「ツノ付き」フランカー
Su-30は練習機兼戦闘機だったSu-27UBを基に、編隊間データリンク装置を装備した防空戦闘機編隊の指揮官機として開発された。ロシア流儀でいう防空戦闘機には元来、レーダー基地の間隙を埋める「空飛ぶ防空ミサイル基地」としての機能が求められており、そのためSu-27にはSu-15から引き続き、強力なレーダーが搭載されている。Su-30は中でも指揮官機として考えられていたため、一般型Su-27よりも強力なレーダー(のちに一般機にも適用されたが)を備えている。
ただF-14でもそうだったように、ことに強力で精密なレーダーならば、操縦しながら常にレーダーを注意し続けるのは大変な作業であり、そうなると常にレーダーを監視し続ける乗員もいた方が都合がいい。そういう訳でSu-30、旧名称にしてSu-27PU(複座迎撃機型の意)は生まれた。
フランカーの嫁入り
しかし、時は折しも冷戦終結・ソビエト崩壊の渦中にあり、旧式機からSu-27への転換はもちろん、既存の飛行隊の維持さえも著しい困難にさらされている時であった。そんな中では特にSu-27PUなどの派生型は、Su-27一般型導入を維持させる上では後回しにするより無く、スホーイ設計局は販路を海外にも求めていくのであった。
ただ販売するにあたり、やはり単純な防空戦闘機では商材としての魅力には乏しい。
なので元来の拡張性を生かし、対地精密攻撃を実現した戦闘爆撃機として発展していく事になった。これはF-15Eにも共通した部分とも考えられる。
Su-30はこうして一躍脚光を浴びた。
マルチロールとしての役割なら、もとより複座で、後席員を爆撃手にもできるSu-30には苦もない事だったからである。同様の例はラファールやF/A-18(アメリカ海兵隊機)にも見られる。
こうして戦闘爆撃機として生まれ変わった(といっても、外観はほぼ変わりなし)Su-30はSu-30M(改良型の意)となり、輸出用基本開発型となった。実際に輸出される機は、各国の事情にあわせて装備を変更することもあり、Su-30MK(Kは輸出型の意)系統としてさらに末尾に記号がつく。
Su-30にはNATOコードネームはフランカーFが振られていたが、戦闘爆撃機型が登場するのにあわせてSu-30M以降をフランカーF2(元来のSu-30はフランカーF1)と呼ぶようになった。
フランカーFの発展
Su-30KI(計画中止)
Su-30系統は各国の仕様に合わせて発展しており、インドネシアでは一時Su-30KIという、シリーズ唯一の単座型を導入する計画があった。しかしこれは後の経済危機により頓挫し、現在は新しくSu-27SK(輸出用一般型)とSu-30MKを導入しなおしている。なお、Su-30なのに単座型だったのは、元々複座型を導入する計画が、途中から単座型に差し替えられたためなのだとか。
Su-30MKI「フランカーH」
インドでライセンス生産されているSu-30MKIは、他の国でも導入されているSu-30MKシリーズのひとつの雛形ともいえる型で、NATOコードネームには「フランカーH」が割り振られている。外観ではエンジンの推力偏向装置(TVC)とカナードを導入しているのでわかりやすい。このSu-30MKIでは西側製のアビオニクスを採用しており、エルビット(イスラエル)やタレス(フランス)に加え、インド国産の電子機器を導入している。
※細かな仕様違いを除けば、ほぼ同様の機がマレーシアとアルジェリアにも輸出されている。更には搭載されていた外国機材などをロシア製のものと入れ替えたSu-30SMが本国ロシアで採用されている。
Su-30MKK「フランカーG」
Su-30系統でありながら、これもまた特徴的なのが中国向け輸出型となったSu-30MKK「フランカーG」で、こちらにはインド仕様のようにTVCやカナードが導入されていない(カナードについては、やや性能が低く軽いレーダーを装備しているため)。90年代に南沙諸島で軍事衝突が起こったのをきっかけに導入が決定した。能力強化型のSu-30MK2もあり、こちらはベトナムやベネズエラなどに輸出されている。
Su-30MKKはSu-27SK(ならびにライセンス生産型のJ-11)よりも広い目的に使える機として導入され、現在は続々と新たな飛行隊が編成されつつあるようだ。これらすべてが輸入機というわけではなく、J-11BS(複座練習機型)を基に中国独自の改修を施し(Su-30MK2相当)、「J-16」を開発している。