黄金夜明
おうごんのよあけ
初出:第1巻
正式には『黄金夜明』。日本での通称は『黄金』。
19世紀~20世紀にかけて活躍した、近代西洋最高の魔術結社である。
禁書におけるイギリスの近代魔術結社「黄金の夜明け」(The Hermetic Order of the Golden Dawn)そのものだが、「G∴D∴」(Golden Dawn)ではなく分裂後の名前「S∴M∴」(Stella Matutina)と表記されている。
魔術結社『黄金』
イギリスを拠点とする魔術結社『黄金夜明』(『黄金』)。後に世界最高と評価される結社は、ウィリアム=ウィン=ウェストコット、サミュエル=リデル=マクレガー=メイザース、名称不明のもう1人の天才魔術師達により創設された。
『黄金』はカバラを中心教義としながら過去の薔薇十字団(ローゼンクロイツ)やへルメス学といった幾つもの遺伝子を「黄金系」という新たな魔術体系に統合し、国際共通規格を生み出した事で知られる。
表の世界では検察官、医者、天才作家など地位の高い者も多い。実際、新約14巻でネフテュスが名前を挙げたイエイツは後のノーベル賞作家である。
何より個々の団員もそれぞれ独立した伝説を持つほどの傑物揃いで、人の身でありながら実力は「魔神」に届き得るとも……。
実際、その気になれば「魔神」の力さえ術式に組み込んで行使する事も可能だが、だからと言って単純なスペックでは数値化すら出来ない「魔神」に勝てるわけでもない。娘々の発言を要約すると、騙し騙され抜きつ抜かれつの力関係らしい。
流麗かつ規則的な『黄金』系の儀式魔術は「仮面舞踏会」と呼ばれる。
現実の魔術でも儀式魔術を仮面舞踏会(マスカレード)等と揶揄するのだが、旗・柱・タロット・四種の象徴武器・シジル等を儀式の小道具に使う『黄金の夜明け』魔術体系はその傾向が特に強いと言える。
本作で『仮面舞踏会の君』という称号で呼ばれる儀式魔術の中心指導者の一人は、象徴武器を表の夜会にそのまま付けていったという破天荒な逸話も残っている。
作中では8=3や0=0など特に説明されない意味不明な数字が出てくるが、これは「位階」というメンバーの身分を示すシステムである。
所属メンバー
フォーチュンやリガルディなど分裂後の人員も含まれているので注意。
- 名称不明の創設者の一人(モデル:ウィリアム・ロバート・ウッドマン)
- ウィリアム=ウィン=ウェストコット
- サミュエル=リデル=マクレガー=メイザース
- ミナ=メイザース(モデル:ミナ・ベルクソン→モイナ・メイザース)
- アラン=ベネット
- アレイスター=クロウリー
- イエイツ(モデル:ウィリアム・バトラー・イエイツ)
- ダイアン=フォーチュン
- アニー=エリザベス=フレデリカ=ホーニマン
- 仮面舞踏会の君(モデル:フローレンス=ファー・エマリー)
- アーサー=エドワード=ウェイト
- ジョン=ウィリアム=ブロディ=イネス
- イスラエル=リガルディ
- ロバート=ウィリアム=フェルキン
- エドワード=ベリッジ
- ネッタ=フォルナリオ
- フレデリック=リー=ガードナー
- チャールズ=ロシャー
ブライスロードの戦い
そんな偉大な魔術師達も、実際には近代西洋魔術の礎を構築しながら「ある男」に阻まれスダンダードを作れなかった。
その男とはメイザースの弟子の一人で『黄金』のメンバーの一人「アレイスター=クロウリー」。後に世界最高の魔術師となり、学園都市の統括理事長に転身した人物。
クロウリーは魔術がもたらす位相の火花(運命と呼ばれる)を憎み、黄金夜明に正面切って静かなる闘争を挑む。それこそが「ブライスロードの戦い」。史実にも記された、黄金夜明を破滅に導いた内乱である。
経緯~終幕
クロウリーはラン=ベネットにより、位相がもたらす運命と自身の娘「リリス」の死を知った。
位相の運命は世界中の人々に薄く広く作用し、それは彼らが使う魔術によって作り出されているものだと…。
この時、クロウリーは定められた家族と運命の奴隷である世界の人々を解放する為に、魔術の殲滅を師ベネットに誓う。
手始めにベネットを、彼に導かれるがまま始末。
後にクロウリーはメイザース派と戦闘し、彼らと完全に袂を分かつ。
1900年、ハマースミス・ブライスロード36番地を「メイザース派」のクロウリーが占拠。
厳密には件の戦闘も「メイザースの血」を採取し、より信頼性の高い血判付き命令書を偽造する為に起こしたものだった。安易な方法に思えるが、既に対立していた二人に決定的な亀裂が入るまでそう時間はかからなかった。
メイザース派とウェストコット派の不和確執を煽る為のクロウリーの暗躍はこれに留まらない。時には団員を襲ってそれを対立派閥の仕業であるかのように偽装し遂には血で血を争う内乱に発展。そして内乱に乗じて魔術組織をロンドンに招来、混乱を加速させた。
そうして迎えた内乱の最終局面、魔術飛び交う中でクロウリーは『黄金夜明』を始末するために動く。羊皮紙により半不死性を獲得していたウェストコットだが、クロウリーの使った「ブライスロードの秘宝」という究極の追儺霊装に無効化されて敗北。その霊装はメイザースとの次戦で破壊されたが、クロウリーは死闘の末に見事メイザースに討ち勝った。
失敗の呪い
世界最大の魔術結社『黄金』はクロウリーの手で破滅した。そしてこの時、クロウリーは黄金に向けて「常に失敗に染まる呪い」をかけていた。
後の時代にも『黄金』の再興を目指す魔術師は何人も現れた。ダイアン=フォーチュン、イスラエル=リガルディ、ネッタ=フォルナリオなど、20世紀でも特に優秀な魔術師が復古を掲げたが、どの人物も呪いの影響で失敗している。
根を失った『黄金』は無秩序に枝分かれし、現代までだらだらと続いている。現時点での『黄金』系最大の結社は、レイヴィニア=バードウェイ率いる「明け色の陽射し」である。