概要
東方Projectに登場する楽曲で、作曲者はZUN。同作のシリーズに登場する因幡てゐが『東方花映塚』に登場した際に、そのテーマ曲として設定された。
てゐの初登場そのものは『花映塚』以前の作品である『東方永夜抄』。
本曲は、ZUNによれば「 ちょっとお茶目な感じと、懐かしくも古くさい日本の様子を感じられるように書いてみました 」とのことで、ZUNは旋律の躍動感や雰囲気について『花映塚』という作品のテーマにも合うものとなっているのでは、と語っている。
ただし旋律そのものが日本風という訳ではなく、あくまでZUNのイメージするところによる「 日本っぽさ 」が込められたものであるようだ(『東方花映塚』Music Roomテキスト)。
なお、曲名の「素い幡」は「しろい はた」と読むが、てゐの姓であるところの「因幡」(いなば)に関連して「しろいなば」と読むと、てゐの要素である「因幡の素兎」(日本神話のエピソードに登場する兎)と「幸運の素兎」(てゐの二つ名)とを曲名を通しても同時に感じる事が出来る。
「お宇佐さま」もまた後述の「宇佐」の伝承とてゐに要素である「うさぎ」とが掛け詞にもなっているなど、曲名と本曲をテーマとするてゐとの関連性も高いものとなっている。
「ZUN's Music Collection」
本曲は上海アリス幻樂団による音楽CDのシリーズである「ZUN's Music Collection」の第四弾である「卯酉東海道」にも収録されており、本曲が重ねられた作中ストーリーでは東京を目指して電車旅行中の宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーン(メリー)の二人が「卯酉東海道」の由来と建設時のエピソードを語り合う。
ただし蓮子が語るその一部はメリーには眉唾もののエピソードであったらしく、メリーはその話の真偽を訝しんでいる。
「 蓮子は誰かに嘘情報吹き込まれたんじゃないの? 八幡様が好きな誰かに 」
(メリー、「卯酉東海道」)
なお本曲が同作CDに収録された際には「Most Famous Hero」との英字タイトルが付されている。
宇佐と八幡
「宇佐」とは古くからの由来のある地名であり、今日では大分県に「宇佐市」がある。
宇佐市には「宇佐」の名をもつ「宇佐神宮」があり、宇佐神宮は全国の八幡神(はちまんさま / やはたさま)を祀る八幡宮の総本宮である。日本の八幡様ネットワークの基点といえる。
八幡大神は日本仏教では「八幡大菩薩」とも。
てゐはそのセリフやスペルカード、二つ名といった設定面等のキャラクター造形に日本神話における先述の「因幡の素兎」の要素が多見されるが、『花映塚』で設定された本テーマ曲によって日本におけるもう一つの神話的な要素である「宇佐」と「八幡」をもその身に備えることとなった。
てゐはその愛らしい見た目とトリッキーな行動原理、いたずらへのお仕置きにも懲りないメンタリティ、裸足で竹林を駆け回る躍動感など、発揮する愛嬌には時に身近さをも感じさせる存在である。一方で先の「因幡の素兎」との関連も然り、幻想郷における存在性も古参の部類である(稗田阿求評、「幻想郷縁起」、『東方求聞史紀』)という点からは、一見するところのてゐのそれとは裏腹に、内包するキャラクター性にてゐ本人が経てきたものの奥深さを感じさせるという不思議な存在でもあるのである。