解説
主に東南アジア・南アジアなどの、南の地域に伝わった仏教であることから『南伝仏教』とも呼ばれ、『テーラワーダ仏教』『テーラヴァーダ仏教』とも呼ばれることもある。
釈迦の生前のおける仏教には、出家者に対する戒律は多岐にわたって定められていたが、釈迦の死後に仏教が他の地域に伝播すると、当初の戒律を守ることが難しい地域などが発生してしまう。
戒律の変更に関して、釈迦は生前に重要でない戒律は、サンガ(出家修行者)の同意によって改めることを許していたが、どの戒律を変更可能な戒律として認定するかという点や、戒律の解釈について意見が分かれ、これが大乗仏教(北伝仏教)との分離のきっかけとされる。
思想
出家せずとも生き方次第で悟りが開けるとする大乗仏教に対し、上座部仏教では悟りを開くためには必ず出家して修行を積まなければならないと考えられており、そのため上座部仏教が信仰される国では、生涯に一度は必ず出家させる風習が存在しており、『出家至上主義』と呼ばれることがある。
かつて大乗仏教を信仰する修行者たちは、上座部仏教を出家者しか悟りに導かれない寛容の無い考えであるとして、『小乗仏教』と揶揄して呼んでいた時期があったとされるが、現在ではこの呼称は良くないとされ、使われなくなっている。
上座部仏教では、出家者の戒律(具足戒)を守る僧と、彼らを支える在家信徒の努力によって、釈迦の教えを純粋な形で保存してきたとされているが、各部派の異同を等価に捉えており、仏教学者の立場からは、上座部は部派仏教時代の教義と実践を現在に伝える唯一の宗派であると評価されている。
大乗であれ上座部であれ、考え方は違えど信仰は同じであり、一概にどちらの方が良いとは言えない。