概要
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先代パルス国王・オスロエス五世の嫡子。アンドラゴラス三世の甥であり、アルスラーンにとっては従兄弟に当たる。
本編開始時より16年前、パルス歴214年、彼が11歳の時、オスロエス王を継いで即位したアンドラゴラス王により王宮の失火に見せかけて暗殺されかける。猛火に包まれる中、辛うじて生き残り、パルスを脱出して亡命生活を送る。この時の火事により、顔の右半分に大きな火傷を負い、それ故に炎を無意識に恐れてしまうトラウマを持つ。
最初の亡命先であった隣国マルヤムでは盲目の第二王女・イリーナと交流、互いに惹かれ合った。だがイリーナの父・国王ニコラウス四世が隣国パルスの王位継承争いに巻き込まれることを恐れたため、まもなく王宮から追放された。
その後はさまざまな諸国を流浪するが、ルシタニア王国のマルヤム侵攻とパルス征服の野望を知ると、父の殺害、そして王位を不当に奪ったアンドラゴラスの復讐の為、前国王の嫡子である自分が正統なパルス王位継承者であると銀の仮面を被って身分を偽り、ルシタニアの客将となってパルスに侵攻させた。その際、国内に潜伏していた蛇王ザッハークを奉ずる魔道師らとも(彼らの最終的な目的を知らずに)手を結んでいる。
第一部の者には自らの正体と正当性を明かし、アンドラゴラスの忠臣であったカーラーン・サーム達もヒルメスを正統な王位継承者と仰ぎ、臣下となっている。
知略・武勇に長けているが、復讐のために残虐なやり方もいとわず、考え方や言動で視野が狭い節がある。
第一部終了直前、アルスラーンに敗れたヒルメスは、再会したイリーナと二人で王都エクバターナを去る。第二部開始前までは、亡命先のチュルクで国王カルハナの客将として活躍し重用される一方で、妻となったイリーナとひとときの平穏な人生を送っていた。
第二部開始時、懐妊中のイリーナを病気で喪う。以後はパルスの王位奪取のために、異国の軍を率いてアルスラーンと直接対決するほか、隣国のミスル王国簒奪を目論むなど暗躍を続けている。第一部と比べて、考え方がやや軟化しており、自分がアルスラーンと比べて器量で劣っている点があることや、己の欠点についても自覚するようになった。
原作者の田中芳樹氏によれば、この物語は貴種流離譚を反転させたものと語っており、本来は主人公に多い貴種流離を主人公の敵も貴種流離の立場となっており、二重の貴種流離譚の物語になっている。
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アルスラーン戦記には幾つかの「隠された真実」が存在する。
一つは「銀仮面卿がヒルメス王子である真実」。これは火事を生き延びたヒルメス本人と、彼を匿ったマルヤム王家のみが知り、以降はヒルメスとマルヤム王族(イリーナ)が意図的に流布しない限り広まる事は無い。
もう一つは「アルスラーンがアンドラゴラスの本当の子では無いという真実」。これはタハミーネ出産当時の関係者しか知らない。ヒルメスがこれを知るのは、第一部終盤でアンドラゴラスとの対決時に、かつてペシャワール城でバフマンが言い残した台詞を思い出したのと、その直後に現れた暗灰色の衣の魔道士から真相を教えられたことによる。
そして、隠された三つ目の真実がある。それは「ヒルメスはオスロエスの子供では無いという真実」である。
ヒルメスの母はオスロエスの妃である。しかし本当の父親はオスロエス・アンドラゴラス兄弟の父・ゴタルゼス二世。つまりオスロエスの異母弟だったのである。
ゴタルゼス二世は名君であったが迷信深く、若いころに授けられた「パルス王家はゴタルゼスの子の代に断絶する」という予言を信じて惑乱し、その対策としてパルス王家で「これまでアンドラゴラスと言う名の王二人が必ずオスロエスという名の王の次に登極している」偶然を利用して二人の王子をそのように名付けた。さらにその後授けられた予言を盲信した為、オスロエスの妻と関係を持ち、結果生まれたのがヒルメスだった。
ヒルメス王子暗殺の真実は、王弟アンドラゴラスが、兄王オスロエスが死の間際に残した「ヒルメスを殺してくれ」との懇願に応えたことによるものである。ヒルメス出生の秘密を知っているのは、オスロエス・妃・ゴタルゼス・アンドラゴラス四名のみであり、最後に残ったアンドラゴラスも口外しないつもりだったと思われるが、ヒルメスが生きていた事を知り、かつ復讐に焦がれている様子を見て、ヒルメスとサームにそれぞれ一度ずつ、この真実を告げている。
物語開始後にこの秘密を知るのは、前述のとおりアンドラゴラス王から直接話を聞いたヒルメスとサーム、そしてヒルメスの腹心だったザンデ(第一部終了間際、ヒルメスがエクバターナを去る際に教えたものと思われる)、さらにザンデの愛人だったパリザード(ザンデから話を聞かされた)の四人である。そして現時点では、ヒルメスとパリザードの二人のみが真実を知る生者となっている。