概要
坂木司による推理小説。デビュー作『青空の卵』、『仔羊の巣』、『動物園の鳥』の三部作。
推理小説とはいっても、殺人等の刑事事件は起こらず、
語り手と探偵役が出会ったご近所のトラブルと、それを解決するに伴って広がる人間関係を描く。
探偵役の鳥井真一はひきこもりで、彼が唯一心を許す友人坂木司が語り手を務める。
鳥井のもとに坂木がトラブルの相談を持ち込み、鳥井がその謎を解くのがパターン。
青空の卵のタイトルでドラマ化している。
登場人物
本作の語り手。二十代後半の男性。
作者と同名なのは、作者がペンネームに彼の名前を流用した為である。
本人曰く、身長が高いことを除けば、何もかも平均的などこにでもいるサラリーマン。
温厚で笑顔を惜しまず、美談に涙を流し他人の為に奔走する極度のお人よし。
鳥井のことを何よりも優先しており、、彼の為に休みが取りやすく定時に帰れる外資系の保険会社に入社したほど。
毎日のように鳥井のもとを訪れ、週に一度は外出を促し付き添っている。
色々なトラブルや謎の解決を鳥井に持ちかけるのも、鳥井が外出したり他人と交流するきっかけになると目論んでいるからでもある。
本作の探偵役。坂木と同齢。
中性的な美青年であり、明晰な頭脳と人を惹きつける個性を持っていながら、
他人の視線を極度に恐れ、一人での外出が出来ないひきこもり。
母親に全く愛されなかったことが深いトラウマになっており、父、祖母ともすれ違いから不和だった。
中学時代に長期間受けた暴力的ないじめがトリガーとなり、高校を辛うじて出た後ひきこもる。
現在もひきこもりだが、実家を出て在宅プログラマーとして自活している。
高校時代のある事件を機に、坂木だけに心を許し、手放しで信頼し依存するようになった。
坂木さえ安定し幸福そうにしていれば、自身の状況がどうあれ鳥井も安定する。逆も然り。
坂木が行動原理なので、その頼みをNOと言えず、彼が持ち込む他人のトラブルを嫌々ながら解決する。
以下は、二人が事件を解決する中で出会い、坂木だけが外界との接点だった鳥井が、家に上げて料理を振舞うようになった友人達。
坂木・鳥井の高校自体の同級生。
現在は二人が住む町のおまわりさんとして派出所勤務している。
偶然再会してから、たまに鳥井のマンションを訪れて飯をたかるようになった。
一見豪快でおおざっぱな男だが、坂木の本人が自覚していない歪さを案じている。
滝本の後輩。いつもペアを組んで街を警邏している。
温厚で細やか、児童心理学に詳しく、鳥井への理解も深い。
俗に言う天使。坂木・鳥井から、滝本そっちのけで高評価を得ている。
後天的に全盲になった青年。ある事件を解決する際知り合った。
薄幸の美青年然としているが、強かで頭の回転が速くしっかりしている。
全盲となった交通事故から、親友の安藤を避けていたが鳥井の謎解きを経て和解する。
歌舞伎の女形。たおやかで女性的な美青年。
実は交通事故で男性器を失っているが、女形としての武器を手に入れたと割り切っている。
事故の原因である親友塚田を許し、全盲になった彼を一生支えようと誓うが、塚田に避けられていた。
鳥井たちによってすれ違いを解いてもらい、塚田と和解する。
坂木は美しい友情に涙したが、安藤くんは欲しいものを手に入れる為に犠牲を厭わなかっただけである。
保険営業マンである坂木の顧客。ある事件を解決する際鳥井とも知り合った。
昔気質の細工職人で、飄々としているが酸いも甘いも噛み分けた老人。
そんな老人だから教えられることを、若者に正しく教えてくれる人。
自宅で内輪の木工教室を開いており、坂木たちも通い始めた。
デパートの女性店員。ある事件を解決する際に知り合った。
坂木から淡い好意を寄せられているが、本人は栄三郎氏に夢中。
生意気盛りのチョイ悪中学生。ある事件を解決する際に知り合った。
自分を叱ってくれた栄三郎と、優しい坂木に懐いたが、口が悪く容赦のない鳥井とは割りと不仲。
事件後、木工教室に通う名目で栄三郎宅に屯している。