概要
TACネームは、アメリカ空軍や航空自衛隊などの西側諸国の空軍にて、パイロット(エビエーター=航空士)個々人が持つ非公式愛称である。要約するとあだ名。
「TAC」とは「Tactical(戦術上の)」の略。
通信時に便宜上使うものであり、6文字以下や3音節等、短いほど望ましく、フォネティックコード等と被らないものとなる。基本的には戦闘機パイロットに特有の文化であり、ヘリや輸送機のパイロットにはTACネームは与えられないことが多いが、空自のようにパイロット以外でもTACネームを用いる場合がある(後述)。
なお実際にTactical(戦術的)な場面や管制塔などに対する通信では、統一されたコールサイン(呼出符号)が使用される。
コールサインとの違い
コールサインが正式な呼出符号であるのと異なり、TACネームは部隊内での愛称であって正式な呼称ではない。そのため私語の領域以外で使用されることはないにしても、あだ名として使用、呼び間違えを防ぐ等の理由から日常的に使われている。
コールサインは任務や部隊ごとに割り振られるため頻繁に変わることもあるのだが、TACネームはほぼ固定されており、配置換えや昇進といった大きく環境が変わるときに合わせて変える事が多いとの事。
同姓同名の隊員が居てもTACネームで呼べば間違えることは無い(欧米圏では名前被りが非常に多い)、無線で聞き取りづらい名前の場合がある、傍受されても個人の特定を防ぐなどといろいろ理由がくっつけられているが、上述の通り重要な交信ではコールサインが使われているので全ては外向きの言い訳である。
なお、個人に固定されたコールサインが与えられる場合はTACネームの必要性が薄く、TACネームを持たない場合もある。
ゲーム『エースコンバット』シリーズに登場する空軍機を例に挙げると以下のようになる。
なお、メビウス1やオメガ11はある事情から序盤から終盤の再編まで個人に固定されたコールサインを用いており、TACネームを使用していない。戦争終結後はコールサインを再編前のものに戻しており、ISAF解散後も引き続き同じコールサインを用いている。
なお、アメリカ海軍では愛称をTACネームではなくコールサインと呼ぶ。つまり無線呼出符号のコールサインとあだ名としてのコールサインの二つがあるわけである。ややこしい。
例として映画『トップガン・マーヴェリック』に於いてピート・ミッチェルの「あだ名としてのコールサイン」は言わずと知れた「マーヴェリック」であるわけだが、無線呼出符号としてのコールサインは、「ゴーストライダー」「ダガー1」など任務に応じたものが与えられている。
自衛隊では
航空自衛隊でもTACネームの文化は存在する。もともとは戦闘機部隊のみが使用していたが、最近では輸送機部隊のロードマスター(空中輸送員)といったパイロット以外での使用も確認されている。
ネームは実戦部隊へと配属された際に命名され、空自の場合は上官(先輩や教官等)により命名されることが多く、名前、部活動や出身地等の経歴を元に付けられる。が、やはり運が悪いとドジを踏んだ経験等から引用されたりととんでもないTACネームが付けられる事がある。
使用者の名前代わりとしてヘルメットや装具等にTACネームが書かれており、基地祭等でパイロットを見かけた際に知ることも可能。ただし、配置換えなどにより似たTACネームがあった場合や昇進等の際に変更されることもある為、一度付けられたTACネームを使い続けるとは限らない。
問題点
実際のところTACネームの命名は『フルメタルジャケット』でレナードが「微笑みデブ」の名前を授かったように、生来の呼称を剥奪することで自尊心を傷つけ、組織への愛着と忠誠心を植え付ける儀式的な意味合いが強い。
そのため基本的にTACネームはあまり格好良くない単語が使われる。訓練中の失敗談や勤務中のやらかしをからかうもの、外見や出身地などを弄ったものも珍しくなく、放送禁止レベルの淫語や差別的表現が用いられる場合すらある。イベントなどでは名札のTACネーム欄が伏せ字になっている隊員もしばしば見かける。
重複がなければ本人の希望どおりのTACネームが通ることもあるが、「マーベリック」などの有名なものは却下されることがほとんど。格好良いTACネームはベテランの特権と言われる。……が、「あの隊長いい年して自分マーベリック自称してやがる」とか想像されるのはだいぶ恥ずかしい気がする。
関連タグ
ひそねとまそたん:劇中で命名などTACネームに関する話題がある。