概要
1945年(昭和20年)8月14日正午に下された終戦のご聖断から、終戦に反対する一部陸軍将校によって14日深夜から翌8月15日にかけて発生したクーデター未遂事件「宮城事件」、そして15日正午の玉音放送までの24時間の群像劇を描いている。しかし、発表当時は大宅壮一氏の名前で発表された。
1995年に改訂版が『日本のいちばん長い日 運命の八月十五日 完全版』として半藤一利名義で出版された。2015年版の映画は改訂版を基に作られているので、シナリオや作風が異なる。
題名は映画『史上最大の作戦』の原題「The Longst Day(最も長い一日)」から採っている。
物語・あらすじ
1945年(昭和20年)。太平洋戦争で米英と戦う日本は存亡の危機にあった。4月に鈴木貫太郎が首相に就任し、終戦を模索していたが、ポツダム宣言が出され、判断に苦しむ間に原爆を二発落とされ、ソ連も参戦し、追い詰められていた。徹底抗戦を主張する陸軍を代表する陸相・阿南惟幾と詰めの協議を進め、ついに8月14日正午に御前会議で昭和天皇は終戦のご聖断を下した。終戦の決定を翌日正午にラジオから国民に発表する「玉音放送」が決まるが、降伏に納得しない畑中健二少佐はある思惑をめぐらせていた。
大望を果たした鈴木総理、録音に臨む天皇、計画を実行しようとする畑中少佐、そして覚悟を胸に秘めた阿南陸相。様々な人々の思いが交錯する24時間の間に、クーデター事件「宮城事件」が発生する。
映画化
1967年
1967年に東宝創立35周年記念作品の一つとして、岡本喜八監督の下で映画化された。
出演
鈴木貫太郎:笠智衆
阿南惟幾:三船敏郎
米内光政:山村聰
迫水久常:加藤武
畑中健二:黒沢年男
椎崎二郎:中丸忠雄
佐々木武雄:天本英世
昭和天皇:松本幸四郎(八代目)
ナレーター:仲代達矢
1967年版の見所や余談
- 二本柳寛演じる大西瀧治郎軍令部次長
- 天本英世(後の死神博士)演じる横浜警備隊隊長
- 黒沢年雄演じる畑中健二少佐と、ときおり見せるアニメの萌えキャラのようなクリっとした目の演技。
- 妙にリアリティがある出演者たち… それもその筈東宝の当時のベテラン俳優は従軍経験がある方が多かった。
- 当初は監督に小林正樹が内定していたが、藤本真澄プロデューサーと対立したため降板、『殺人狂時代』の公開が中止されてくすぶっていた岡本喜八にお鉢が回ってきた。
- 皇居を畑中たちが馬とバイクで走るシーンは無許可でゲリラ撮影を強行した。
- 中谷一郎が演じた「黒田大尉」は、航空士官学校の上原重太郎大尉と通信学校の窪田兼三少佐を組み合わせた架空の人物。当時存命だった窪田少佐に配慮して役柄が統合された。
- 2014年に公表された『昭和天皇実録』で天皇がご家族とともに鑑賞されていたことが判明した。
などがある。
2015年
戦後70周年となる節目に原田眞人監督の下で2度目の映画化がされた。
前作とかわって、製作および配給は松竹。
「THE EMPEROR IN AUGUST」という副題がつけられた。
出演
阿南惟幾:役所広司
昭和天皇:本木雅弘
鈴木貫太郎:山崎努
迫水久常:堤真一
畑中健二:松坂桃李
米内光政:中村育二
椎崎二郎:田島俊弥
佐々木武雄:松山ケンイチ
東條英機:中嶋しゅう
安井藤治:山路和弘
藤井政美:戸塚祥太
上原重太郎:松浦海之介
窪田兼三:青山草太
保科武子:宮本裕子
阿南綾子:神野三鈴
阿南喜美子:蓮佛美沙子
阿南惟晟:三船力也
保木玲子:戸田恵梨香
2015年版の見所や余談
- 前作と比べて鈴木家や阿南家、皇后、女官、放送員など女性の登場が多い。前作の女性の登場者は鈴木邸の女中(演:新珠三千代)だけであった。
- 昭和天皇の登場や台詞が前作に比べて多い。
- 前作ではタイトルコール前のプロローグで纏められていた部分や、登場者の前日譚も詳しく描かれている。
- 原作でも名前しか出なかった東條英機が多く登場し、青年将校たちに徹底抗戦を煽る。
- 同時期に公開されたアニメ映画『バケモノの子』で役所と共演した山路和弘が再び役所と共演。
- わずかな登場だが松山ケンイチや戸田恵梨香、旧作に出演した三船敏郎の孫・力也や笠智衆の孫・兼三、岡本監督の娘・真実なども出演。
- 作中で撮影に使われた学校の木造校舎は某中二病アニメのモデルにもなっており、聖地でもある。
関連タグ
皇帝のいない八月:2015年版の副題は直訳すると「皇帝のいる八月」になる。