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ヒルメス

ひるめす

田中芳樹の小説『アルスラーン戦記』の登場人物。(※ネタバレ記事であるため閲覧注意)
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ネタバレ記事であるため閲覧注意


概要編集

※以下の記述は、田中芳樹の原作小説の内容に準拠する。現在連載中の荒川弘によるコミカライズ版(およびTVアニメ版)では、これとは異なる展開になる可能性があるので注意。



銀仮面卿の本名。作中でアルスラーンの最大の宿敵

先代パルス国王・オスロエス五世の嫡子。

アンドラゴラス三世であり、アルスラーンにとっては従兄弟に当たる。

物語開始時点での年齢は27歳。

異名の通り、普段は銀の仮面で顔を隠している。仮面の下には、白く秀麗な左半面と赤黒く無残に焼けただれた右半面の素顔が隠されているが、それを知る者は少ない。

長身で均整の取れた見事な体格の持ち主。


本編開始時より16年前、パルス歴214年、彼が11歳の時、オスロエス王を継いで即位したアンドラゴラス王により王宮の失火に見せかけて暗殺されかける。

猛火に包まれ、前述のとおり顔の右半面に火傷を負うものの、辛うじて生き残り、パルスを脱出して亡命生活を送る。


この時の出来事がトラウマとなり、以後、無意識に火を恐れる弱点を持つ。

最初の亡命先であった隣国マルヤムでは盲目の第二王女・イリーナと交流、互いに惹かれ合った。

だがイリーナの父・国王ニコラオス四世が隣国パルスの王位継承争いに巻き込まれることを恐れたため、まもなく王宮から追放された。


その後はさまざまな諸国を流浪するが、ルシタニア王国のマルヤム侵攻とパルス征服の野望を知ると、父の殺害、そして王位を不当に奪ったアンドラゴラスに復讐し、前国王の嫡子である自分が正統なパルス王位継承者であるとの思いから、銀の仮面を被って身分を偽り、ルシタニアの客将となって彼らとともにパルスに侵攻した。


その際、国内に潜伏していた蛇王ザッハークを奉ずる魔道師らとも(彼らの最終的な目的を知らずに)手を結んでいる。


第一部開始直前、アンドラゴラスの忠臣であった万騎将カーラーンとその子ザンデに自らの正体と正当性を明かし、彼らの忠誠を得ている。さらに王都エクバターナ陥落後には、王都を守っていた万騎将サームを、侵略者であるルシタニア軍を最終的にはうち滅ぼすことを約束に、配下に加えることに成功している。


周囲に卓絶する知勇の持ち主で、特に武芸についてはアルスラーン配下のダリューンに匹敵するなど、作中屈指の強さを誇る。その一方で復讐の妄執にとらわれるあまり、残虐非道なやり方もいとわず、考え方や言動に視野の狭いところが見られる。



第一部終了時、アルスラーンに敗れ、物語途中で再会したイリーナのみを伴い、王都エクバターナを去る。第二部開始前までは、亡命先のチュルクで国王カルハナの客将として活躍し重用される一方で、妻となったイリーナとひとときの平穏な人生を送っていた。



第二部開始時、懐妊中のイリーナを病気で喪う。以後はパルスの王位奪取のために再び立ち上がり、トゥラーンの生き残りを編成した仮面兵団を率いてアルスラーンと直接対決するほか、かつての腹心ザンデを殺害したミスル王国に対し、仇討ちを兼ねた乗っ取り計画を目論むなど暗躍を続けている。なお第二部では、トゥラーン人の若者ブルハーン(アルスラーン十六翼将の一人、ジムサの弟)が新たな腹心として仕えている。

第一部と比べて、考え方がやや軟化しており、自分がアルスラーンと比べて器量で劣っている点があることや、己の欠点についても自覚するようになっている。


原作者の田中芳樹氏によれば、この物語は貴種流離譚を反転させたものと語っており、本来は主人公に多い貴種流離を主人公の敵も貴種流離の立場となっており、二重の貴種流離譚の物語になっている。



さらにネタバレ記事であるため閲覧注意



アルスラーン戦記』には、作中で明らかになる幾つかの「隠された真実」が存在する。

その中でヒルメスに関する最大の真実は、ヒルメスとオスロエス王は父子では無いというものである。

ヒルメスの母はオスロエスの妃である。

しかし、彼の本当の父親は父方祖父とされている筈のゴタルゼス二世。つまりヒルメスはオスロエス・アンドラゴラスの異母弟なのである。

ゴタルゼス二世は名君であったが迷信深く、若いころに授けられた「パルス王家はゴタルゼスの子の代に断絶する」という予言を信じて惑乱し、その対策としてパルス王家で「これまでアンドラゴラスと言う名の王二人が必ずオスロエスという名の王の次に登極している」偶然を利用して二人の王子をそのように名付けた。さらにその後授けられた予言を盲信した為、オスロエスの妻と関係を持ち、結果生まれたのがヒルメスだった。


だが、この一件で妻を奪われたオスロエスはゴタルゼスに激しい怒りと失望を抱き、アンドラゴラスと相談の末、父である彼を密かに暗殺。そうして王位に就き、ヒルメスとの関係も「異母兄弟」だとは明かさず「親子」だと偽り続けていたのだ。


ヒルメス王子暗殺の真実は、王弟アンドラゴラスが、兄王オスロエスが死の間際に残した「ヒルメスを殺してくれ」、「あの呪われた子を生かしておくな」との懇願に応えたことによるものである。

ヒルメス出生の秘密を知っていたのは、オスロエス、妃、ゴタルゼス、アンドラゴラスの四名のみであり(歴代のパルス宮廷の陰で暗躍してきた暗灰色の衣の魔道士も知っていたか、さらには自身が関与した可能性がある)、最後に残ったアンドラゴラスも口外しないつもりだったと思われるが、ヒルメスが生きていた事を知り、かつ真実を何も知らずに復讐に焦がれている様子を見て、ヒルメスとサームにそれぞれ一度ずつ、この真実を告げている。


それまでヒルメスは自分こそがパルスの正統な王だと盲信し、被害者意識の強さもあって己の出自に偽りがあるなど露ほども疑っていなかった為、アンドラゴラスから真実を告げられた際には大いに動揺し(本当の立場は一番下の王弟である為、王位継承権はアンドラゴラスよりも低かった。その上先王オスロエスの意向があったのならアンドラゴラスは簒奪者などでは無い)、これが今まで歯牙にもかけてなかったアルスラーンとの直接対決で敗北する遠因になってしまった。


物語開始後にこの秘密を知るのは、前述の通りアンドラゴラス王から直接話を聞いたヒルメスとサーム、そしてヒルメスの腹心だったザンデ(第一部終了間際、ヒルメスがエクバターナを去る際に教えたものと思われる)、さらにザンデの愛人だったパリザード(ザンデから話を聞かされた)の四人である。そして現時点では、ヒルメスとパリザードの二人のみが真実を知る生者となっている。


関連タグ編集

アルスラーン戦記 / アルスラーン戦記用語集 / アルスラーン戦記の登場人物一覧

アルスラーン / イリーナ / ヒルイリ


関連人物編集

崇徳上皇「戸籍上の曽祖父が実父で戸籍上の父が叔父」と言うヒルメスに似た因果な出生のエピソードを持った実在の人物。

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