概要
物語の舞台「サンダイル」に人類が誕生するよりはるか昔、人類とは全く別の先行種族が繁栄していた。
その先行種族は、人類よりも遥かに術の力を使いこなす才能に恵まれ、サンダイル自体にも術エネルギーが人類の時代より遥かに溢れていた。
だが、やがてこの先行種族は滅亡することになる。その際、なんとしても滅亡を避けたいと思っていた一心で、1つの卵型の道具を作り出す。
それが「エッグ」であった。
作り出したエッグに先行種族である自分たちの意識を移し変え、自分たち先行種族が苦手としている(=言い換えれば彼らにとって過酷な環境である)砂漠地帯の遺跡にエッグを安置した。
時は経過して400万年後。
人類はこれを偶然掘り出すが、手にした者は先行種族に意識を支配されて傀儡となり、各地で(人類にとっての)悪事を働くことになる。
構造
以上のことから、エッグとは人類の為にある道具ではなく、また人類と共存できる代物でもない。
手にした人の精神を支配する目的は、先行種族である自身たちが復活するためであり、先行種族にとっては依り代となる肉体がどんなものであっても構わないことに由来する。
砂漠に安置したのも、精神を支配して自分たちの思うとおりに動いてくれるほどの知能を持った生物に発掘してもらおうとする狙いがあったため。同時に、知的生命体ならば文明も作るだろうから、文明をまず作らせておいて、そのできあがった文明を後から乗っ取ることも考えていた。
その精神支配力は、人類の精神構造で太刀打ちできるものではなく、基本的には持った瞬間に、本人は自我をそのまま保っていると錯覚しながら根っこまで支配が完了しているため、乗っ取られてしまったことに気づかない。
その上、持ち主自身の性格そのものを利用して行動するため、大抵の精神支配とは異なり周囲に「人が変わった」と思われにくい。言い換えると、性格までは制御できない。個人的な感情などは、エッグの精神支配とは関係なくそのまま現れる(ただし行動はエッグの原理に沿ったものに舵取りされる)。ただ、負の感情の増幅効果があるらしい。
また、エッグの傀儡であり続けるために、死ぬまでエッグを手放そうとはしなくなる。
サガフロ2の世界観は、人類やモンスターたちが術を当たり前に使えるものだが、その術という概念自体、先行種族が作り出したものである。
無限に術の力を取り出せる「クヴェル」も元々は先行種族がさまざまな目的を持って作ったもので(人類に破壊できない点も技術力の決定的な差として現れている)、クヴェルが安置されている遺跡「メガリス」も先行種族のための施設である。
クヴェルを持ったりメガリスを探索した人類が、たびたび精神崩壊や肉体の変貌といった取り返しの付かない事故に巻き込まれるが、これも先行種族が作ったあまりにも大きな術の力に巻き込まれた為と言える。
エッグもそんな「クヴェル」の1つであり、これを持つだけで強力な術を使えるようになるが、持った者があまりにも未熟だとほどなくして自爆してしまう(これは他のクヴェルにも言える特徴)。もっとも、持ち主は先行種族の力を与えられるため、その力は普通のクヴェルを使った場合とは比べ物にならないほど強くなる(程度は持ち主の元々の力に依存する)。
しかし、術に長けた先行種族の意識を入れた入れ物である以上、先行種族の意識が働く。活動の一環として、術エネルギー「アニマ」を集めるというものがあり、持ち主が死亡するとそのアニマ(この場合は魂エネルギーのようなもの)を強制的に吸収してしまう。一応、他のクヴェルによる事故時と同じ部分はあるのだが、エッグの場合は一部の例外を除いて、所持者のアニマを意思を持って取り込む。
通常は生物は死ぬとアニマが自然に帰る(現実で言う所の自然宗教における死生観に近い)が、エッグに吸収されて閉じ込められる為、死後もエッグのために言わば魂ごと扱き使われる構図になる。
何度も何度も、崖下に突き落とされたり海に沈んだりと、作中でさんざんな扱いを受けているクヴェルだが、それなのになぜ地上へ毎回舞い戻ってくるのかは明かされていない。これは、プロデューサーの河津氏は設定を作ってはいるのだが、河津氏のコンセプトとして「伝聞者もいないような歴史の闇に埋もれた出来事は、もうわからないのだからありのままにわからないようにしておく」というのが理由。絶対者が持つ上から目線のような視点でメタ的に無理矢理事実をプレイヤーの前に引っ張り出して明かすようなことはしないのである。そして、当然エッグに関しては伝聞者などいるはずもないので、このあたりの詳細は不明のままである。設定を作っていないのではなく、詳細を探りようがない状況を反映させたものにするあたり、いかにもリアルな描写。
破壊
物語上重要な家系となるナイツ家。
物語の主役の1人「ウィリアム・ナイツ(ウィル)」は、父ヘンリーがエッグを手にしたために奇妙な死に方をしたことを幼き頃に知り、その犯人と考えていたアレクセイ・ゼルゲンを追跡しようとする。
その末にアレクセイを打ち倒すが、アレクセイから人ならざる不気味なアニマを感じ取る。
ナイツ家は元々アニマ感知力がとても高く、常人なら気づかなかったであろう感知力を持っていたため、事件の真相はアレクセイ本人ではなく、アレクセイの持っていた「何か異様なもの」ではないかと着目する。
これがウィルとエッグの対立の始まりであり、エッグが人類に正体を気づかれ始めた発端でもある。
エッグにとって、生き延びる為に秘密裏に先行種族の支配を進めたいと考えているため、正体を気づかれてしまったうえにアニマを鋭く感知するナイツ家は、いわば天敵であった。
何度も対立するうち、特にエッグ破壊に執着するウィルに対しては「いつか殺してやる」とまで言うようになり、ウィルもまた70年以上の歳月をかけてエッグを追い詰めようとする。
その過程でエッグが使った手口は以下の通り。
- 発掘者ニコラ・ゼルゲン⇒術の才能が無かったので自爆
- ヘンリー・ナイツ⇒自爆したニコラが落としたエッグを拾い支配されるも、数年間持ちこたえる。しかし妻キャサリンがエッグを押し付ける為にアレクセイを呼び、エッグを奪わせたことでアレクセイに殺された。
- アレクセイ・ゼルゲン⇒小物の性格を利用され、各地で他のディガー(発掘者)からクヴェルを奪うも、ヘンリーを殺したことが仇となりウィルに追われて殺された。
- アニマ教徒⇒2種類の公式設定で内容が異なる。
- 海賊⇒元々船酔いする程度のヘタレだったが、それゆえにエッグの力に取り付かれる。海賊船に単独潜入されたウィルにエッグを弾き飛ばされて海中に落とされ、自身もエッグを追って海に飛び込んで死亡。
- ミスティ⇒子供の頃に拾ったため好奇心旺盛な心を利用され、村人からアニマを吸い取って化石に移植させる実験などを行う。その最中にリチャード・ナイツに目をつけた為、用済みとしてリチャードに始末させる計画を立て、エッグを押し付けて死亡。
- リチャード・ナイツ⇒エッグをミスティから押し付けられるも、すぐに飛び降り命を絶ったため精神支配が間に合わず、初の支配失敗に終わる。
- デーニッツ⇒メガリス探索中に拾ったことで乗っ取られる。南大陸の少尉だったことを利用され、ギュスターヴの名を借りて軍団を組織したほか、ミスティ時代に行った実験を活用してエーデルリッターという側近も用意する。エッグはこの時初めて「人類にとっての強さとは個人の強さではない」ことを学習した。この作戦で大勢の人心を掌握するも、ギュスターヴの家系としては不自然な行動があった。結果、ヤーデ伯家率いる連合軍に仕掛けられた戦争サウスマウンドトップの戦いにて敗走。さらにそこをウィルたちに追跡されたため、エッグ本体が戦うことになる。
これらの経緯にて、エッグは同じ手口を1回しか使っていない。
これは、先行種族の根本的な精神構造によるものであり、用心深さで意識的に同じ手口を避けたわけではないようだ。
裏を返せば、一度失敗した手段は、同じ手を改良してもう一度使ったなら勝てるであろう局面でも使わないのである。
唯一、ミスティがアニマ獣を動かすことに成功した際にはアニマ獣をリチャード・ナイツに破壊されているにもかかわらず、後に同じやり方でエーデルリッターを精製したが、これはアニマ獣を動かす事自体が目的だったのではなく、あくまで実験にすぎないため、破壊されようがそれはエッグにとっての作戦失敗にはならない(アニマを他の生物に移し変えるという実験結果が得られれば十分に成功と言える)。
また、最後のメガリスにはサンダイル全地域および宇宙からアニマを抽出する装置があるらしく、これを使って集めたアニマをエッグ内部に取り込むと、完全復活が果たせるらしい、とのこと。それは、サンダイルの全アニマが枯渇することを意味しているとも考えられ、自身の復活のためにこの世界が滅ぼされることをも意味していると言えよう。言い換えれば、かつて地上にいながらにして宇宙のアニマを抽出していた彼らにとっては、サンダイルという大地を捨てても問題ないとも考えられる。
ラスボス
これらの経緯から本作のラスボスになっており、偽ギュスターヴとして活動していた頃に部下にした「エーデルリッター」を従え、最後のメガリスにて待ち受けている。
エーデルリッターは戦闘形態「将魔」としての能力を持ち、単独でも強力。
しかし、それらを倒さないとエッグに吸収されてしまい、エッグのさらなる強化を招くことになる。
特に、石形態を倒さなかった場合に使ってくる「エンシェントカース」は、パーティ全員を100%以上の確率で石化させるとんでもない攻撃で、案の定挫折者を生み出した。
ちなみにメイン画像は、このラスボスとしての最終形態である。
最終形態すら破られたエッグだが、メガリスで集めたアニマによって、人間大の大きさまで膨れ上がっていた。
元々触れると意識を乗っ取るエッグだったが、もはや近づいただけでアニマに異常をきたすほどの力を持っていた。
戦いの結果に関係なく、メガリスで強化するという目標を達せられたことになる。
しかし、それを見たウィルたちの仲間の1人・グスタフは、これを一瞥し——突然、手にした金属剣を振る。
金属は、人工物であるがため、基本的にアニマを遮断する。
術士には疎まれるが、金属ゆえに強くて頑丈であり、このような対アニマには格好の対抗手段であったと言えるかもしれない。
しかも、それはギュスターヴ13世が長い年月をかけて鍛え上げた「ギュスターヴの剣」。
この時代までの「人類最強の剣」である。
ところが、この刃先がエッグに触れた瞬間、根元から折れてしまう。
ギュスターヴの剣を以ってしてもエッグには歯が立たないのか? 誰もが諦めた次の瞬間——エッグにもヒビが入り、爆発するように消滅した。
人類では歯が立たないはずのクヴェルを破壊して、悪夢の刻を終わらせた瞬間でもあった。
エッグに取り込まれた人々のアニマも解放され、自然へと帰っていったという。