「差し出すだけでいい、お前の願いをこの私に」
概要
ディズニー100周年記念映画『ウィッシュ』の登場人物の1人。
本作の舞台である、願いが叶うといわれている魔法の王国「ロサス王国」を伴侶のアマヤ王妃と共に治める国王。
壮年の髭を生やしたハンサムな男性で、幼い頃故郷を滅ぼされ両親を殺されたという過去があり、そこから世界中を旅して魔法を身につけて一代でロサス王国を建国して争いもなく経済的にも恵まれた国家にした手腕の持ち主。
持ち曲は主人公アーシャとのデュエット曲「輝く願い(At All Costs)」、ソロ曲「無礼者たちへ(This Is The Thanks I Get⁈)」。
身一つから修行を始めて大魔法使いになった熱意と努力の人であるが、一方で自分を含め数多の願いが踏みにじられるのを目の当たりにしたため「叶わない願いを抱えていても辛いだけ」という悲観にも囚われている。
そのため18歳になった国民に願いと関連する記憶を提出させ、叶わぬ夢から開放されて心軽やかに過ごせるように取り計らい、願いはどんなものであろうと城の尖塔に大切に保管している。
そしてロサスの国益に資する(或いは無害な)願いを選別し、月に1度魔法で願いを叶える願いの儀式を執り行っている。
ただし願いの選別が行われている(つまり絶対に叶えられない願いもある)ことは秘密にしており、国民や観光客には全ての国民に平等にチャンスが与えられると嘘をついている。
願いの儀式に限らず平素から積極的に国民を支援している様子であり、移民は人種の別なく積極的に受け入れており、身体障がい者であるダリアを城の厨房で働かせるなど極めて先進的な人権意識を持つ。
そんな王のおかげで、中世の厳しい情勢下にありながら、ロサス王国民は衣食住の不安なく暮らしている。
一方でその強い才覚や、これほどの偉業をほとんど独力で成し遂げた自負からか、プライドの高いナルシストでもあり、国民のこともいささか見下している節がある。
また過去のトラウマか、ワンマン行政のプレッシャーか、神経質な一面も見られ、国益、権益への脅威となりうるものには過剰に反応してしまう。
作中では序盤は賢明かつ寛大な名君として振る舞っていたが、正体不明の魔法の光を目撃したことにより強い不安に駆られ、歯車が狂っていくことになる。
日本語吹替版で演じた福山雅治氏も、彼のことは「とても正しく正義感に溢れている」「その行き過ぎた正義感に故に悲しい存在となってしまった、悲劇の王様だと思う」と評している。
原語版のクリス・パイン、日本語吹替版の福山雅治氏のどちらとも演技の評判は良好で、上記のようなキャラ造形やマグニフィコへの判官贔屓的な見方もあってか実際にファンアートや沼にハマる人も多く、海外では振るわなかった本作の興行収入が日本では好調だった原因の一つとして分析されており、日本では公開してからしばらく後に主人公のアーシャよりもマグニフィコの方が人気キャラクターであるかのような宣伝を行っている。
日本では《マグぴ》と愛称で呼ばれており、ディズニーも公式コメントでそのことに触れているなど、日本ならではの世界では珍しい現象も起きている。
余談
- 名前の由来は、「マグニフィセント」と思われる。
- 当初はアマヤ王妃とマグニフィコ王の二人がヴィランであった模様。
- 人種差別や宗教的な迫害が普通だったこの時代に移民を受け入れ、宗教同士が対立しないようにしている安定した国をつくるなど、歴史上誰一人としてできていないレベルの偉業を成し遂げており、とてつもなく優秀な王であったことがうかがえる。
- 原語版の声を担当したクリス・パインはディズニー製作の実写映画「イントゥ・ザ・ウッズ」でシンデレラの王子役を演じている。
- 彼のキャラクターデザインは歴代のヴィラン達をオマージュしている。例えば緑色の魔法は『眠りの森の美女』のマレフィセント、実験道具の窯や大きな鏡、マントの柄は『白雪姫』の女王、マントのシルエットは『アラジン』のジャファーがモチーフである。
評価(ネタバレ注意)
「願いを支配する最恐のヴィラン」と公式サイトで紹介されており、夢や願いを奪うという行為は作品などで夢を見ることや願いを持つことをテーマとするディズニー作品の悪役が行うに相応しい行為といえる。
…が、実際はというと、ある程度の虚偽は含まれていたものの、「願いを捧げるのは国民自らの意思に基づいており、敵わない可能性についても織り込み済み」という点から、「願いを支配」とのキャッチコピーに首をかしげる観客が少なからず発生した。
言及される悲しい過去、貧困や戦乱から遠く離れた、時代背景からすると理想的と言っていい市民の生活、コロコロ表情が変わるどこか人間味がある性格、願いの内容を全てチェックして叶えない願いも特段何をするでもなく、むしろ厳重に保護魔法をかけ保管するだけという彼なりの思いやり(『どんな願いも自分の目の前で壊れていくのを見たくない』という信念からの行動)など、好意的に評価しうる要素が(ちょっと過剰なくらいに)多くある。
本作におけるヴィランとしての振る舞いも、アーシャとスターの予想外の行動の数々と、そんな非常事態の中で協力を呼び掛けてもまるで緊張感のない国民達への失望から来る危機意識からやむなく禁断の力に手を出したことによる副作用での暴走(と解釈しうる)といった描写であり、野心や欲望だけの悪行ではないものとして受け取られた。
このため、本編を鑑賞したファン達の中では、外国でも日本でも「哀しき悪役」か「脚本の被害者」かで割れており、中には「アーシャこそ真のヴィラン」という主張すら一定の支持を得ているほど。
一応脚本担当者の一人であるジェニファー・リーによると、「人間の本質は最も困難な瞬間の選択に表れる」らしく、つまるところスターの脅威下で禁断の書に手を出し人々の願いを次々と魔力に変えていった姿こそがマグニフィコ王の本性ということである。
ただ上述のように、王の悲劇的な過去と現在の施政が善性を強調しすぎており、一方で主人公であるアーシャやその仲間たちが願いの大切さに説得力を与えられていないことにより、脚本の意図とは違った解釈が支持を得ることとなってしまった。
関連イラスト
関連タグ
マクスウェル・ロード(ワンダーウーマン1984)…マグニフィコ王のアンチテーゼとも言えるヴィラン。
ジャファー…マグニフィコと同じく魔法を操るディズニーヴィランで、人外の力に溺れ暴走した結果、作中のラストにて封印されるという同じ末路を辿っている。
ガストン(ディズニー)…マグニフィコと同じくハンサムで自信家で傲慢なディズニーヴィラン。自分の思い通りにいかない事態に遭遇した結果精神のバランスを崩し凶行に走るという破滅に至るまでの経緯も一致している。双方とも豹変後は髪型が崩れるという視覚面での共通点もある。
ハデス…マグニフィコと同じく妙な人間臭さを持っていて苦労人という過去もあってか日本の一部ファンから判官贔屓的人気や不憫萌えをされる傾向にあるディズニーヴィラン。
???…ファンの間では本作の結末を経た後年の姿ではないかと考察されている。