概要
アメリカ合衆国ゼネラル・エレクトリック社製の口径7.62mmのガトリングガン。同社が先に開発した、F-15などの戦闘機に搭載される20mm航空機関砲M61A1バルカンを小型軽量化、使用弾を7.62mmNATO弾に変更したもの。口径が原型より小さくなった事からミニガン(Minigun)の通称を与えらていれる。
6本の銃身を持つ電動式ガトリングガンであり、毎分2,000〜4,000発という驚異的な発射速度を誇る。雑に言えば1秒間で30~60発以上の銃弾を発射すると言えばその凄さが伝わるだろうか。その発射速度ゆえに発砲音と発砲音の間にほとんど間がなく、射撃中は機関銃のような「ダダダダダッ」という連打音ではなく「ヴーッ」という唸り声のような音が上がる。
ただし稼働するには専用のバッテリーが必要になるなど設備が大掛かりになるため、通常は航空機や銃座に搭載されて用いられる。創作での登場機会はかなり多いが、それらでは個人が携行して運用する形で登場するケースが多い。
「M134」は製品名及びアメリカ陸軍での型番で、アメリカ空軍ではGAU-2B/A、GAU-17/A、アメリカ海軍ではMk.25 Mod 0と呼ばれる。他国の軍も同様にそれぞれ個別の名称をつけており、例えばイギリス海軍ではMk44と呼ばれている。
「バルカン砲」とも呼ばれるが厳密には正しくない。「バルカン」は原型となったM61バルカン機関砲の固有名詞(商標)で、それがいつの間にかバルカン=ガトリングガンと一般で認識されるようになったものである(いわゆる商標の普通名称化)。バルカン砲でも伝わるがその手のオタクは良い顔をしないだろう。
仕様
上述の通り発射速度は毎分2,000〜4,000発だが、トリガーユニット次第では発射速度の変更もできるため、毎分100発程度など極端に下げることも可能。GE社が製造した初期のものは毎分6,000発だったが、速すぎて弾薬の消費が激しい上に作動不良が多発するため、後に発射速度を上のものへと変更した。
それでも高すぎる発射速度から「無痛ガン」ともあだ名され、これは撃たれた相手は痛みを感じる間も無く死ぬ(当たれば一瞬にしてミンチになる)ことに由来する。
発砲せずに銃身だけを回転させることも出来るが、トリガー連動のデリンカーでない場合は弾薬が装填・排出され続けるため、撃たずに弾切れになってしまうこともある。そのためスピンアップ(銃身の回転速度を必要回転数まで上げる事)時には注意が必要である。
派生型
M134D
開発元であるGE社製M134は弾薬のリンク切れや動作不良を防ぐために2秒以内の短時間の射撃が禁じられている等、少々扱いが面倒なものとなっていた。そこで、後にディロン・エアロ社が改良型として製造したのがM134Dである。ディロン社のM134DではGE社製に比べて扱いやすいよう以下の改良がされている。
- 発射速度を下げて動作不良の発生率を減少(GE社による発射速度変更より以前に実施)。
- 機関部外装を一部変更してハッチを追加してリカバリーの為の内部へのアクセス性向上。
- 短いバーストを繰り返してもリンク切れやジャミング(弾詰まり)を起こしにくくなるよう給弾部周辺の構造を変更。
- スピンアップ時や射撃終了時に未使用弾薬を捨て続ける事がないようにデリンカー(メタルリンクで繋がった弾薬から弾薬のみ取り出す機構)をトリガーに連動して止める。
- アモボックスにトリガー連動のベルトリンク送り用のモーターをオプションで備える。
ディロン社からはアップグレードキットが販売されており、GE社製造の旧仕様M134をM134Dと同仕様にすることも出来る。ちなみに海軍向けであるGAU-17/Aのみリンクレスとなっており、リンクがらみのジャムの心配はない。
ディロン社が製造する搭載用マウントは90度横に倒してM134を設置するため、発砲位置は正面から見て9時から10時位の位置となる。
XM214マイクロガン
過去に試作された、より小口径の5.56mmNATO弾を使用するモデルXM214、通称マイクロガンが存在した。これは小口径化による軽量化を図ったものだったが、大して重量が変わらなかった上に7.62mm弾に比べて威力が低く、量産や配備はされなかった。
GAU-19
逆に大口径化したモデル。ブローニングM2重機関銃やM82対物狙撃銃で使用されているものと同じ12.7x99mm弾を使用しており、こちらは採用された。銃身の本数は6本から3本に減らされている。
主な軍用用途
ヘリコプター編
主に地上目標に対する制圧射撃用であり、側面ドアの銃架に装着されてドアガンナーが射撃する際に使うドアガンとして運用される。OH-6などの多用途ヘリでは機体側面のラックに搭載、強襲ヘリとして運用する場合もある。世界初の攻撃ヘリであるAH-1Gにも機首タレットに搭載されたが、現代の攻撃ヘリでは20mm以上の大口径機関砲が主流となり、M134が搭載されるケースは少なくなっている。
V-22オスプレイ等では機体下面に遠隔銃座として搭載されることもある。
空軍編
ベトナム戦争では輸送機の側面にこれを複数搭載、弾丸の豪雨を降らせるガンシップとして活躍したAC-47やAC-119の武装となった。曳光弾を多分に配合した機銃掃射は、夜に見るとまるで炎を吐いているように見える事から、ガンシップはパフ・ザ・マジックドラゴンなどとも呼ばれている。
ただし、肝心の威力や射程で20mm以上の大口径機関砲の方が都合がいいため、現在は積まない事がほとんどである。ついでに言うと20mmでも不足であり、より大口径の機関砲や、さらにそれより長射程の榴弾砲や対戦車ミサイルなどが搭載されるケースも近年増えている。
南米などの小国では、COIN機のような固定翼機に機銃として搭載することもあり、主翼に吊るすガンポッドも作られている。
陸軍編
地上で使用できるように三脚なども用意されており、一般的な重機関銃のように運用されたり、RWS(遠隔銃座)に搭載されることもある。ブローニングM2重機関銃やMINIMI等、他の固定化可能な機関銃と違って発射時の反動が一定で狙いやすく、複数の目標を短時間で制圧するのに向いている。
特殊部隊ではハンヴィー等の車両に搭載し、比較的遠距離の敵を早急に無効化する『射程の長いショットガン』としても使用される。しかし交戦距離が長くなりがちなアフガニスタン等では射程に不安があり、12.7mm口径のGAU-19/B等も使用されている。
海軍編
運用方法としては陸軍の使い方に近く、銃架に固定されて艦船の自衛用の近接防衛火器として使用される。全自動化されたCIWSなどと異なり水兵が手動で操作し、敵船舶に対する一番近接的な防衛火器の一つとなる。
海兵隊の場合は更に上述したようにヘリコプターのドアガン、車両やガンボート等の搭載火器としても使用される。
警備編
軍以外での警備用途でも運用される。その高い火力で敵対車両等を瞬時に沈黙させる火器としても使用され、監視塔やシークレットサービス等が使用する護衛車両、ATV(全地形対応車)等の屋根にターレットが設置される。
ディロン社では、普段はSUV等の車内に隠しておき、必要とあらば短時間で屋根から展開できるM134用ターレットも開発・販売している。
創作での活躍
映画編
映画などのフィクションでも人気がある存在だが、しばしば現実とは異なる描写がなされ、誤解を招くことも多い。
映画『プレデター』には携行型のM134が登場して「ガトリングガン抱えてウオオオオ(意訳)」する描写が見られたが、この携行型は実銃を改造した撮影用プロップであり、本体重量だけで18kgもある。現実で同じことをすれば、これに加えて多数の弾薬と、電動式なので作動に必要な大容量のバッテリーも携行しなければならず、少なくとも人間が運べる重量ではなくなる。
さらにその連射速度から撃ちっ放しにすると数秒で撃ち切ってしまい、また実弾発射時の反動も射手の体力程度では到底制御できるものではなく、現実に使える物ではない。銃弾を撃ち出さなければ多少は反動が減るので、よほどのことがない限りは空砲が使用される。『プレデター』に出演していたジェシー・ベンチュラ氏の談によれば「どんなに踏ん張っても反動で吹き飛ばされてしまいますね」とのこと。
また撮影自体にも苦労があったらしく、発射速度が速すぎるせいでフィルム上では銃身から炎を吹いているだけにしか見えなかったという。そのため発射速度を下げて撮影されることが多いが、そういった工夫を重ねても射手への負担は大きく、『プレデター』での射撃シーンの撮影後にはしばらく演者の手が震えていたとの事。
一応再現するための個人携行用のキットを含むミニガンが各社から販売されているが、反動や重量の問題から空砲で雰囲気を楽しむ程度の銃となっている。
『ターミネーター2』『ターミネーター4』ではT-800やT-600などのターミネーターが携行型を使用するが、射手が人間ではなく機械であり、その点からは設定上の違和感は少ない(それはそれとして上記のように撮影は大変そうである)。
ゲーム編
- ブルーアーカイブ
- Call of Dutyシリーズ
- ドアガンや軍用車両等に搭載された機銃として主に登場、『CoD:G』などのマルチプレイではプレデターに登場したものをモチーフとした携行型が登場している。
他作品では『バイオハザード』シリーズや『メタルギアソリッド ピースウォーカー』などでも登場する。
エアソフトガン
アサヒファイアアームズとトイテックから発売。
トイテックは実銃と同じ電動モーターを用いたコッキング式。アサヒ製は銃身の回転は電動、発射は150気圧のスーパータンクを用いた外装式エアタンクを用いた方式。どちらも発射速度は毎秒50発程。
トイテック製はのちにCAWが引き継いで販売していたが、現在は販売は終了しており、サポートはMULEが引き継いでいる模様。また、個人レベルでサポートを行っているユーザーもおり、3Dプリント用部品データやより詳しい整備解説書の販売も行われている。
映画の背負い式の弾薬箱を再現するキットもあった。
ちなみにどちらも手持ち式で、商品名は「M134バルカン」であった。
さすがに他社からはこのような大型のエアソフトガンは売られることは少なく、オリジナルデザインで小型化したものや、XM214やXM556といった小口径モデルをモチーフとしたものが売られており、M134そのものは出ていない。
関連イラスト
Pixivでタグ付けされている作品は、ほぼ全て映画などに登場する個人携行型として描かれている。