プガチョフ・コブラ・ザ・変態機動
1989年のパリ航空ショーで初めて披露された。
機首を一気に120度まで持ち上げて失速寸前まで速度を落とし、その後逆の行程を経て水平飛行に戻る。この間、一時的に尻を前にして飛ぶ。いわゆる変態機動。機体の設計思想や空力制御技術、エンジン設計など、国家の有する科学力・工業力の水準を明確に示せる機動である。
ただコブラ機動そのものは実戦的ではなく、実は「コブラを行える技術水準がある」と示す事に意義がある。
コブラ機動が可能なのは、
・失速寸前・失速下でも空力制御を可能とする優秀なアビオニクス
・ある程度の静安定性緩和を持たせた設計
・空気流入量が激減しても出力を保ち続ける高性能エンジン
を設計段階から盛り込まれた機体のみ。
これらの性能はコブラに限らず、あらゆる戦闘において有利に働くもの。コブラを行えるほど運動性が高く設計され、幅広く性能を保てるエンジンを持つ戦闘機は、どんな状況でも非常に強いのだ。
世界の反応
これを利用すれば急激に速度を落とせるので、わざと相手に追い越させて後方に付ける(=オーバーシュート)ようになり、空戦を有利に運べるのではないかと話題になった。
しかし実際の空戦においては速度(正しくはエネルギー)が命。安易なエアブレーキはエネルギーを無為に失うために厳禁であり、同様にコブラも自殺行為となる。むしろ機体背面を大きく晒すことで的の面積が増えるし、ただでさえ限界ギリギリの機動を行うドッグファイトの最中に行えば、相手を撃墜するどころか自爆する恐れもある。下手にエアブレーキを使うよりも危険である。
ミサイルを回避しようにも、速度を失ってしまえば次の機動が出来なくなり、回避も逃走もできないままミサイルの餌食となってしまうだろう。そもそも追いかけてくるミサイル相手に「止まる」事など意味はない。散弾頭がより近くで起爆するだけである。
また、F-22に偏向ノズルが採用されたのはこの機動を力尽くで実現させるためであった、と噂された。実際には超音速飛行中の動翼の効果減少を補うためのものであり、そもそもコブラを最初に行ったのは「偏向ノズルの無い」Su-27であった。
手品のタネが分かった現在では
制御関数のみであれば古典制御器で十分に実現可能で、電子機器の性能が発達した現代では、高専ないし大学で制御工学を齧った人間にとってはさほど難しい課題でもない。
燃料や兵装の積載状況を無視できるなら、の話だが。
一部の変態は自作の小型ジェット模型飛行機に制御関数を組み込んで、クルビットを始めとした機動を成功させていたり、ゲーム内で制御関数を組んで再現している。どちらもパイロットがいない分、本家より過激な機動をする傾向にある。お前ら飛行機じゃねぇよ(褒め言葉)
派生機動
いずれもPSM(Post-Stall Manuva:失速下機動)に該当する。
- フック:Su-35が最初に行った機動で、水平旋回中にコブラを行う機動。
- クルビット:こちらは途中で機首を水平に戻さず、そのまま縦に一回転する。Su-37、F-22、Su-30が行った機動で、推力偏向ノズルを有する戦闘機のみが実現可能とされる。
- ダブルクルビット:MiG-29OVTが行った機動で、クルビット後の失速寸前の状態でもう一度クルビットを行う。こちらは推力偏向ノズルによる効果でテールを振るため、推力偏向ノズルでなければ実現できない。