概要
UH-60JAとは、陸上自衛隊が運用する、人員輸送・物資輸送などを目的とした汎用ヘリコプターである。
自衛隊では汎用ヘリコプターを「多用途ヘリコプター」と呼称しており、呼び方が違うだけで両者は同一の存在である。
航空自衛隊や海上自衛隊向けの救難機であるUH-60Jを原型とし、人員・物資輸送に用いられることから赤外線前方監視装置(FLIR)、航法用気象レーダー、自動操縦装置(GPS/INS式)、と言った航法装置に加え、進路を遮るワイヤーなどを切断する為のワイヤーカッター、敵の対空ミサイル攻撃を妨害する為、エンジン排気からの赤外線を低減させる装置(IRサプレッサー。エンジン排気に外気を混合して排気ガスの温度を下げる装置。)やIRジャマー(赤外線誘導ミサイルの探知部自体に妨害を仕掛ける装置)、チャフ(アクティブレーダー誘導ミサイルの誘導電波を乱反射させる金属箔)・フレア(赤外線誘導ミサイルを幻惑する囮熱源)発射装置を備えている。
また航続距離を伸ばす為燃料タンクを大型化しているが全備重量はJ型に比べ1トン程減っている。
元々はUH-1Jを完全置換する予定だったが、元が救難機故にいろいろと装備を盛りすぎて機体単価が3倍と高額になったこともあり、UH-1Jとのハイロー・ミックス運用に変更された。
UH-1Jの正式な後継機としては、SUBARUがベル モデル412EPI(乱暴に言うとエンジンを2発にしてメインローターを4枚に増やしたUH-1)を基に開発したモデル412EPXを「UH-2」として採用した。因みに調達価格はUH-1Jの5割増し程度。
汎用ヘリである為固定武装は設けられていないが、操縦席のすぐ後ろ、キャビン前方に設けられたガナーズドアに5.56mm機関銃MINIMIを設置してドアガンとして運用する。またそれに加えて必要ならば乗降用ドアに12.7mm重機関銃M2を搭載し、運用することも可能。
実際に、木更津駐屯地に所在する第1ヘリコプター団第102飛行隊のUH-60JAが左右両舷にMINIMI軽機関銃とM2重機関銃を固定化した「ドアガン飛龍」を配備していることが確認されている。(「飛龍」とはUH-60JAのコールサイン)。
原型機であるUH-60J(救難ヘリ)ではこのガナーズドアの位置にはドアではなく「バブルウィンドウ」を備えた窓が設置されている。
※バブルウィンドウ:哨戒機や救難機などに設置されている、文字通り泡のように膨らんだ形状の窓で、要救助者などの捜索時、この膨らみの中にクルーが頭を突っ込んで目視捜索する際に使われる。
計画ではアメリカのMH-60L DAP同様ガンポッド、ロケット弾ポッド、対戦車ミサイルランチャーで武装し、強襲ヘリとして運用する計画も存在したが、予算の関係でお流れとなった模様。
尚原型機UH-60Jや更にその原型機であるアメリカのUH-60全てに共通することだが、キャビンの天井はかなり低く、キャビン内での移動には腰を屈めた中腰態勢で移動する必要がある。UH-1Jと比較すると10センチ近く低い。(UH-1のキャビンの高さが1.47mであるのに対し、UH-60のキャビンの高さは1.36m)
何故ここまでキャビン高さが低いのかと言うと、原型機UH-60Aの開発時の要求性能に「C-130で空輸できること」と言う条件があった為、機体の全高がC-130のキャビンサイズ以下となる様にサイズを抑えなければならなかったから。
因みに艦載機であり空輸の必要が無いことも手伝ってその制限なく弄り倒せた半国産のSH-60Kではキャビンを上方に15cm拡大。たかが15cmではあるが、元が140cm無い窮屈なキャビンと比べるとやはりその効果は大きい様で、SH-60Jから乗り換えた乗員達からは好評であるらしい。
主要諸元
「三菱重工HP」等より
全長 | 19.8m(ローター回転時) |
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同体長 | 15.64m |
全幅 | 16.4m(ローター回転時) |
胴体幅 | 4.30m |
(増槽装備時) | 5.49m |
全高 | 5.13m |
搭載機関 | GE/IHI T700-IHI-401Cターボシャフトエンジン×2 |
エンジン出力 | 1,662軸馬力×2 |
最高速度 | 295km/h |
巡航速度 | 245km/h |
航続距離 | 約470㎞ |
(増槽使用時) | 約1,000km |
実用上昇限度 | 約4,000m |
全備重量 | 約9,000kg |
乗員 | 操縦士2名+キャビン12名 |