概要
旧態化して力不足と評価されたロボコップの後継機として、オムニ社により製造された。
制御装置の核として搭載されている脳以外の全てが機械になっているのが特徴。そのフォルムも初代ロボコップとは異なり、人型から逸脱した機械的なものとなっている。
武装
武装面でも初代ロボコップを圧倒しており、高速ミニガンや機関砲・小型ロケット砲の他、
救助装備としても格闘兵器としても利用可能なパンチングアーム・エンジンカッターや
バーナー・プラズマトーチなどを装備し、暗所では投光器を用いる。これらに加え、高所からの落下やガス爆発をものともしない強固な装甲フレーム、人間を圧倒することはもちろん、装甲車すら持ち上げる強力なパワーをもっている。また、脚部ユニットには可動式のダガーナイフ状の爪が装備されており、地面に突き刺すことで転倒時なども素早い復帰が可能となっている。正直言って警察用途よりもED209同様に軍事転用を目指しての重装備である可能性も高い。尚、外装は暴走の段階ではほとんど装備されていない状況だったともされていたが、それでも警察のあらゆる射撃、装甲車の衝突にもびくともしないなど、1号から続くオムニ社特有の重防御主義が顕われた機体でもあった。
制御系というか中の人
脳に使われているのは、デトロイトで「ヌーク」という麻薬を売りさばいていた
麻薬依存症かつ密売組織の元締で、ロボコップ(マーフィー)との戦いで重傷を負った凶悪犯罪者「ケイン」から摘出された頭脳である。
(余談だがこの麻薬、Nuke(＝Nuclearの略称)の名が示す通り、小説版では核廃棄物が原料である)
なんでそうなったし！
何故ロボコップの頭脳に犯罪者のそれを使ったのかというのは、オムニ社の女性心理学者ファックスの提案である。
ファックス博士は
- 機械の肉体を受け容れるのは警官よりも、むしろ力に憧れる犯罪者
- 強靭な生存欲求から、肉体を失ってなお正気を保つことができる
- 麻薬依存の犯罪者であれば褒賞が麻薬で済み、単純で制御し易く従順である
と考えていた。
この提案を受け入れたのは、これ以前にオムニ社がマーフィー同様殉職した警官の頭脳を使ったロボコップ2号機の開発を以前から進めるも、それらの試作機は
- 肉体を奪われ機械化された事に精神的に耐えられず、全く動作しなかった
- 発狂して暴れたり、始動直後に自殺したりするケースが相次いだ。
という問題の多発による焦りがあったからなのかもしれない。だが、その後のロボコップの強化振りや活躍ぶりを見るに、これらの試作機が1号を超えた性能を目指していたようには見えない事も問題だろう。
何故なら2号のデモンストレーションの際に、オムニ社のオールドマン会長は、「この機体はデトロイトで生産され･･･」とも発言しており、2号以降は量産（場合によっては軍事転用の為に）が前提であり、1号の機体が高性能なのは今後量産機を開発する場合での開発能力の限界を試す実証試験機であり、採算度外視で注ぎ込める技術の粋を注ぎ込んだ可能性もある。必ずしもマーフィー自身の精神的な強靭さだけではなく技術的な背景に於いてもコストダウンによる性能低下があったとしても何ら不思議はない。それに何より、第1作で顔を出していた開発陣は2作目以降確認できず、2号以降の開発は全く別のスタッフが開発を行っていた可能性も否定できない。
1号、つまりマーフィーと同じ仕様の身体を与えられていたら、こんな事にはならなかったのかもしれない。その証拠に最も最後のビデオシリーズではマーフィーの親友が、ロボコップ1号の発展型仕様の身体を与えられて、発狂せず稼働している。多分開発者が別だった事で起こった悲劇とも言えなくもない。
ちょっと待てぇぇ！
デトロイト市の私有化を目論むオムニ社だったが、デトロイト市の借金を肩代わりしようとするもの(実はヌーク教団の残党)が現れる。これでは借金返済不可能を理由に市の財産を没収することが出来なくなってしまう。オールドマン会長はファックス博士の提案に乗り、ロボコップ2を市長とその協力者の抹殺に向かわせる。
市の借金を肩代わりする代わりにヌークの黙認を迫る残党ホブはケインが殺されたことで自分達の時代が来たと喜んでいたが、ロボコップ2号によってその時代も束の間の夢に終わった。愛人だったアンジーが頭部のハッチの中に内蔵されたディスプレイに映し出されたケインの画像を見て彼の帰還を喜んでいたが、案の定情け容赦なく殺されてしまう。そもそも、頭脳に使ったケイン自体がが倫理意識に欠如し過ぎた犯罪者であるがために、その性格は狡猾かつ凶暴であるし、加えて薬物依存症で己の快楽のためなら後先を考えないために、些細なことがきっかけで暴走を起こしてしまう。さらに開発に関わったファックス自身の手で生命維持装置を解除され、人間として死亡しているために、当然ながらファックスのことも激しく恨んでいる。
フラグが満載過ぎて折れなかった理由が解らないよ
そして、絶好のネタを見つけた笑いの神はそれを見逃さなかった。なんと死神と連れ立って
史上最悪のブラックコメディを発生させてしまったのだ。
オールドマンがデトロイトの再開発によるデルタシティ造成と、ロボコップ2号生産ライン誘致を高らか宣言したデモンストレーションにて、ヌークの枯渇とロボコップへの復讐心からお約束通り暴走、自分を操るコントローラーを奪い、制御不能の殺人マシーンと化してしまう。この時、自らリモコンを操作してさらに麻薬組織の残党狩りの後に武装解除させておかなかったため（つまり、テストの後のまま弾を入れっぱなし）、装備した重火器の安全装置を解除し記者や警察官達を無差別に虐殺した。
ロボコップ(マーフィー)との再対決は熾烈を極めたが、
遂には中枢ユニットから引きずり出されたケインの脳髄を破壊され機能停止する。
その末路と意外な功績
この大失態で、オムニ社は全責任をファックスに擦り付けて切り捨てるが時すでに遅し。
オムニ社の株価も評判もガタ落ちになってしまい、続編『ロボコップ3』で日系企業「カネミツ」に身売りするハメになってしまった。笑いの神はしっかりとオムニ社にもオチを用意していたのである。
まあ、ED209という前例があったにもかかわらず同じ失敗を繰り返し、さらに被害を拡大させてしまったのだから当然の末路と言えるだろう。こんな危機管理能力で何故デトロイトを支配できる会社になったのか、実に興味深いものである。いや、正確にはオムニ社が頑張っていたのではなく、治安維持に奔走していたデトロイト市警察（作中ではオムニ社の子会社にされてしまっていた）による功績が大きいのかもしれない。多分オムニ社が潰れなかったのは笑いの神様かブラックジョークの神様がネタとして使えるように乱数調整をしていたのかもしれない。
なにせ、一警察官がフルオートのアサルトライフルだのを平然と持ち出してくるのだから。デトロイト市警察が一種の警察軍と化していたのは間違いないだろう。第1作『ロボコップ』では汎用機関銃であるM60を携行する警官もいたくらいで、第2作『ロボコップ2』では、街の銃砲店でさえロケットランチャーやフルオート射撃の言出来るバトルライフルだの、アメリカの連邦法でさえ販売を禁止している品目を置いているくらい治安が悪化している、もう治安云々を通り越して内戦状態なっていたとも考えられるため警察の重武装化は止むを得ないとも思える。
その中でのデトロイト乗っ取り計画である。一体こんな状況から何を得ようとしたのか、せいぜい新しい兵器の実験場になるくらいで採算の取れる計画ではないような気もする。いずれにしてもまともな危機管理ができない会社は潰れてしまった方が社会の為だろう。ケインことロボコップ2号は自身の体と多数の人々の流血を以てその教訓を残したと言える。
