概要
天ぷらを揚げる際にタネ(具材)から垂れ落ちた衣が油で揚げられた物、あるいはかき揚げを揚げる際に分離したまま揚げられた端材を指す。
通常であれば「商品価値無し」と見なされる廃棄対象ではあるが、食材の始末に心を砕く大阪の商売人の知恵によって庶民の食材としての立ち位置を確立した。
分類
同一の呼称で一括りにはされているが、先述の通り前者と後者では生産工程が異なり、利用目的によって明確に使い分けられている。また、店舗によっては豆腐店のおからやベーカリーのパンの耳同様に無料、あるいはそれに近い低価格で提供している場合もある。
揚げ玉
主に前者を指す。
ほぼ衣のみで構成されたそれそのものは味わいに乏しいものの、天ぷらに使った油の香り、揚げ油に染み出た具材の風味をかすかに帯びており、どちらかと言えばさっくりとした食感と香ばしさを楽しむアクセントに用いられる。
大阪ではうどん・そばのトッピングの他にも粉物(お好み焼き、たこ焼きなど)に欠かせない副材の1つとして広く利用され、それらのために敢えて衣だけの無味の揚げ玉、イカ天(揚げ菓子としてのイカフライ)の砕片や乾燥オキアミを混ぜて風味を加えた揚げ玉を製造する専門業者も存在する。
天カス
主に後者を指す。
かき揚げという限定条件でのみ生産されるため総量に乏しいものの、海老なら海老が、玉ねぎなら玉ねぎがそのまま揚げられているには変わり無く、見た目に反して味と満足度の面においては揚げ玉を遥かに上回る。
東西を問わずうどん・そばを扱う専門店では刻みネギに次ぐセルフサービスの定番であり、財布事情の苦しい学生が安価で腹を満たすために『天カス丼』(ご飯のみを注文して天カスをたっぷり乗せたかき揚げ丼もどき)を生み出したほどである。
その他
天カスを「大部分が衣のみの天ぷら」という広義的解釈に基づいて見た場合、主に即席カップそばに同梱されているかき揚げも「かき揚げの形をした板状揚げ玉」として天カスの亜種に分類可能であり、大阪の惣菜店などで販売されている「花咲き海老天」(『衣を足して見栄えを良くする=花を咲かせる』を前提に小指ほどの海老に凄まじい量の衣をまとわせてかさ増しした大海老天もどき)も同様である。