概要
本名はティファナ。シズ・陸とともに旅をする十二歳程度の幼い娘。8巻で初めて登場する。
シズが立ち寄った「船の国」で出会い、数奇な運命により一緒に旅をするようになる。
性格
極めて無口かつ無表情。喋ったとしても断片的で何を言っているのかよくわからないことも多く、極端な例としては「おやすみ」と言うところを「み」としか言わない。
思考の未熟さが現れることもあり、シズが何か困ったことに出くわしたりすると「ばくだんのでばんだな」などと物騒なことも言う。
しかし妙なタイミングで突然、全てを達観したかの如き鋭い指摘や深い発言をすることがありそのたびにシズや陸を驚かせる。なお、彼女の発言は全てひらがなで書かれる。
陸もシズも、彼女の発言のトリガーがいまだによく分からないという。陸曰く「(わかる人が)いたら誰か教えて欲しい」。
また常人のそれを凌駕した記憶力を持っているが、それが発揮される機会は少ない。真っ当な教育の機会を受けたらどんな人間に育つか陸に想像されたこともある。
上記の発言からも分かるように基本的に爆発物が好きらしく、特に手榴弾やグレネードランチャーをやたら好む。しかし破壊や殺戮そのものが好きなわけではない。
味覚もとても変わっており、ガリガリで味も素っ気もなく誰もが「まずい」と評する携帯食料を美味しそうに食べる。
陸のことが大好きなようで、バギーに乗る際はいつも陸の頭の上に顎を載せているほか事あるごとに「お手」をさせようとする。一方陸からは、当初ティーとシズの間で後述のトラブルがあったことで若干嫌われていた。
銀髪ショートカット・緑眼で、後頭部に2本のアホ毛がある。厳しい船の国の生活の中で育ったためかあまり育ちが良くないようで、体格は細い。長袖で裾が足の付け根辺りまである長いシャツとホットパンツを着ており、膝に膝当てをつけている。気温が許す限りこの服しか着ないという。
《《以下にはキノの旅Ⅷ エピローグ『船の国』のネタバレを多分に含みます》》
シズとの出会い
人工島とも巨大な船ともつかぬ(実際は船)海上を動く国家「船の国」に渡し船代わりに入国したシズは、滞在の間この国の抑圧的な体制のもとで過酷な労役を強いられている労働者たちと同じ生活を希望し、労働者たちの住む下層で彼らの労働を手伝うことになった。シズが案内された労働者部族の「長老」は、ティーにシズらの案内役になるように命じた。
しかしその数日後、金属の軋む大きな音を聞いたシズは国に重大な事態が発生していることを疑い、ティーと共に国の各部を調べて回る。その結果、国は長きにわたってろくに整備もされず老朽化しておりそれどころか当初の設計では想定されていない魔改造を無数に施された上寿命を迎えていることが解った。そしてシズは、船の国がまもなく沈没すると確信する。
シズは国の支配をしている「船長」にこのことを伝えどうするつもりなのか尋ねるが、彼の答えは「その時は皆死ぬだけだ」などという冷徹なものだった。シズは力づくで船のコントロールを奪い、国民を助けようとする。
戦闘中、シズは妙な形でキノと出会う。キノもこの国に偶然滞在していたのだった。
成り行きでシズとキノは協力し船のコントロールを奪うことに成功し、船を陸に接岸させ労働者たちを開放した。
しかし「船長」ら指導者の発していた一方的な情報しか知らない労働者たちは国の危機を信じようとせず、陸上での生活を拒んで船の国に戻ることを選ぶ。ティーは、そのままシズやキノたちの降りた浜辺に置き去りにされた。
シズはティーをこのまま連れていくべきではないと考え、生まれ故郷であろう「船の国」へ帰るべきだとティーを諭す。しかしそれを聞いたティーは突如激しく怒り、「わたしにもどるところなんてない!」と叫び(これが彼女の初台詞となった)、隠し持っていたスペツナズナイフを感情のままにシズの腹部に撃ち込んだ。
シズは血を噴いて倒れ死にかける事態となってしまい、自分がとんでもないことをしてしまったということに気づいたティーはもはや生きる術はないと思い、シズの持っていた手榴弾で心中を図る。
しかしキノが驚異的な射撃技術で手榴弾の底部だけを撃って跳ね飛ばしたことで心中は未遂に終わり、シズはキノの手当てにより一命を取り留めることとなった。
意識を取り戻し回復したシズは(事情を知らなかったとはいえ)自分の発言が軽はずみだったと反省し、ティーを連れ一緒に旅を続けることにした。
ティーの正体
ティーの身の上と正体は、「船長」の一味から真相を聞いていたエルメスによって明かされた。
ティーは、国を訪れた旅人カップルの捨て子である。
このカップルは別の大陸に渡るために「乗客」のつもりで入国したが、国が気に入ったのか長きにわたって滞在した。その間に二人の間にできたのが彼女だった。しかし子供を連れて旅は続けられないと考えたカップルは、旅を続けるため自分の娘を捨てたのだった。
その後彼女は「船長」の手下に発見され、「船の国」で特別な存在として育てられた。名前はもはやわからないので、かつてこの国に流れ着いた漂流船の名前から「ティファナ」の名前が取られ、「ティー」と略して呼ばれるようになった。
ティーは、自分が捨て子だということ、まもなく滅びる船の国や「船長」らの正体などあらゆることを知っていた。「船長」が倒された今、すでに国にティーの居場所はなくあったとしても船の国はいずれ沈む。つまり、シズとしてはティーのためを思って発言したつもりの「国に戻るべき」という言葉は、ティーにとっては「自分が再び捨てられる」ことを意味していた。
コミュニケーション能力が貧弱な上、手加減や善悪の判断も未熟なティーはもはや頼れる相手はシズだけだとわかっていながら、怒りのあまり彼を殺しかけてしまったのだった。
ちなみに、現実における名前の由来はメキシコにある治安の悪い都市・ティフアナ(Tijuana)。