汝の欲する所を為せ、それが汝の法とならん
(Do what thou wilt shall be the whole of the Law)
アレイスター・クロウリーのセレマ神秘主義
魔術師アレイスター・クロウリーによる神秘主義であり新興宗教。聖守護天使エイワスの宣託を自動筆記した〈法の書〉(Liber AL vel Legis)を聖典とし、真の意志を見出す近代魔術思想である。
元を辿ればギリシャ語のコイネーで「意志」を意味する言葉のラテン文字転写で、フランソワ・ラブレーの文学作品『ガルガンチュア物語』に登場する「テレマ」と呼ばれる僧院と、その思想「汝の欲する所を為せ」から引用されている。
セレマは〈法の書〉に記された以下の思想に象徴される。
- 汝の欲する所を為せ、それが汝の法とならん
- 愛は法なり、意志下の愛こそが
クロウリーはこの思想を補強する上で〈法の書〉第3章60節「汝の欲する所を為せを超える法はない」を抜粋している。
3つの時代
セレマ思想にはエジプト神話の3柱の神の名を引用した時代区分がある。
- イシスのアイオーン:キリスト教より前の異教の時代
- オシリスのアイオーン:キリスト教が支配する停滞の時代
- ホルスのアイオーン:神に隷属する時代が終わり、人間一人一人が神となる時代
戴冠せしホルスの時代はクロウリー論における「水瓶座の新時代」(アクエリアンエイジ)であり、〈法の書〉が記された1904年に始まった。
セレマの目的
全ての人間には人生における欲望・欲求とは異なる「目的」がある。
これをセレマでは「真の意志」といい、真の意志を発見し、それに従って生きることで人間は神と化す、と考えられている。「真の意志」は個々人にとって唯一無二の存在である聖守護天使と同一視された。
クロウリーはこのエゴより解放される真の意志を辿る業を〈大いなる業〉───ヘルメス主義や錬金術の思想───に分類し、その修練ための儀式や意志下の全ての行いを〈Magick〉というスペルで表した。
神々の春秋分点
セレマ成立まで
※「エイワス」を参照
〈銀の星〉団~テレマ僧院
クロウリーは1907年にセレマ系魔術結社〈銀の星(A∴A∴)〉を設立した。
この頃の同志はクロウリーの師匠格にあたる術師ジョージ・セシル・ジョーンズや、機動戦の提唱者の一人として知られるジョン・フレデリック・チャールズ・フラー大尉。
後にヴィクター・ニューバーグを加え、彼と共にA∴A∴機関紙「春秋分点」を発行したり、1912年に魔術結社「東方聖堂騎士団(O.T.O.)」と接触するなどの活動を行い拡大していった。
※春秋分点は1909年から1913年の春秋に発行された。一部内容が〈黄金の夜明け団〉の秘儀に当たるとしてマグレガー・メイザースとの裁判沙汰にまで発展した事も。
※O.T.O.は性魔術で有名な結社で、後にOHO(団の外なる首領)と称するクロウリーの指導下となった。日本支部のO.T.O.Japanがある。
クロウリーは1920年にイタリア/シチリア島セファルーにて〈テレマ僧院〉を創設。しかし、数年後に僧院内で死者を出し、ガサ入れが入って遂には時のムッソリーニ政権により閉鎖させられた。
現代でのセレマはO.T.O.、A.A.の分派に枝分かれしつつ各地で存続している。
セレマの宇宙論
セレマの神格はエジプト神話が元になっている。
セレマの宇宙論における第一神は女神ヌイト。無限の空間、無限の星々と言われ、万物の源と考えられている。
第二神はヌイトの補完者にして配偶者たるハディート。北の女神ヌイトに対する南の神。全ての存在の中心点であり、無限小へと収縮を続ける球体。
そして、第三神はヌイトとハディートが結合して生まれるラー・ホール・クイト。戦いと復讐の神であり、鷹頭の男性として表現される。二重神ホルスの一面。
クロウリーによると、ヌイトとハディートは未顕現であり、両者が結合して生まれるラー・ホール・クイトにより、全ての事象が発生すると考えられている。
その他の神格として
が存在する。
関連タグ
とある魔術の禁書目録:アレイスター=クロウリーやエイワスのほか「法の書」「イシスの時代」「オシリスの時代」「ホルスの時代」等のセレマの概念が多数登場する。作中ではテレマ表記。
学園都市(とある魔術の禁書目録):形を変えたテレマ僧院。科学サイドはテレマのカモフラージュに過ぎない。