未踏召喚://ブラッドサイン
みとうしょうかんぶらっどさいん
鎌池和馬の10周年記念に発表されたライトノベル作品。
代表作「とある魔術の禁書目録」の流れを汲む正統派シリーズ。…正統派?
本作では魔術という技術の内「召喚」のみを取り扱う。ただし通常の召喚と違い、より洗練・研ぎ澄まされたシステムを用い、その方法で神話の神々のさらに上位の存在「未踏級」を呼び出せるようになったという設定である。
極限の冒涜である「召喚儀礼」を司る召喚師の少年「城山恭介」が主人公、召喚物「白き女王」がメインヒロインとなっている。問題はこのメインヒロイン。言動があまりにも強烈で、良くも悪くもインパクトに残りやすい。そして何より強い。
また、主人公とメインヒロインの二人は基本的に「敵」同士なのだが、ヒロインとの実力差が開き過ぎてもはやイジメにしかなってない。
一応、「人」としては主人公も最強設定である。禁書読者にはヒロインがあのオティヌスよりも公式設定で強いといえば伝わりやすいかもしれない。
今作は主人公の城山恭介が各巻ごとの「アリス(ヒロイン)」を助けていく、という構成になっている。そんな中で全事象の中心たる最強のメインヒロイン「白き女王」をどうやって上回れるのか、敵対している「白き女王」との関係はどうなるのか、最終的な着地点を探っていく。
『神々のさらに奥に潜んでいた者』さえ自由に呼び出す第三の召喚儀礼。
それを扱う最新鋭の召喚師の中でも一等の実力を持つ少年がいた。『不殺王<アリス(ウィズ)ラビット>』、城山恭介。
その最強の少年召喚師が抱える致命的な弱点は唯一つ。少女から発せられる『呪いの言葉』。
───たすけて
本作の主人公で召喚師。異名は『不殺王<アリス(ウィズ)ラビット>』。
フリーダムに所属するアワード902の凄腕召喚師だが、基本的に「白き女王」には歯が立たない。女王からは「あにうえ」と呼ばれる。トイドリーム内で最も普及しているフード付きパーカーとスポーツブランドのジャージを常に着用している。ファンからの通称は「あにうえ」。
「くそっ。まさかこんな所で『呪いの言葉(たすけて)』を聞くだなんて」
本作のメインヒロイン。
正式には『穢れなき真実の剣持つ「白き」女王《iu・nu・fb・a・wuh・ei・kx・eu・pl・vjz》』
音域の存在しないコスト21。神話の神々をも超える『未踏級』の「白」を司る少女。
神々の「理」を束ね天の歯車を回す全未踏級を叩きのめし、世界のあらゆる法則を自らの支配下に置き、全事象の中心点となった最強の存在。世界の破壊、因果律の変動、時間遡行、基本的に彼女に出来ないことなど無い。
召喚儀礼の世界では崇拝されており、彼女の信奉者は世界に数多くいる。ただし、本人は恭介が大好きなので彼以外には見向きもしない。若干(?)ヤンデレ気味で、恭介を絶望させることを楽しんでいる節がある。
「わたくしはあにうえ以外には一ミリも興味がないものでして」
召喚師の少女。召喚士の忘れられる特性に打ちのめされ、外の世界にいることをやめた。恭介のことを「お兄ちゃん」と呼んでいるが血の繋がりはない。小柄なAカップの体型。
恭介のことは「恭介ちゃん」と呼び、恭介からは「リューさん」と呼ばれている。恭介には人工霊場を形成する励起手榴弾などを提供している。かなりグラマーなお姉さん。
悪魔をイメージさせる装飾を身につけた召喚師の女性。
とある計画の被験者の一人で、同じく被験体の恭介とは幼少期の頃からの知り合い…というかかつては計画上の姉弟関係だった。
他の主要キャラはネタバレになるため割愛する。
- 召喚師
「召喚儀礼」を扱う者・職業。基本的に「現代の召喚儀礼」は召喚師単独では出来ず、「依代」と契約を結ぶ必要がある。
戦闘中は「ブラッドサイン」を使用して「被召物」の変化・錬成を行う。「防護円」という特殊な加護を得ており、ダメージを受けることはまずない。
恭介のような凄腕召喚師は相手の行動に介入して戦闘をより優位に進める事が多い。
- 依代
召喚師と「血の契約」を交わし、この世ならざる「被召物」をその身に下ろす者・霊媒。
ただし「被召物」の性質を制御することは困難で、本人が出来る事といえば照準を合わせる事だけ。召喚中は「被召物」のコア「人郭」になる。
- 召喚儀礼
下記「召喚儀礼」を参照。
- 被召物(マテリアル)
下記「被召物」を参照。
- トイドリーム35
作中の主な舞台。財政破綻に陥ったある街がエンターテイメント外資系企業「トイドリーム社」資本によって巨大な国際レジャー施設都市へと生まれ変わった姿。
- アワード
所属する組織が契約した未踏級の一角『大三角』から、言動によって魂に直接刻まれる称号。形なき報酬。
厄介なことに召喚師は100のアワードを獲得すると周囲の人々から認識されなくなる。正確に言えばこのルールが適用されるのは召喚師と関係ない一般人のみで、対象の視界に入ると通常通り認識されるが、視界から外れた瞬間に「忘れられる」。肉親や親友でさえ、まるでいなかったかのように記憶が自動的に補完されてしまう。
1000のアワードを獲得した人間(通称:サウザンドイーター)は、住む世界が逆転して既存の神々と同列の扱い(神格級)となり、新たな神話を紡ぐ事になる。
その名の通り神話の神々を「召喚」する技術(※喚起は含まない)。
基礎となったのは第一の召喚儀礼こと「100%の確率で自己の内面を上書きする技術」。例えば度が過ぎた空想・妄想、雄叫びや極限の集中状態。そのような酷く抽象的な感情は、時に歴史を変動させる程の力に変換される。これらは紀元前から存在する人間が内に秘めた力である。
やがて人はこの世ならざる者と具体的な交渉を迫る方法「第二の召喚儀礼」を獲得。自己の精神を心理学で説明不可能な領域まで励起させ、神話の神々に交渉を迫り、人智を超えた現象を操る。その技術を「魔術」…とりわけ「召喚」と表現した。
そして本作で活躍するのが下記の「第三の召喚儀礼」。第二の召喚儀礼の内、「黄金の夜明け」魔術体系などをベースに組み立てられた最新の召喚儀礼である。
第三の召喚儀礼
第三の召喚儀礼はブラッドサイン式とも呼ばれる。過去の召喚儀礼より遥かに簡略された手順で複雑なルールのもと高度な召喚を行う。
まず「励起手榴弾(インセンスグレネード)」を使って召喚のフィールド「人工霊場」を構築。その内部に現れる「白刺」という白い球体を「薔薇」という球体にぶち当て、出現する216枚の「花弁」をスポットに打ち込んでいく。この時、白刺へ唯一干渉可能な道具が「契約に用いる血の筆跡(ブラッドサイン)」と呼ばれている。
そもそもの薔薇とは、『とある魔術の禁書目録』にも登場する西洋魔術結社『黄金の夜明け団』が用いていた薔薇(花弁)という象徴である。
ただし、薔薇のフォーマットがヘブライ語22字なのに対し、それを発展させたブラッドサイン式では英語アルファベット26字。
これらを高音、中音、低音、極低音にそれぞれ分類し、スポットに花弁を入れて被召物のコスト(簡単に言えば強さの基準)を決定、音域の構成を組み換え次々と変化させていく。
召喚師は契約した「依代」に降ろす高次元存在の「錬成」を繰り返す。
やがて神格級、その上を行く未踏級という高次元存在に辿り着き、相手の被召物を破壊する。
ただし召喚師は基本的に防護円に守られているため無敵なので、よほどの凄腕召喚師ではない限り被召物同士の戦闘になる。
これが今作の戦闘の基本だが、肝心の恭介がかなり強いため、どうしても応用とか抜け穴を突くことが多い。
召喚と喚起の違い
近代魔術において「召喚と喚起」は明確に区別されている。自己を霊媒として「内」に直接降ろすのが召喚、神話の神々を自己の「外」に呼び寄せるのが喚起である。
物語後半のネタバレになるので伏せるが、本作で使われる「喚起」は「従来の召喚儀礼」とは全くの別物で、かの天才魔術師たちが使っていた方式に限りなく近いことが示唆された。
異世界に住む人知を超えたこの世ならざる高次元存在。
- 規定級
人が神格級へと到達するために異界に埋め込んだ人工被召物。
- 神格級
既存の神格や怪物。1000のアワードを得たサウザンドイーターも含まれる。
セルフコラボ作品の設定では『とある魔術の禁書目録』の「魔神」や『ヴァルトラウテさんの婚活事情』の北欧神話の神も含まれ、本編でもヴァルトラウテ(ヴァル婚と同じデザインだが本人かどうかは不明)が召喚されている。
- 未踏級
神々を超える最強最上の高次元存在。女性の姿と色を象っている。
彼女たち未踏級は異世界の神々の法則を支配・管理し、史上最強の「白」を封殺する役割がある。しかし、その法則は「白」が全未踏級を叩きのめして平伏させたことで失われ、現時点であらゆる法則は「白」に従属している。
「赤」「黄」「緑」は大三角と呼ばれ、3つの組織と契約を結んでいる。
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