「魔術とは 意志に従って意識の中に変化を起こす学にして術である」
「魔道書の執筆、オカルト雑誌への寄稿、文通に通信教育、講演会まで!旧来のやり方に縛られないマルチな活躍で魅せる美少女霊媒とは私の事なのよーふはははははーッ」
「何でもしますこの方に協力すれば良いんですかひいいわたしとお姉様の仲じゃないですか背中一面びっしりケダモノの傷跡とか洒落になってないわそもそも虎サイズの黒猫ってあれ猫だったんですか普通にネコ科の虎じゃあなくて!?」
人物
CV:立花理香
近代西洋魔術結社〈黄金夜明〉系魔術師の一人。作中では既に故人。
〈ブライスロードの戦い〉や〈ホロス事件〉で壊滅的な打撃を受けた〈黄金夜明〉の復古を目指し、その後継団体に参入した。イスラエル=リガルディ等と共に〈黄金〉後期メンバー(?)とでも表現できる人物であった。
この辺りはまだ深く掘り下げられてないが、史実ではミナ(モイナ)=メイザースのA∴O∴に所属した事もあり、本作でもミナとの関係が深い。
ミナ=メイザースの手厚い保護を受けて〈黄金〉系魔術結社(恐らくA∴O∴)に入団したが、結社内の縄張り争いでミナから黒猫を使った魔術攻撃を受け、その時の出来事がトラウマとなっている。
フォーチュンはメイザース夫人のことを畏怖の念を込めて「お姉様」と呼ぶ。
こう見えて彼女も偉大な魔術師であった。先述通り、魔道書の執筆やオカルト雑誌への寄稿、文通、通信教育、講演まで幅広く活躍し、彼女の革新的な魔術思想はもはや『黄金』の守備範囲を逸脱していたとも…
- 自己情報無限循環霊装(アーキタイププロセッサー)
ダイアンが所有する黒い箱型の霊装。この箱の中に術式を突っ込むと、さながら『伝言ゲームの変遷・混淆』の如く術式の効果・内容がランダムに変化する。
どんな魔術に化けるのかは仕掛けた本人すら掴めないが、逆に言えば敵味方問わず「予測不可能な状況」を撒き散らし、相手の作戦を崩して不利な状況すら一転して有利に持ち込める可能性もある。
フォーチュンの凄い部分はランダム性を常に味方にして戦える「ヒキの強さ」にあり、ラッキーパンチを意図的に誘発して相手の立てた戦略をめちゃくちゃに掻き乱す。
魔術師フォーチュン
ちょっとした元ネタ解説。禁書における本人なので頭の隅に留めておいても損はない。
ダイアン・フォーチュン(1890-1946)は、20世紀を代表する偉大な魔術師の一人である。
黄金の夜明け団(G∴D∴)から現代魔女宗(ウィッカ,現代ウィッチクラフト)の台頭までに名を上げた彼女の功績と言えば、大きく分けると3つ程ある。
- 一つはカバラを西洋人・オカルト初級者にも分かりやすく解説したこと。
- 一つは生命の樹(セフィロト)の一面にフロイトとユングの心理学を導入し、魔術と心理学を融合させてしまったこと。
- 一つは魔術団体の教授方法に通信制度や講演を導入し、より良い方法で普及に努めたこと。
フォーチュンの潜在意識理論などを適用した魔術論が魔術師の何かに触れたのか、彼女以降のオカルト業界には心理学者じみた魔術師が増えてしまった。この心理学の導入により既存の魔術体系に混乱を招いてしまった事こそが、魔術師フォーチュンの最大の功罪と言えなくもない。
彼女の代表作「神秘のカバラー」は、球体(セフィラ)の方に偏った説明に目を瞑ればカバラ入門書としては優れており、フォーチュン系でなくとも資料価値は高い。またフォーチュンの高弟W・E・バトラーは自身の著作でこれを必読の物として扱っている。
代表著書:神秘のカバラー、心霊的自己防衛
経歴
本名:ヴァイオレット・メアリー・ファース。
ダイアン・フォーチュンは著名であり魔法名。
由来はファース家のマーク「Deo non-fortuna(運命ではなく神によって)」。
フォーチュンは幼少の頃から霊的才能に溢れていた。
だが運悪く教職に付いていた20歳の頃に女校長のパワハラに悩まされ、30時間に渡り昏睡状態に陥るほどの心理的ダメージを受ける。
フォーチュンはこの時の事件について、女校長から心理的攻撃(催眠術)を仕掛けられたと後に自身の名著『心霊的自己防衛』で語っている。
この不運な一件の影響により心理学に惹かれ、医療心理研修生となった。卒業後、心理療法士としてしばらく働き、すぐにロンドン大学を受講し、正式にサイコセラピストとなる。
1919年、彼女はブロディ・イネス率いるメイザース派『黄金の夜明け団』こと『A∴O∴』の分派に入会。以降はカバラの神秘思想に没入し、今日の魔術師フォーチュンが醸成される事となる。
メイザース夫人との不和~魔術戦
1920年、フォーチュンは未亡人モイナ・メイザース(ミナ・ベルクソン)の『A∴O∴』(ロンドンのNo.3)に移籍。フォーチュンは黄金の夜明け系の教義には満足し、モイナにも高く評価されていたが彼女との良好な関係は長く続かなかった。
当時の彼女はアストラル旅行に明け暮れ、その頃に〈秘密の首領〉と接触・霊界通信を受け取っている。この時点で二人の仲が決裂する要素は積み重ねっていた。
さらにフォーチュンは予てよりGD系の教授法は劣悪と考えており、見兼ねたモイナがフォーチュンに異なるロッジの設立を提案し、フォーチュンはその案を基に公開集会や雑誌の発行、初級者にも配慮した神智学教会ロッジを設立している。
この時期はまだモイナとの仲はよく、団を跨いで友好関係であった。
しかし、オカルト雑誌に寄稿しだした頃のフォーチュンの著作(愛と結婚の秘教哲学)に対し、モイナがAO系の高等秘儀であると批判し、そこからは魔術史上でも稀に見るキャットファイトもとい〈魔術戦〉の始まりだった。
(モイナから黒猫を使った魔術攻撃を受けていた旨を心霊的自己防衛に記しており、日本でも本書を始めこの魔術戦の事を収録した本がいくつか邦訳、出版されている)
内光協会
フォーチュンは〈内光協会〉(Society of the Inner Light=IL)を設立している。ILの母体は1922年A.O.所属時に発足した上記ロッジである。内光協会では新たに「通信教育制度」を導入し、大成功をおさめた。フォーチュンは生涯この団体を発展させていくことになる。
1925-26年に〈暁の星〉系ヘルメスロッジに参入。これは〈黄金の夜明け団〉系としての正統性を高めるためと言われている。
1927年、医師ペンリー・エヴァンズと結婚。夫は魔術の造詣が深い人物で、もともと団体の運営にも関わっていたが1938年に離婚している。
1946年にフォーチュンは口腔内外傷に伴う敗血症で死亡。
彼女の死後、内光協会にはもはや夜明け団に魅力を覚える者も減り、方針を変更・準クリスチャン団体と化す。これに異を唱えていたW・E・バトラーやガレス・ナイト、ウィリアム・G・グレイなどは別途に独立し、魔術師として大成していく。
補足
フォーチュンは性魔術の研究においても熱心であり、彼女は東洋のタントラ・ヨーガでいう母性原理の重要性を説いている(女性の強い創造力を働かせ、父性の活性化・覚醒にも繋がるという理論)。しかし、彼女は東洋のヨーガをそのまま適用するのは良しとしておらず、カバラを西洋ヨーガとする事を生涯目指していた。
史実のアレイスター=クロウリーとは直接交流したのか否かはっきりしてないが、ケネス・グラントは彼女がクロウリーに充てた手紙を目撃しているとの事で、手紙での交流自体はあったようである。しかしフォーチュンはクロウリーとの関係を各所で否定しているらしい。これはクロウリーのイメージが良くも悪くも強烈で、魔術要素含め自分のイメージを上書きしそうだからという説もある。少なくとも邪悪扱いはしていない。
新約禁書21巻~(※以下ネタバレ注意)
初出:新約18巻回想。本人のセリフ付き登場は新約21巻以降
- 新約21巻で『黄金夜明』メンバーと共にコロンゾンによってタロットで再現された本人が登場。いきなりアレイスター=クロウリーに吹っ飛ばされ、後で可哀想な魔術師扱いされる。
- ロンドン市内で気絶し、うなされていた所を浜面仕上with魔神に拾われる
- 魔神(8=3位階より上)との格の違いに気付いて萎縮する
- とにかくドヤ顔しまくる
- レイヴィニア=バードウェイ「こんなのが世界最大の魔術結社『黄金』のオリジナルだと」
- ミナ=メイザースへのトラウマが発動
もはや威厳もへったくれもない。
もっとも自身より格上の『魔神』にも(絶望的に相性が悪いが)確率勝負で食らいつけるかもしれない事など、彼女の強さが窺える場面も少なからず存在する。ポンコツ要素を遺憾なく発揮していた彼女を見てるとそんな凄い魔術師とは思えないだけで……。
ヒロイン化
そんな彼女は色々あって浜面たちとの奇妙な友好関係に落ち着いていた。しかし別途に進行していた上条一方サイドで、アレイスター=クロウリーが『黄金』の存在を形成する龍脈のエネルギーを無事阻害した事により、フォーチュンの存在も消えてしまう。
同時期に一方通行はクリファパズル545を救った。浜面はフォーチュンを救えなかった。
浜面には魔術の知識もなければ救えるだけの力もない。しかし諦観し、眼の前で消え去ったフォーチュンを諦めきれなかった。
「ダイアン=フォーチュンを取り戻す!!絶対に何があってもだ」
こうして浜面仕上は傍観者から主人公へと返り咲いた。
新約22巻 - 復活
NT22で浜面はフォーチュンを取り戻そうとするあまり敵側(コロンゾン)に付く。コロンゾンは浜面にフォーチュンの復活方法を提示し、浜面もそれに従った。
そもそも、フォーチュンは一世紀の壁を自力で乗り越えたわけではなく、あくまで78枚のタロットをもとにコロンゾンが再現・再構築した存在に過ぎない。曰く、フォーチュンはタロットという魔導書に意図して付けられた傷や折り目で、その僅かな玉瑕こそがフォーチュンを構成する要素とのこと。
だが、通常のタロットは地脈・龍脈から力を吸い上げ、自己修復機能を行使する一種の魔道書の原典である。コロンゾンは機能を空回りさせてから傷をつけ〈黄金〉の疑似人格を構成したが、クロウリーが色々とぶち壊した為、本来あるべき形を取り戻そうとしていた。
コロンゾンが提示したのは、地脈から自動的に吸い上げる力をあえて生命力から変換する魔力に切り替えさせ、人が使う霊装として振る舞わせることで、ダイアン=フォーチュンを復元させるという方法である。
当然、学園都市の開発を受けた浜面では身を削る必要があるが、途中でそれに気付こうが自己犠牲など気にする彼ではなかった。
その最中、アンナ=シュプレンゲル、正確には本物のシュプレンゲルの器を乗っ取ったホロス夫人に操られた滝壺理后と浜面が対峙。浜面が絶体絶命の危機に追い込まれた瞬間、浜面の頭の中に声が響き、本来話せない英語を理解し、自ずと口にしていた。
黒い箱アーキタイププロセッサー、あらゆる魔術や術式を分解して予測の出来ない形に再構築するダイアン=フォーチュンの霊装が現れ、滝壺を半暴走させていた原因の水晶球を飲み込んだ。
『……格好いいじゃん。命がけで恋人助けて、すっかり惚気けちゃってさ』
と言うセリフと共に、滝壺を抱き寄せる浜面と背中合わせに姿を現す。浜面はコロンゾンに従った成果としてフォーチュンを復活させることに成功した。
その後、彼女は最終局面においてコロンゾンの儀式を食い止める一手を放つ。
「我らは『黄金』。長らく続いてきた悪習を取り除き、真に豊かな叡智と生活を授ける魔術結社なり!! 邪なる力に晒されし民が目の前にいる。私はここに皆を編む、誰もが想う身近な誰かを守れる術式 the Hermetic Order of the Golden Dawnとなれッ!!」
(暫定)新約22巻リバース
NTR22では一方通行や浜面たちと共に上条に力を貸し、神裂火織を直接下す。あとがき後のストーリー(422P以降)でコロンゾンの後を継ぎ、イギリス清教・最大主教(アークビショップ)となった。