- 『キノの旅』の主人公。本稿で記述。
- 『ゼノブレイド』に登場するノポン→キノ(ゼノブレイド)
CV一覧
前田愛(女優)〈アニメ第一作・劇場版&ゲーム一作目~電撃文庫RPG〉
久川綾〈ラジオドラマ&電撃文庫FIGHTING CLIMAX〉
悠木碧〈多数決ドラマ・アニメ第二作〉
概要
モトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)のエルメスと世界中を旅している。12歳になると手術によって子どもを大人に作り替える風習がある「大人の国」出身。
先代のキノに倣い、基本的に1つの国に3日間しか滞在しない。ただし例外もある(電撃文庫RPGや迷惑な国など)。旅の明確な目的は特に無く、旅を続けること自体が実質的な旅の目的である。毎朝、夜明けとともに起きては軽い運動、パースエイダーの抜きや構えや格闘練習、整備、その後にあればシャワーを浴びて、朝食を摂り、エルメスを文字通り叩き起すというライフサイクルを送っている。
無口という訳ではないが寡黙で、最初の一言を発しただけで黙ることも多い。そのため、その続きを多弁なエルメスに勝手に代弁されることがしばしばある。ついでにエルメスにからかわれることも多く、その時はタイヤやらタンクを蹴って突っ込む。表情の変化も少ないが、感情が乏しいわけではない。
びんぼーしょー(エルメス談)で矮躯に見合わず大食いであり、おいしい食事に弱く食い倒れる事もある(「分かれている国」より)。
旅を続けていく中でキノの貧乏性は悪化の一途をたどっており、「何事も経験」等と言って食べ過ぎて倒れたり、ただで食事にありつくために半日刑事のお供をしたり、普通にアルバイトをしているのと大して変わらないのではないかと思えるような行動も増えている。但し基本的に他人を信用していないので、いかに食いしん坊であっても食べ物をダシにした罠にはまるようなことは無い。
料理はとても下手(特に味付け)で、試食した師匠は死にかけたらしい。一応本人も自覚しているが、そこまで酷いとは感じてない模様。
キノという名前は本名ではなく、恩人の旅人の名前を踏襲したもの。
本名は故郷の国を脱出する時に捨てており、最早本人もほとんど思い出せないものになってしまっている。現在でも明らかにされておらず、”キノの誕生日前後のほんの短い期間に咲く、大人の国の外を地平線まで埋める程咲き乱れる赤い花と同じ名前・読み方を変えると悪口になる”という特徴(ヒント)が分かっている程度である。
キノと名乗る以前の子供時代の話においては、時雨沢作品共通の伏字である×××××(5文字以外でも使われる)と名前が表記される。
脱出したは良いものの道に迷い行き倒れ、そこを「師匠」に助けられる。彼女の下でサバイバル術を徹底的に叩き込まれたため、射撃の腕や銃撃戦の中を生き延びる技はまさに人知を超えている(柔道のように段数があり、4段の黒帯だという)。
そのため様々な銃器を自在に操ることができ、拳銃や回転式拳銃はもとより、ショットガンやライフルの腕前も達人級である。大口径狙撃銃を試射した際は職業軍人からも感嘆の声が上がり、1キロ以上先の標的を標的を正確に打ち抜く腕前を見せている。
他人になるべく関わらないようにする(人に関わるとろくなことが無いと考えている)、自分の命を奪うのであらばやむを得ず人を殺すなど、行動パターンも師匠の影響が多少はある。
しかし師匠と異なりあまり欲がないため、基本的には欲のためにわざわざ人を手にかけない。最近では貧乏性が悪化しすぎて弾すらなるべく使わないようにしている節が見られる。
本人も身の危険時には容赦はしないが人を殺すのは好きではないと語っており、たとえ自己の利益が関係する話でも、師匠ほど無慈悲ではなく可能ならば殺さずに済むような手段をとることが多い。頼まれた相手によっては、利益の有無に関わらず人助けをする事もある。またキノが一番嫌いな人間は、殺人を見世物として楽しんでいる人間である。
作中での他人からの評価はまちまちで、冷たい感じとも優しいとも評価されることがある。見る人が見れば今まで何人かの人間を殺してきたこともわかるらしいが、ほとんど悪人に命を狙われやむを得ずというケースが多いため利己的な師匠ほど極端な評価はされていない。ゲームでも「長いこと滞在すると情が移る」と話している。
容姿
「磨けば光るなかなかの美形」「整った良い顔をしている」「目が大きくてはなかなかの別嬪さん」など、容姿には恵まれている様子。とある国では幼い少女に一目惚れされたこともある。
黒い(深い緑で描かれることが多い)短髪に大きな瞳の整った精悍(もしくは端整)な顔つきをしており、白いシャツの上に黒のジャケット(袖を取ってベスト状にできるもの)、春はさらにその上に初代キノの茶色いコートを羽織っている。
ジャケットは服の合わせ目から見て男性用のものと思われる(広義の男装とも解釈可能)。電撃版コミカライズの設定ラフでは「合わせの左右が絵によって違う」と指摘されているが、その電撃版も含め、他媒体展開でも基本的には男性用のものとして描かれている。
運転中等はゴーグルと耳あての付いた帽子を被ることもある。
シャツや下着類は旅先で気候などに合わせて整理や調達を繰り返しているが、ジャケットやズボンが常に同じものなのかは不明。
このような容姿に加え一人称が「ボク」であるため、作中の登場人物にはよく少年と間違えられるが正真正銘の女の子。シズも陸に指摘されるまで、キノを少年だと思っていた。一人称が「ボク」なのは初代キノが男性だった影響によるものであり、キノ自身に性別を偽るつもりは無い。
ただ一見凛々しくとも、半開きの目などどこか抜けている雰囲気がある。劇場版の病気の国で初めて見せた全裸のシーンでは少し隠れていたが胸の膨らみが確認でき、年齢相応のプロポーションは持っている様子。
旅に出る以前は長い黒髪に赤いリボン、フリル付きのエプロンワンピースと少女らしい服装でありこのときはまだ「キノ」ではないので×××××(×っ子)と分けて呼ばれることもある。
旅を始めてからのキノは年を取っている様子が無いが、イラストでの顔立ちは初期は子供っぽく、現在では大人びた顔つきになってきている。これはどちらかというと、10年を越える連載の中で画風が変化したと言うのが正しい見方であろう。
ちなみに「キノの旅」の中で美少女という表記はあまりされないが、公式パロディ作品である学園キノでは美少女と表記されることがある(但し、あれはあくまで木乃という別人格)。
またキノを見た山賊が「かわいいなあ!」を繰り返していた(女の子だと見抜いた)ことがあった。
パースエイダー(銃)について
キノは現在、「カノン」「森の人」「フルート」という3丁のパースエイダーを携帯している。
このほか、多数携帯しているナイフのひとつは仕込み銃になっており、合わせると4丁である。
「カノン」
44口径のリボルバー拳銃。師匠にもらったもので、キノの主武装。
コルト社の軍用リボルバー「M1851」がモデルだと思われるがオリジナルは36口径であるため、44口径のコピー品がモデルの可能性もある。
パーカッション式という準古式銃の一種で、薬莢を用いず、シリンダーに直接火薬と雷管、弾頭を装填する。そのため弾丸の装填にはかなり手間がかかる。
・『装填の面倒臭さ』の参考のため、M1851の装填手順を記す。
- ハンマーをハーフコックにする。
- 火薬缶の先端部を指で抑え、つまみを押して下に向けると1発分の火薬が先端に溜まるので、溜まった火薬を前方からシリンダー内に入れる。(ローディングゲートやスイングアウトは無く、シリンダー露出部から直接入れる)
- 弾頭を前方からシリンダーの先端部分に入れ、シリンダーを回して銃の一番下(銃身と反対の位置)に移動させ、銃身の下のプランジャーハンドルを下に90度折り曲げて、テコの力で弾頭をシリンダー内に押し込む。(使う弾頭が球状のものの場合、弾と火薬の間にパッチという薄い紙を一緒にシリンダーに押し込む)
- 雷管をシリンダーの後部の穴にはめ込んでいく。
- これらの動作を6発分繰り返す。
- 装填が終わった後、シリンダー前方にグリスを多めに塗ることが望ましい。
なお、作中では液体火薬を用いている描写があるため、細部は異なると思われる。
また、M1851は弾速が遅く、構造が脆弱(一般的なリボルバーと異なり銃身が下側からしか支えられていない=強装薬不可)であり、命中率も威力も現代の銃に比べかなり劣る。
加えて、作中でプランジャーハンドルを下げてフォアグリップ代わりにしているシーンがあるが、実銃でこれを行うとプランジャーが傷む上、シリンダーから漏れた発射ガスで手を傷める。
……と、一見するとまるでいいとこなしの銃である。
だがパーカッション式の特徴として、"いざという時に弾丸を自作できる"という利点があり、いつも弾丸を調達できるとは限らない根無し草のキノにとっては見逃せないメリットである。
また弾頭の形状や液体火薬の量を変えることで、イレギュラーな使い方も可能。
「森の人」
.22LR(ロングライフル)弾を使用するオートマチック拳銃で、高精度であり、レーザーサイトとサイレンサーが使用できる。威力は低い。装弾数10発。
「森の人」とは、実銃のコルト・ウッズマン(Woodsman=森の人)のことであり、元々競技用の銃であったが、静粛性から英特殊部隊でも用いられた。
左右が通常のウッズマンとは逆になっている左手用モデルだが、現実にはそのようなモデルは販売されていない。
優しい国に在住する年老いたガンスミスが、若く旅をしていた頃に愛用していた銃であり、
もう旅に出ることもないので朽ちさせるのは勿体ないからとキノに譲った逸品。
このガンスミスはキノの師匠について知っているかのような発言をしており、師匠の相棒説も有力。
「フルート」
ある射撃の盛んな国に立ち寄った際に譲り受けたライフル。その国での正式名称は「五二式国民ライフル分解型」。
セミオートのライフルで、スコープとサイレンサーを装着可能。装弾数9発。キノは狙撃銃として使用している。たまに釣竿としても使用する。
銃身と機関部で二つに分割することができ、持ち運ぶときはその状態でトランクに収納している。
モデルは旧日本軍が試作した「二式テラ銃」だが、デザインや機構はスプリングフィールド「M14」をベースとしている。
デザイナーは秋元こうじ氏で、時雨沢氏との入念な話し合いの末に完成したという。
また、「フルート」とは、主にライフルの銃身などに掘られる溝のことで、軽量化や放熱性向上のために施される。
現実にも、DRDタクティカル社の「パラトゥース」という、銃身と機関部で二分割できるセミオートライフルは存在する。
「仕込み銃」
ある国のパースエイダーマニアから譲り受けた仕込み銃。ナイフと拳銃を組み合わせた代物。
ナイフのグリップ部分にシリンダーがあり、4発の銃弾を装填できる。また銃弾の代わりに小型のレーザーサイトを装填することもできる。
旅の途中で野盗に囲まれ、武装解除を受けた際に使用。パースエイダーとナイフを外すよう命令され、カノンと森の人、ナイフをいくつか外した後に使用し発砲。完全に油断していた野盗は逆襲に遭い、あっという間に打ち倒される。
以降に使用形跡がないことから緊急時用として用いられていると思われる。(出番がないのは使わざるを得ない状況に陥らないから。上記の際はかなり危なかったと振り返っている)。
補足
名前の由来は独語で映画を意味するKinematographを略したKinoから。
カジノゲームにキノと言うのがあるが、これは誤り。(こちらのつづりはKeno)
本名に関する考察
1.「ケイト」説
キノの誕生日は師匠との会話から秋である。秋に群生する赤い花で探すと、『鶏頭(けいとう)』という名前の花が有り、読み方を変えると「とりあたま」と言えることから(とりあたま(鳥頭)は侮蔑の一つ)。
2.「アネモネ(ポピー)」説
イラストとして登場する赤い花に近いことから挙げられている。こちらは綴りのスペル(poppy)の一文字を変えるとpuppy(幼児語で排泄物)と読めることもこの説を補完している。
3.「さくら」説
周知の春の短期間に群生して咲き乱れる花。Ⅱ巻収録の「優しい国」にて、ホテルの娘の『さくら』と名前について話をしていた時「遠くを見る目で黙るキノに、」という描写から(「名前を少し変えると悪口になる」は作中で語られた「さくら→ねくら=根暗」)。「カードキャプターさくら」の主人公・木之本桜にかけて「キノ、元、さくら」というジョークになっている可能性もある。(参考文献:外部リンク)。ただし、キノの誕生日は秋と推定する説が多く、かつ地平線まで埋めるのは草でなければ困難、色が赤とは呼びがたいという批判もある(「秋に咲く」だけならジュウガツザクラ、「地面に群生」ならシバザクラ、が存在するが)。
4.「ヒガンバナ(リコリス)」説
作中の描写通り秋のごく短期間だけ咲く、地面に群生する赤い花ということでよく挙がる。また文字数も伏字通りの5文字。死人花や捨子花といった別名は悪口になるだろう。
5.「ハイビスカス」説
アニメ第一期ではこの花をモデルにしていた。「ハイ、ブス、カス」といった悪口も考案されている。ただし開花期間は長い。
CVについての余談
キノのキャストは数奇な運命を辿っている。
最初に音声化されたドラマCD版では久川綾が担当していたが、この時点ではこれっきりであった。現状は久川が初代ということになる。
初の大々的なメディア化となったPS2ゲーム版・アニメ版以降は、女優の前田愛が担当した。女優でありながらキノのメディア展開ではほぼ前田が演じており、アニメ版第一作から数年経過した後も、映画版第二作や電撃文庫のオールスターゲーム『電撃学園RPG Cross of Venus』(2009年)と出演を継続していた。しかしこのゲームが現状最後の担当となった。
その後、『電撃文庫FIGHTING CLIMAX』では、前田愛が降板という形になったためか、事実上の初代となる久川綾が再起用された。しかしサポートキャラ限定だったため、台詞自体は少なかった。
多数決ドラマ&再アニメでは事実上の三代目となり、現在におけるオリジナルとして定着した悠木碧が担当。悠木はゲーム・アニメ第一作の『優しい国』で登場したさくら役を担当(当時は八武崎碧名義)しており、当時は子役だった。そしてこれがアニメ声優としての道を歩む切っ掛けとなっている。
ちなみに、原作者の時雨沢恵一は、新作アニメのインタビューにて、先の多数決の国の時点で、悠木がかつてさくら役を演じた子役だと気づかず経歴を見て(旧名の八武崎碧と同一人物だと知って)驚いたと語っている。
悠木はキノを演じる際、先代にして現状最も多くの作品でキノを担当し、なおかつ自身も目の当たりにしてきた「前田愛バージョン」を意識した役作りをしていた。が、それを感じ取った時雨沢から「先代を意識しなくても大丈夫ですよ(要約)」と助言を受けて、改めてキノの役を作っていったという。
この偶然を受けて、原作者の時雨沢が書いた第10話の予告では、キノがさくらに対して「何か不思議だ…ボクはかつてキミだったような気がするんだ」と言うパートがある。