概要
棺桶ポイントとは、Coffin Cornerの訳として用いられたなっち語である。
Coffin Cornerとは、主に高高度飛行によって生じる、加速しても減速しても制御を失いかねないハイリスクな飛行領域のこと。
主に過剰な高高度飛行で生じるが、悪天候などで引きずり込まれることもある。
高度を上げると大気密度と気温が下がる。
密度が下がれば失速速度が上がり、気温が下がれば臨界マッハ数は下がる。
増加した失速速度と低下した臨界マッハ数が接近し、ちょっとでも減速すれば失速して制御を失い、ちょっとでも加速すれば臨界マッハ数を超えてやっぱり制御を失うというギリギリの領域、フライトエンベロープにおけるギリギリの隅っこ(Corner)のことをCoffin Cornerと呼ぶのである。
日本語訳は現状定まっていない。
基本的に航空機は高度を上げるほど燃費が良くなるので、Coffin Cornerの問題は切実である
。ジェット旅客機の翼が大きく後ろに傾けられているのも、臨界マッハ数を引き上げてCoffin Cornerを緩めるための工夫である。
劇中では山脈を越えた瞬間に敵の防空網に飛び込んでしまい危険度が激増することを指して、航空用語のCoffin Cornerに因んで用いられた言葉である。
ちなみにCoffin Cornerは亜音速機が臨界マッハ数の突破に耐えられないことにより生ずるものであり、作中登場したF/A-18EFには存在しなかったりする。
用語解説
- 失速速度
揚力は迎え角に比例し、速度の2乗に比例して発生するので、より低い速度ではより大きな迎え角を取らなければならなくなる。
しかしながら迎え角を大きくしすぎる(=失速迎え角)と気流が翼面に沿わずに剥離する現象、すなわち失速が生じて揚力が失われてしまう。
飛行に必要な迎え角が失速迎え角に等しくなり、失速が必至となる速度を失速速度と呼ぶ。
揚力は大気の密度にも比例するので、高度が上がって大気が薄くなると失速速度は上がってしまうことになる。
なお、字面から勘違いされやすいが「失速」は「速度を失う」という意味ではない。前述の通り翼面から気流が剥離する現象を失速と呼び、飛行条件によっては高速飛行中でも発生する。
- 臨界マッハ数
航空機の翼は周囲の気流を加速させることによって揚力を生み出すものなので、機体全体の速度が音速を下回っていても、主翼周辺の気流が部分的に音速を超えることがある。
超音速飛行に適していない形状では超音速流が生じると制御が困難になる。
機体の周囲の気流が部分的に音速を超え始める速度のことを臨界マッハ数と呼ぶ。
そして音速は気温が1度下がるごとに秒速0.6mずつ下がっていくので、高度が上がって気温が低くなると臨界マッハ数も下がることになる。
なっち語として
上述の通りCoffin Cornerはフライトエンベロープにおける隅であり、ある程度の広さを持った領域として使われる用語である。
危険ではあるがとどまることもなんとか可能な程度の広さがあり、U-2などCoffin Cornerでの飛行を専門とする機種もあるぐらいなので、ポイントではニュアンスが異なる。
隅、縁、角など、Cornerの意味に類似する日本語は多数存在するわけだし、どうせ意味不明な日本語で諦めるなら「コフィン・コーナー」と字幕をつける手段もあったが、なぜそうしなかったかはなっちのみぞ知る。
実際の劇中では「This is Coffin Corner」と単純なセリフがはっきり、かつゆっくりと発音されるためかなり聞き取りやすい。
そこに「今回の"棺桶ポイント"だ」と字幕が出るため、単純な字面のインパクト、音声との不和から強い違和感を覚えた観客が多い模様。
ちなみに日本語吹き替え版では「死のふちに立つ」となっている。
「縁」と「淵」でダブルミーニングになっている模様。