順治監督)』は『宣戦布告』と同時期に映画化が企画されたが防衛庁が難色を示し、その後2004年頃に再度協力要請があった際に読者であった当時の石破茂防衛庁長官が再考を促し、一部登場人物の設定を変更することで協力が実現している。

奇しくも映画版のキャストは佐藤を初め『亡国のイージス』など福井晴敏(本作にも企画として協力している)原作映画に出演経験のある俳優が多い。さらに登場する護衛艦の一隻は「いそかぜ」である。


本作においても敵国が中国(を彷彿とさせる架空の国家共同体)という設定になっていることと、明確に「国家」と交戦状態に陥ることがネックになったのではといわれている。


設定変更編集

前述のように登場する敵国は中国ではなくアジアに成立した架空の国家共同体「東亜連邦」に変更されている。パンフレットには脚本の伊藤和典による「原作にあった中国大使館とのやり取りを2時間に収めるのが難しかった」といった主旨のコメントもある。

また東亜連邦が領土問題で日本と対立する島の名前も波留間群島の架空の島「初島」に変更された。

さらに「いぶき」には若手ネットニュース記者とベテラン新聞記者が便乗しているという設定になり、ふたりが物語の重要人物となっている。逆に原作に登場したジャーナリストの一の瀬一は一切登場しない(同姓の一之瀬隆という記者がワンシーンのみ登場している)。


キャスト編集

海上自衛隊第5護衛隊群編集

秋津竜太:西島秀俊

新波歳也:佐々木蔵之介

涌井継治:藤竜也

浦田鉄人:工藤俊作

中根和久(航空機搭載型護衛艦「いぶき」船務長):村上淳

葛城政直(航空機搭載型護衛艦「いぶき」砲雷長):石田法嗣

淵上晋:戸次重幸

迫水洋平:市原隼人

柿沼正人:平埜生成

井上明則(海幕広報室員):金井勇太

山本修造(護衛艦「あしたか」砲雷長):千葉哲也

浮船武彦:山内圭哉

岡部隼也(護衛艦「いそかぜ」砲雷長):和田正人

瀬戸斉明:玉木宏

清家博史:横田栄司

滝隆信:髙嶋政宏

有澤満彦(潜水艦「はやしお」船務長):堂珍嘉邦

大村正則(RF-4EJ偵察機ナビゲーター):袴田吉彦

備前島健(RF-4EJ偵察機パイロット):渡辺邦斗


日本政府編集

垂水慶一郎:佐藤浩市

沢崎勇作:吉田栄作

石渡俊通:益岡徹

城山宗介(副総理兼外務大臣):中村育二

沖忠順(防衛大臣):佐々木勝彦

赤司徹(外務省アジア大洋州局局員):三浦誠己


民間人編集

本多裕子(ネットニュース P-Panel記者):本田翼

田中俊一(東邦新聞のベテラン記者):小倉久寛

晒谷桂子(本多の上司):斉藤由貴

藤堂一馬(本多の先輩ディレクター):片桐仁

吉岡真奈(藤堂のアシスタント):土村芳

中野啓一(コンビニエンスストア店長):中井貴一

森山しおり(コンビニエンスストアのアルバイト店員):深川麻衣

和田正幸(コンビニエンスストアのアルバイト店員):伊達円祐

一之瀬隆(東邦新聞記者):岩谷健司

今井隆利(現代日報記者):飯野智司


ボイスドラマ『第5護衛隊群かく戦えり-女子部-』編集

映画版の公開にあたって2019年5月12日から配信されたボイスドラマ。

メインキャラクターを女性声優が演じることから「女子部」とされている。


キャスト編集

秋津竜太:上坂すみれ

新波歳也:M・A・O

湧井継治:田村睦心

中根和久:三澤紗千香

葛城政直:小松未可子

近藤隆夫:川上千尋

山本修造:木村珠莉

浦田鉄人:駒形友梨

畑中淳:西薗雪乃



関連タグ編集

軍事 ミリタリー

海軍 海上自衛隊

尖閣諸島 国防

東亜連邦


カエルの楽園百田尚樹氏の萬話小説であり、本作で起こっている出来事を風刺している面がある。

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