初出:第1巻
概要
魔族の神でも魔界の神でもなく、「魔術を極めて神となった魔術師」。
有名な神様から無名の仙人・仏格まで様々な魔神が存在し、中には自身の過去の行いが神話として語り継がれている者もいる。紛れもない神格であるため、~人ではなく~柱という助数詞が適用される。
神の名に相応しい位相操作能力を有し、世界創造・破壊・改変まで瞬時に行える。
能力は概ね「全能」の一言で表現可能だが、個々の伝承に由来する力も扱う。
その魂は〈セフィロト〉における上位3セフィラ、或いはそれ以上の高次元領域に到達しており、もはや「肉の器」等に囚われる存在ではない。
かの〈黄金夜明〉系の伝説的な魔術師ダイアン=フォーチュンすら、一見しただけで格の違いを痛感して萎縮し、魔神を位階制度における〈8=3〉以上の存在と断定した。
完成された魔神は「無限」という概念そのものである。
世界の許容量を軽く超越し、ただ存在するだけで世界が砕け散ってしまうため、魔神は今ある世界に影響を及ぼさない特殊な位相(隠世と呼ばれる神域)に身を置き、世界の様子を窺っている。
鏡合わせの分割
ブードゥー教の神「ゾンビ」が開発した魔神用の術式。
魔神が世界を崩壊させずに世界の表層に顕現するには弱体化する必要があった。そのために「鏡合わせの分割」という“無限の存在である魔神を無限に等分して重ね合わせ、世界の認識を騙す”特殊な術式が開発された。
魔神を世界の法則で説明できる程度に弱体化させるだけならまだしも、元が無限のためにほぼ無限に殺しきらない限り魔神は倒せない。「無限に等しいマトリョーシカ」と例えればシンプルに分かりやすい。
共通点
現状で判明済みの魔神に至るプロセスは「死」「欠損」と直結しており、ある魔神は世界樹で首を吊って泉に自らの眼を捧げ、ある魔神は土中で経を唱えながら入滅し、ある魔神は俗世の垢を脱ぎ去るために自ら命を絶って魔神と化した。
さらに、魔神やその関係者は「緑(碧)眼」という共通点も存在する。下記の魔神は勿論、魔神に近いクロウリーやインデックス、オッレルスなども全て碧眼である。
魔神の一覧
北欧神話に名高き主神オーディンその人。本作の主要ヒロインの一角。一般的な老齢のオーディンのイメージと異なり金髪碧(緑)眼の眼帯美少女。
日本仏教の名もなき即身仏。容姿は即身仏のためミイラ。口調も外見も老人だが、元宗教(宗派)の歴史が浅いため魔神の中では若いらしい。
中国の尸解仙。外見は青白い肌に漫遊民族の帽子と中華服を着たキョンシーっぽい少女。
エジプト神話の一柱。外見は銀髪褐色の美女。泣き女。
気まぐれに眼の色を変えるが、本来は碧眼らしい。
ケルト神話の魔神。上半身裸でタトゥーを刻んだ男。アガートラム(銀の腕)の異名を持つが、弱体化後に上里にやられてからは隻腕状態。億兆規模の虫群を操るダルヴ=ダオルを遊び感覚で使った。
ブードゥー教の魔神。通称ゾンビ少女。
魔神を「この世界で説明できる程度の力」に抑える術式を開発したが……。
ギリシャ神話の魔神。極限まで美を追求し、肉体・遺伝子改造にまで手を伸ばした変態ナルシスト。怪物のような姿は他生物の因子や構造を取り込み過ぎたのが原因。魔神以外には声は金属音のように聞こえ、姿を見ただけで徳が低い者は魂を焼かれる。
アステカ神話の太陽神の名前を冠した筋骨隆々の大男。彼はケツァルコアトルと間違えられたスペイン人に対抗するために生み出されたテスカトリポカだが、実際に世界創世も可能な程の莫大な力を持ち、その力を人類抹殺に注いだためオリジナルと同様に太陽神・死神と呼ばれている。
ローマ神話の豊穣神。見た目は黒い西洋喪服に身を包んだ妙齢の美女。彼女の母にあたる人物が使った惑星規模の人口氷河期発生魔術を使用した。似たようなデザインの後発キャラが居る。
クトゥルフの創始者ラブクラフトが原典としていた資料に登場するが、フィクションとノンフィクションが混ざった結果、原典を忘れられた神格。上里には黒い棒人形のように見えた。
準・魔神クラスの人物
魔神ではないが、魔神に近い者。
10万3000冊は全て使えば魔神に届く(※1巻)。よく忘れられるが対魔術の最強格。
オティヌスに北欧の魔神の座を奪われた男。実は彼の元ネタも同じなのだが……まさか。
魔神になれる実力がありながら魔神にならなかった「人間」。ただしその身は既に高次元領域に足を突っ込んでいる。
元ネタでは「科学」の要素を宿すとある近代魔術思想を提唱し、本作においてその魔術思想を科学という形に擬態させた。
第1巻~現行最新刊まで
元々、第1巻ではインデックスの頭に記録されている「10万3000冊の魔道書の原典(オリジン)」を入手し、研鑽を重ねた者が「魔神」に到達出来ると言われていた。
魔術とは極めれば1+1の答えも、生と死も、あらゆる法則さえも組み換えてしまえる。
インデックス曰く、
「10万3000冊は全て使えば世界の全てを例外なくねじ曲げる事が出来る。私達はそれを魔神と呼んでるの」。
(なお、アニメ版では魔神に関係する台詞だけカットされている)
その後、魔神関係の設定・エピソードはSS2巻で魔神のなり損ない「オッレルス」が登場するまでは一切出てこない。
旧約22巻でオッレルスが本編に登場を果たした際、「オティヌス」に北欧の魔神の座を奪われている事が明かされた。
北欧の魔神編(新約2~新約10)に突入後、オティヌスが倒すべきボスとして君臨。色々あってオティヌスで魔神編終了…かと思いきや、新約10巻ラストで完成した魔神達がぞろぞろと出てくる。余談だが、ちょうど禁書含む作者の著作でパワーインフレが始まったのもこの時期である。
無茶苦茶長いが、終盤は傑作と評価されるエピソードの一つなので頑張って追って頂きたい。
新約12巻ではこれまでのインフレを修正するかの如く大幅に弱体化(相手も魔術師としては最強格なので仕方ない事ではあるが…)。
さらに新約13巻では自分たちの自殺願望が生み出した対魔神特化能力を有するキャラクターが登場。魔神の殆どが表舞台から退場してしまった。
新約17巻で、その退場した魔神達が登場。詳細は省くが某少年の“帰還”を後押しした。
新約19巻でどこぞの大悪魔に釣られて二柱ほど上条達の世界にうっかり戻ってきてしまった。以降、その二柱は面白そうだから(観察のため)離れ離れになった浜面サイドに同行している。
他の鎌池作品との関係
- 鎌池作品同士のセルフコラボ作品の設定だと魔神は『未踏召喚://ブラッドサイン』の基準で言う〈神格級〉の枠に入るらしい。ブラッドサインでの〈神格級〉はその名の通りの神格、つまり過去の近代西洋魔術など「第二の召喚儀礼」の時点で召喚・交信できた「神」と呼ばれる存在。
- ブラッドサインでは神のさらに上に〈未踏級〉が存在し、同作のメインヒロインである「白き女王」がオティヌスを上回る事がセルフコラボで言及された。
- 後にブラッドサイン本編でも神格級の●●●●●が喚起されている(禁書と同一存在かは不明)。
- 同作品の〈サウザンドイーター〉も人が神々の領域に到達して神格級となる点で、魔神と類似した設定と言える。恐らく大元の思想が同じだからだろう。詳しくは「生命の樹 上昇」「神との合一」等で検索。
ちなみに該当するセルフコラボの内1つはネットで読める。こちらからどうぞ。
格付けと勝敗
※ここから下はネタバレを含みます。
良くも悪くもバトル物と切り離せない最強議論において、魔神はその規格外すぎるスペックから現状とあるシリーズ最強の存在として君臨している。
しかしそんな魔神も作中では(弱体化状態とはいえ)何度か敗北しており、理論上は魔神と同等、もしくは魔神を死に追いやったキャラまで存在する。
例えば、
>>本人は「人間」であるため魔神に劣るが、事実として慢心の隙を突いて全魔神を弱体化に追いやっている。
さらに弱体化+手加減状態とは言え新約22巻で娘々相手に勝利。
>>対魔術式駆動鎧というアレイスターの魔術(Magick)をぶっ放す兵器を使い、ゾンビと弱体化状態の僧正を消滅させた。
>>対象を新天地に送り飛ばす能力「理想送り」を宿している。これによって殆どの魔神を新天地に追放した。...まぁ理想送りの成立経緯からして、上里が勝ったというよりは魔神が自殺したという方が正確だが。
>>理論上は魔神に対抗できるスペックを持つらしい。コロンゾン同様、根本的な軸が異なる彼等からしてみれば、魔神はセフィロトを登るしか脳がない猿(人間)と変わらないとのこと。
なお魔神は基本的に元人間なので当然といえば当然であり、ニュアンス的には負け惜しみに近い。
>>弱体化状態とは言えネフテュスと痛み分け。人造の樹(クロノオト)に関しては現状描写が少なく未知数である。
ようは「"強すぎる存在"ほど慢心し易い」というジンクスを誰よりも強く受けてしまっていると言え、対抗手段を持つ一部の例外なら不意打ちや隙を突くことで勝てる可能性がある、という感じである。
もう少し対象を広げて他の鎌池作品にフォーカスしてみると、
>>鎌池氏の長編4作目『未踏召喚://ブラッドサイン』のメインヒロイン〈白き女王〉が属する領域。セルフコラボ2作品で力関係が確定しており、共演した神格級のオティヌスを上回るらしい。
>>つまり「色彩なき童女」など特化し過ぎた例外を除くと、白き女王>他の未踏級>魔神含めた神格級というのが鎌池作品の格付けとなる。
関連タグ
黄金夜明 エイワス コロンゾン 上条当麻 幻想殺し 上里翔流
未踏召喚://ブラッドサイン:魔神に関しては説明した通りだが、扱うテーマがテーマなだけに他にも共通点がかなりある。
インテリビレッジの座敷童:高い評価を得た世界改変エピソードが存在し、最初にその設定が登場した巻の執筆時期も北欧の魔神編と近い。
デウス・エクス・マキナ:概念としてはこれに近い。