概要
東大陸を中心に活動をするディガーの1人。しかし発掘するに適した術の資質には恵まれておらず、他のディガーのパーティに入っておこぼれをあずかることしか出来なかった。弟にニコラおよびピーターがいる。
経緯
ある日、ヘンリー・ナイツ(ウィルの父)率いるパーティに兄弟揃って参加する。ヘンリーは人格者で術の資質にも恵まれていたため優れた発掘力があり、同業者でありながらおこぼれを与るばかりだった彼は、ヘンリーを妬ましく思っていたという。しかし、探索のために下調べに訪れたヘンリーは、メガリスの異様さからこれ以上の探索が危険と判断し、本格的な発掘を断念する。
だがメガリスとは、危険も多いが当たりを引けば多大な功績と宝が手に入るという、人類にとってはいわば人生をかけた賭博場に等しい場所であった。才覚に劣る彼が、そのような場所を目の前にして、リスクを考えて拒否するはずがなく、兄弟だけで探索に走った。
確かにそこには、先行文明の遺産であるクヴェルがあった。先行種族の道具として使われていたそれらの代物は、人類とは比べ物にならないほど術に長けていた者が使うことを想定していたため、物によっては人類が手にしただけで魔力を暴走させ、アニマ(≒この場合は魂)ごと変質して怪物に変貌したり、自滅に至ったりするが、運よく人類に都合よく使える物であれば、人類の作る同種の道具より遥かに高い性能を持つ宝になる。
だが、そのクヴェルは、人類に都合の悪いものであるレベルを通り越して、人類に明確な意思を持って襲い掛かる代物——エッグであった。それは、手にした瞬間に精神を根っこまで支配され、本人は支配された自覚も無く、先行種族の意思のままに人類へ攻撃を仕掛ける代物。
エッグは、最初弟のピーターが拾うも、ピーターがあまりにも術が苦手だったため、その場で死亡。さらにそれをニコラが拾うと、間もなく暴走を開始し、町に戻るや否や手当たり次第に住民を襲撃し、死者も出した挙句自爆。ヘンリーがそれを拾うと、人が変わったように突然町を出て行ったという。
その本質を見抜けるはずも無かった彼は、なんとしてもあのクヴェルを欲した。そして、願ったり叶ったり——アレクセイはヘンリーの家に呼び出された。エッグに洗脳され手が付けられなくなったヘンリーは、妻キャサリンによって不意打ちで軽傷を負わされ、その隙にキャサリンからエッグを持っていくよう頼まれたのだった。
思わぬところで目的の品が手に入ったが、エッグの性質にはもう1つ固有の特徴があった。それは、宿主を変えた場合、前の宿主を殺して、そのアニマ——いわば魔力·魂エネルギーの全てを根こそぎ奪い、自身の力として蓄積するというものだった。そして、以前からヘンリーに感じていた劣等感によるコンプレックスが後押しして、ヘンリーとキャサリン両名の殺害に及ぶ。
当時幼かったウィルは、この事をなんとなく知っていたらしく、15歳のディガー初デビューの際に彼の名を耳にした途端、疑惑をハッキリとさせ、彼は追われる身になる。どうにかアレクセイは、ウィルに「真実を都合のいい部分だけ教える」ことでウィルを精神的に追い詰め、煙に巻こうとするも、ウィルの仲間にアレクセイの行き先を横から訊かれていたことで、本格的に追跡されることになる。
そして、石切場跡にて、道中手に入れた「魔除けのクヴェル」で強大なドラゴンを従えて都合よく迎撃に使ったが、それもニーナ・コクランの命がけの術で破られ、本人も直々に戦ったが完膚なきまでに敗れ去り、谷底に突き落とされ死亡、エッグの餌となった。
彼は、エッグを手にする前は、臆病で虚勢を張るだけだった。成果の多くがアニマ探知の才能で決まりがちなディガー稼業は、そうした才能に乏しかった彼には向いていなかったのかもしれない。そこに、エッグという分不相応な力がポンと手に入ったことで、「何でもできる気がしてくる」高揚感にとらわれ、尊大な態度で活動を重ねていくようになった(当然エッグの支配下に置かれた以上それはもはやアレクセイではないのだが)。
ただ、才能のなさはエッグを手にしてからも反映されており、目的のクヴェルをそもそも探していたこと(ミスティのように才覚があれば自分で新しくクヴェルを作れる)、エッグ所持者にしてはLPが一般人並みしかなかったこと(他の宿主はLPが異様な数値になる)、戦いの際にわざわざ谷底の真上という不利な場所にいたこと(谷底を避けていれば落下死も免れた)など、人並みはずれた力を発揮しているシーンが少ない。せいぜい魔除けのクヴェルを使ってドラゴンやモンスターを操っていたぐらいである。才覚なき故に劣等感を持ち心が弱く、そこをエッグに付け込まれたとも言える。
なお、劇中で明確に活動の様子が描かれた、最初のエッグ所持者である。観点を変えると、エッグ自体はアニマを収集せよという活動命令を受けていたが、具体的な内容は伝えられておらず、宿主の性格を利用したうえで方法を自分で模索する形を取っていた(モンスターを操っていたのも、手段の模索の一環のようである)。しかしその宿主がこれでは、活動にも苦労したであろうことは推測できる。こうしてエッグは、宿主を選ばなければ活動に支障が出ることを学んでいくのだった。