概要
原作は社会派推理小説の一種であり、鉄道ミステリーの変形種でもある小説。
憲法改正と自衛隊の国防軍化を目的に、右翼の大物政治家と組んでクーデターを起こして政権を掌握することを狙う自衛隊不穏分子と、それを秘密裏に鎮圧しようとする日本政府の攻防を描く。
原作ではタイトルの意味が明確にされることはなかったが、映画版では「劇中に登場する架空の交響曲」「クーデター作戦の名称」を意味している。
また映画版の主人公である藤崎は原作ではむしろ脇役だった。
『新幹線大爆破』と同様内容が内容なだけに国鉄の撮影協力が得られず、自衛隊側も「自衛隊員がクーデターを起こす映画の撮影に協力はできない」というスタンスだったので(似たような理由で協力を得られなかった)『戦国自衛隊』の撮影で使われた物を使用している。
作者の小林久三は、「自衛隊のクーデター計画」の噂を聞いたことから発想を得て、欧米5ヶ国共同制作の鉄道パニック映画「カサンドラ・クロス(1976年)」を参考にこの物語を作ったという。
主な出演者
藤崎顕正:渡瀬恒彦
藤崎杏子:吉永小百合
石森宏明:山本圭
利倉保久:高橋悦史
東上正:山崎努
大畑剛造:佐分利信
三神陸将:丹波哲郎
小山内建設大臣:小沢栄太郎
江見為一郎:三國連太郎
スタッフ
監督:山本薩夫
脚本:山田信夫、渋谷正行、山本薩夫
音楽:佐藤勝
余談
- 前述通り国鉄の協力を受けられなかったため、寝台特急「さくら」の外観セットには三菱大夕張鉄道(1987年廃止)の古い客車にハリボテをつけて14系客車に仕立て上げたものが使用された。よく見ると台車が当時「さくら」に使われていた14系客車の空気バネ台車ではなく、3軸イコライザー式台車を装備している(外部リンク)。
- 「さくら」の外観シーンはさすがに張りぼてを被せただけの客車を本線走行させるわけにはいかず、南大夕張駅の構内で撮影している。
- その「さくら」の乗客の一人・久保は渥美清が演じており、劇中で未婚であると語っていることから「男はつらいよ」の寅さんを意識しているのではとも言われている。
- 映画のクライマックスシーンにて「さくら」を爆破してしまったことに対し、国鉄の怒りも大爆発。松竹ばかりか他の映画会社にまで「以後国鉄は映画の撮影には一切協力いたしません!」という通達を出してしまった。奇しくも「カサンドラ・クロス」もスイス国鉄をヒールまがいの描写をしてしまったためにスイス国鉄がブチ切れ、結果その後一切映画の協力を行わなくなっている。
- 閣議シーンのセットは本来の閣議室ではなく閣僚応接室をモデルに制作している。
- 監督の山本薩夫は撮影に入ってから軍事専門家より「自衛隊員が一般人と一緒の列車で移動するのは行動の迅速性という問題からあり得ないことだ」と指摘されたが、物語の中心である寝台特急の乗っ取りを変えることが出来ないために非常に悩んだとか。
- 本作にて狂信的な軍国主義者のキャラを演じきった渡瀬恒彦の演技は非常に高く評価され、役者として一皮むけることに成功した。今では想像し辛いが、渡瀬はそれまでヤクザやチンピラといった役ばかりであった。
- その藤崎役は当初渡瀬の兄である渡哲也のキャスティングが想定されていた。しかし石原プロが自社ドラマ出演を優先したためスケジュールを確保できず、渡瀬の起用に至った。
関連タグ
機動警察パトレイバー2theMovie - 同様のモチーフを扱ったポリティカル・フィクション作品。本作の映画版のオマージュが存在する。
日本のいちばん長い日 - 2015年版は松竹が製作・配給し「THE EMPEROR IN AUGUST」という副題があるが、この副題を和訳すると「皇帝のいる八月」になる。