概要
CV:田中敦子(TV版)
弥永和子(劇場版)
タハミーネとは、『アルスラーン戦記』のキャラクター。
アルスラーンの母でパルスの王妃。年齢不詳の妖しい美貌を持つ絶世の美女。性格は常に物静かで謎めいた雰囲気を漂わせている。
夫アンドラゴラスからは深く愛されているが、タハミーネ自身は冷淡な態度をとっている。息子アルスラーンに対しても、ある理由から冷たい態度で接している。
元々はバダフシャーン公国の公妃だったが、公国がパルスに併合された後、アンドラゴラス三世の妃となった。
絶世の美女であり多数の人物から求愛を受けたが、心ない者たちからは「関わった男性をことごとく不幸な境遇へと陥れる」と言われてしまうこともある。
その事実だけを見れば確かに「魔性の女」「傾国の美女」と言われても仕方ない結果になってはいる。だが自分が女であることを武器に複数の男に通じて、それらを操り、国や政治を思いのままに動かそうと権謀をめぐらせたり、自分の利益の為に男を利用して能動的に何かをした、或いはしようとしていたわけではないので決して悪女、というわけではない。
最初はバダフシャーン公国の宰相の婚約者として迎えられる筈だったが、君主である公王カユーマルスがタハミーネに一目惚れして奪い公妃にし、結婚する筈だった宰相は自殺。その後、公国がパルスに敗れ併合された際、当時の王弟アンドラゴラスが見初め妻にしようとするも、その兄にあたる当時のパルス王オスロエス五世が弟との約束を違えて彼女を自分の王妃(後妻)とし、両者の諍いの元となったと噂された。そしてオスロエス五世の死後はアンドラゴラス三世が自らの王妃にしたのだった。
つまりタハミーネは現夫を筆頭に征服者達から望みもしない一方的な愛を押し付けられていただけであり、そのことを考えればむしろ不幸で哀しい女性であるとすらいえる。
真相
アルスラーンに対して終始冷淡な態度をとっていたのは、捨てられた自分の子供を思い出して辛くなるからである。
タハミーネ自身は、生まれた子が男ではなく女だったために、アンドラゴラスが娘をどこかに捨てて、代わりにアルスラーンを買い取って息子にしたと思っていて、娘の行方を常に案じていた。自分でどうすることもできない憤りから、アルスラーンを見ていることが辛く、冷たい態度を貫いていた。
実は、タハミーネが生んだ子は男児、しかも死産(更にいうと彼女はその出産で身体を痛め、二度と子を孕めない体になってしまった)であり、そのせいで彼女が自害することを恐れたアンドラゴラスが別の男児(アルスラーン)を買い取り、そして3人の女児を買い取って銀の腕輪(王族の証と偽った腕輪)をつけてあちこちにばらまいたことが真実である。
エクバターナ解放戦の直前にやって来たアルスラーンと対面して「そなたはわらわの子ではありません」と真実を告げ、自分の辛い気持ちを打ち明ける。
この対面の際、アルスラーンに対して「そなたに詰られ、殴られても仕方ない、甘んじて受けようと思っていた」と告げている。彼女なりの誠実さ故の発言であったのだが、この言葉は実は彼女がアルスラーンの人間性を理解しようとすらしていなかったことを本人に悟らせるだけになってしまった。
そんなタハミーネにアルスラーン※は「今まで母上と呼ばせていただきありがとうございました」と笑顔で礼を言い、戦いが終わった後、隠居した彼女の子供を探させるなど便宜を尽くした。
※心中では自分だけが被害者であるかのように自己憐憫を述べ立てる彼女に対して「勝手なことばかり言わないでくれ」と怒りを感じつつも、失った子の他には心の支えを持たない彼女の心情を慮り、怒ることも泣くことも決してすまい、と決めていたので、笑うしかなかった。