概要
2018年4月からTOKYOMXおよび岐阜放送、さらにはBSフジ、ついでに赤坂のお友達約1局にて放送されたオリジナルテレビアニメ。制作会社はボンズ。総監督は樋口真嗣。シリーズ構成を岡田麿里、キャラクター原案を青木俊直が務める。新人航空自衛隊員と秘匿されたドラゴンの物語。全12話。
本作の着想は樋口総監督が自衛隊の基地を実際に取材した際、取材禁止のエリアを見て妄想した内容から取られている。
絵のタッチとギャグ的なやりとり、ユーモラスなドラゴンと一見ほのぼの路線、と見せかけて「宮内庁」「第二次世界大戦下」も絡めた設定、後半の不穏さすら醸し出す展開と一筋縄では行かない内容となっている。
2019年には第50回星雲賞メディア部門にノミネートされた。大賞は逃すものの、本作がノミネートされた事で作品の事を知った人もいるだろう。
物語
素直すぎて無意識に他人を傷つけてしまう甘粕ひそねは、自分の性格に悩み、任期制の航空自衛隊に入隊し岐阜基地に配属された。しかしそこでひそねはドラゴンのまそたんと出会う。
実は政府と自衛隊は秘密裏に「変態飛翔生体」通称「OTF」と呼ぶドラゴンを戦闘機に擬態させて管理していた。さらに、そのドラゴンに乗り込む飛行要員「Dパイロット」にひそねは選ばれてしまった。
国家の命運すら左右するドラゴンと関わることとなったひそねの運命が動き出す。
登場人物
Dパイ及び候補生
岐阜基地所属のDパイ。2等空士→2等空曹。
思ったことを無意識に何でも口にしてしまう性格とそれによって人を傷付けている自分に嫌気がさし、任期付き自衛官として自衛隊に入隊。岐阜基地で事務を行っていたが、適性が認められ配置転換されDパイ候補生となり、後に正式にDパイとなる。
TACネームは先代のDパイだった森山が命名した【ひそね(HSN)】
岐阜基地所属のDパイ候補生。2等空士。
ひそねが配属されるまで岐阜基地唯一のDパイ候補生だった。ガラと口が悪くひそね曰く「小学生ヤンキー」。ひそねが来た時には追い出そうと嫌がらせを行ってきたが、現在はひそねの発言に対して怒ることはあるも、嫌がらせは行わなくなった。
母がDパイだったためDパイに対して強いあこがれを抱いている。
福岡県築城基地所属でF-2AのDパイ。空曹長。
真面目で実直であるがプライドが非常に高い。OTFは生物ではなく物として扱うべきだと考えているため、他のDパイとソリが合わない。
女性初のファイターパイロットになることを目標にしている。
TACネームは群れの中で最初に海に飛び込む『ファーストペンギン』になりたいことから【ペンギン】
青森県三沢基地所属でE-2C(あけみ)のDパイ。2等空曹。
「視線恐怖症」の超ネガティブ思考で他人と接するのが苦手。言いたいことはズバっと言う。漫画キングダムの愛読者。
TACネームは自分が地味だからと言うことから【ジミー】
埼玉県入間基地所属でC-1(フトモモ)のDパイ。2等空曹。
元々は動物園の飼育員として働いていた。
おっとりとした性格だが、怒らせると怖い。
TACネームはフトモモの太ももモリモリから【モーリス】
OTF
岐阜基地にてF-15Jへ擬態するOTF。黄色い帯状の模様があるのが特徴の紺色をしたドラゴン。ひそねが着任するまで3年間Dパイを拒否していた。
築城基地所属のF-2Aへ擬態するOTF。Dパイを務める星野絵瑠によって平時でもフォックストロットの状態を維持していたが、実は絵瑠のファーストペンギンになりたいという想いに応え、自らの意思でその状態を保っていた。
名前はF-2から転じて英語で「普通」を意味する『ノーマル』からきている。
三沢基地所属のE-2Cへ擬態するOTF。右目に眼帯をしており、まるで三度笠のようにE-2Cのロートドームを被った黄色いドラゴン。早期警戒機型であるため索敵も行える。腕と翼が一体化したワイバーンのようではあるが、後ろ足がヒレ状になっている。絹番莉々子がDパイを務める。
入間基地所属のC-1へ擬態するOTF。輸送機へ擬態するだけあって大型でギザ歯が特徴の緑色のドラゴン。日登美真弓がDパイを務める。
- ミタツ様
74年周期で目覚める超大型変態飛翔生体。超低速で暴風雨を伴って「臥所」と呼ばれる次の寝床へ移動し、「臥所」に辿り着かなければ大きな災いが起こるとされている。
自衛隊関係者
岐阜基地飛行開発実験団の司令。空将補。
普段は飄々としているが柔軟な思考の持ち主。
岐阜基地所属のOTF飛行班の班長を務める女性。2等空佐。
問題児であるひそねらに頭を痛めながらも指導する。かつて輸送機飛行班のパイロットだった。
輸送機パイロット時代のTACネームは名字の柿から【パーシモン】
岐阜基地所属のOTF機付長。空士長。
童顔だが喫煙者。常にOTFの身の回りの世話をしている。
実は、彼の一族はOTFと関わりのある血筋で、彼にも自衛官の立場とは別の立場もある。
岐阜基地所属の戦闘機飛行班の班長。2等空佐。
リーゼントが特徴。よくトラブルを起こすOTF飛行班およびDパイを迷惑がっている。
TACネームは【ジョニー(JHONNY)】
岐阜基地所属の戦闘機パイロット。1等空尉。
パイロットとしての腕は確かなのだが、女性好きでお調子者。女性の趣向に関しては「揺り籠から墓場まで」「フェーズドアレイ並みにビンビン」等とのたまうのにかかわらず、なぜかひそねには反応しない。
TACネームは【ゼットン(ZETTON)】。
岐阜基地所属の戦闘機パイロット。1等空尉。
パイロット達の中では最も長身で、語尾に「ッス」を付ける。普段は標準語で喋るがたまに九州弁がでる。
TACネームは【ロングテール(LONGTAIL)】
- 小暮(CV.越後屋コースケ)
岐阜基地所属の輸送機飛行班の班長。2等空佐。
眼鏡とたらこ唇の気の弱そうな男性。なにかと立場の弱いOTF飛行班に理解を示しているため、怒り狂う前澤を制止したりフォローを入れたりと、OTF飛行班と戦闘機飛行班の緩衝材となっている。
- 昭島英子(CV.生天目仁美)
岐阜基地第二補給所総務課に勤務する女性自衛官。3等空曹。
自称岐阜一の恋愛エキスパート。1話でひそねにOTFがいる第8格納庫へ行くように指示をしたが、基地内地図に存在しないうえに誰もいない格納庫に困り果てたひそねに婚期の遅れたお局様とあだ名された。
政府関係者
- 飯干(CV.下山吉光)
当初は防衛事務次官と呼ばれていたが本当の役職は宮内庁の式部官。OTFとDパイの情報に詳しく把握しており、国にとって重要なマツリゴトを成功裏に行うため曽々田団司令や柿保飛行班長に難題を押し付ける。何かにつけてご当地銘菓を食べている。
民間人
Dパイ専用のパイロットスーツを制作する民間業者の技術者。少々変態チックな言動が目立つ。
岐阜基地にてヤクルトの販売をしている謎の老女。たびたびひそねらの前に現れては助言のようなものと、ヤクルトの商品を渡して去っていく。
実は、太平洋戦争頃に陸軍航空隊に所属し、"ラバウルの天女"と呼ばれたDパイだった人物。マツリゴトを成功させるべくひそねたちを指導する。
- 森山(CV.斎藤千和)
ひそねが着任する3年前まで岐阜基地のOTFのDパイを勤めていた女性。元2等空尉。
岐阜のOTF(まそたん)をオスカーの愛称で呼ぶ。元々は柿保の後輩で岐阜の輸送機飛行班のパイロットを務めており輸送機操縦の腕が良かったと評判だった。
恋愛によってOTFと精神の波長が合わなくなりOTFが飲み込まなくなったためDパイを引退(表向きの理由は妊娠と結婚)。輸送機隊への原隊復帰せずそのまま退官し現在は一児の母。
Dパイを引退はしたもののOTFとの関係は現在も良好で、3年ぶりに再会した際もOTFは喜んでいた。
なお現役の時は財投らが「コレもんのコレ」と称するほどだったが現在は体系が変わってふくよかになっているため元同僚のほとんどは現在の姿を見ても気が付かなかった。
TACネームは名前の森から【フォレスト】。
マツリゴトで巫女役を務める女子高生。小此木とは幼馴染で好意を抱いており、ひそねの存在を気にしている。ひそねに似て言いたいことを言う性格。
用語
- 変態飛翔生体:通称『OTF』
日本に古来より存在してきたドラゴン。過去の様子を描いた絵巻物においては、東洋の龍(日本式の3本指の龍)として描かれている。その存在は国の富の象徴とされOTFを巡って過去には戦が起きたともいわれている。
時の権力者によってその時々に適切な事象や物(天女の羽衣、大凧など)に擬態させその存在が秘匿されてきており、時代の変移によって管理が幕府から日本政府に代わり、擬態するものも航空機へと変わった。帝国陸海軍を経て現在は航空自衛隊によって秘匿業務がなされている。そのため現代においてもドラゴンは空想上の生き物とされている。
代謝による熱量が高く、飛行することで翼から排熱をして体を維持するものの、本人の意思で飛ぶことを拒否することもあるため、その際は大量の水による冷却を行う。
航空自衛隊ではOTFの体調や擬態するための装備の管理をする整備隊とOTFを操作する専門の女性パイロット『Dパイロット(Dパイ)』が所属する飛行班を設置しOTFの維持管理を行っている。
岐阜基地の飛行開発実験団(組織として実在)にいた個体はひそねがDパイ候補生として着任するまで3年間Dパイの受け入れを拒否しており、水による冷却も限界に達しようとしていた。
- Dパイ
航空機に擬態するための装備をしたOTFに直接飲み込まれることで体内から航空機形態への操作や飛行に関する指示を出すパイロットのこと。操作する場所は胃であり、特定の部位を刺激しての操作となるのだが、場所が場所なため消化される危険が伴うことから専用のパイロットスーツを着用している。外の様子はヘルメット型デバイスのヘッドピースリアライザ(通称:ヘッピリ)によって全天周囲モニターのように透過されて表示される。OTFの体内から出る方法は基本的にはリバースとなるが、緊急時には別の場所からになる。
- マツリゴト
ミタツ様の覚醒と移動に備えて計画される国家事業。ミタツ様を次の寝床の「臥所」へ導くための神事で、DパイとOTFは超低速で移動するミタツ様を誘導する必要があり、三日三晩も飛び続けなければならない。もし誘導に失敗すれば大きな災いが起こるとされている。