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幻想殺し

いまじんぶれいかー

ライトノベル『とある魔術の禁書目録』の主人公・上条当麻に宿る能力である。
目次 [非表示]

「その幻想をぶち殺す!!」


概要編集

上条当麻の右手に宿る正体不明の力。自らの右手に触れたあらゆる異能の力を全て無効化してしまう能力であり、作中でも屈指のブラックボックスたる存在。


『異能』の定義は超能力魔術の他、神の奇跡なども含まれ、それが有益なものであろうが有害なものであろうが問答無用で打ち消してしまう。

学園都市230万人の頂点に君臨する「レベル5」の超能力だろうと、致死級の魔術であろうと関係なく消去できる効力を秘めている。しかし同時に上条が「レベル0」と判定されている要因にもなっている。


つまり上条は見かけ上「レベル0」ではあるものの実質的には完全な無能力者ではない(学園都市の計測システムが完全な無能力者とみなしているだけ)


劇中において『原石』と言われるタイプで、上条の意思ではオン・オフを切り換える事は出来ない常時発動型の能力。

そのため、触れた存在にかけられていた魔術を意図せずに打ち消してしまった事も度々あり、本当に消したくない異能には右手を近づけないよう心掛けている。


効果対象と弱点編集

その性質上、全身に作用する事で効果を生むタイプの異能(空間移動など)も上条には全く効かず、『御使堕し』のような超広大な範囲が対象の魔術にも発動する。しかし右手の範囲にしか影響しないため、無効化の効果は持ち主である上条にしか反映されない。

また、記憶操作など脳に影響している類の異能は、右手で頭に強く触れれば解除できる。


上記の通り有益な異能も打ち消す性質上、回復魔術などを施しても効果が右手に達した段階で消えてしまい、治療には現代医療に頼る他ない。

だが例外も存在し、右腕が切り離された状態であれば、治癒魔術を恩恵を受ける事が可能となる。

緊急手段として魔術による治癒を必要とする場合、まず右手を切り落としてから回復魔術を施す。だが、切断時の痛覚や失血を抑える事は出来ないので本当に命が危険な状態でしか行えず、そこまで強力な治癒を施せる人物は作中でも数名しかいない模様。


他の欠点として効果範囲は右手首から上(ようは右手だけ)であり、さらに「異能」に分類されない力を無効化する事はできない(銃撃、スタンガンでの電撃など)

そのため超能力や魔術に依存した攻撃手段しか持たない相手には大抵有利となれるが、異能を必要としない肉弾戦も得意とする者や近代兵器を用いて戦う敵に対しては何の効果も発揮しないため、勝ち目は一気に薄くなる。


加えて異能を使って起こされた二次的な物理現象も無効化できない。

例えば御坂美琴が発生させた磁力の宿っている砂鉄のムチは右手で触れれば『異能』である磁力が解除されるため粉状の砂鉄に戻せるが、一方通行がベクトル操作で発射した砂利の散弾は既に発射された後であるために運動エネルギーしか宿っておらず、それは『異能』判定ではないので無効化できない。

ただし上述の砂鉄や超電磁砲を防いだ例にあるように、異能によって引き続きベクトルが働いている場合にはそのベクトルごと消滅する。


たとえ異能が関わっていたとしても、すでに歪められた体や物を元に戻すことも不可能。

例を出せば能力者は科学的な方法で脳を変質させ能力を得たが、右手で触れても彼らから能力は失われない。他に魔術の炎で焼かれた灰なども、幻想殺しでは元の形に戻せない(そんな事が可能なら上条は自分の破壊された記憶も直せる)

同様に魔神に触れても彼らが元の人間に戻る事はない。その一人であるネフテュスは自身に打ち込まれた弱体化術式の解除を試みたが、既に魔術的な現象が終わった後であったため何の効果もなかった。

これらの異能による事象が終了したタイプは「完結した異能」と呼ばれる事がある。


異能を打ち消す時の処理能力には限界があり、無効化が可能でも一度に多量の現象を処理しようとすると消去に時間がかかり、右手で受け止める形になって無防備となってしまう。

後に上条はこの弱点を「干渉」の性質として利用する事で、異能の力を掴み取ったり向かってくる光線を殴って軌道を変えたり、沢山の異能の力の一つに作用させて意図的に現象の連鎖崩壊を起こし、僅かな安全地帯を無理矢理ながら作り出したりしている。


能力の核が別に存在する異能に関しては、核に触れない限りは破壊する事は出来ない。

それと同様に外部から力を常時供給される類いの異能に関してはどうする事も出来ないが、溜まった力を打ち消す事で一時凌ぎをするといった応用が可能。

作中では打ち止めに蓄積されたウイルス情報を打ち消して症状の緩和を行った。



インデックス曰く、上条が今に至るまで辿っている不幸極まりない人生もこの右手が自分に来る幸運を消していることで訪れているらしい。

ただし何故か父親譲りの女性運や強運だけはとてつもなく恵まれている。言葉を借りるなら前者は女性から酷い目に合わされる前兆、後者は死んで楽になれず苦しみ続ける、というタイプの不幸なのかもしれない。


“魂”や“生命力”、“地脈・龍脈”といったオカルトではあるものの自然のままに存在する力だけは消さず、出力がほぼゼロにまで低下する性質がある事も後に判明。そのため真っ当な生命にとっての死神となってしまったり、誤って地球を破壊してしまうなどの心配はない。

バードウェイ曰く「調和の取れた破壊を実現する」らしく、厳密に言うと打ち消してはいるのだが、超能力や魔術といった異常な値を均一化させる事に比べると、自然の力などの最初から均一なものに対してはそれほど効力を発揮しないとのこと。

なお、こういった天然モノの力は、あらかじめ環境や状況に合致した設定を施される場合が多いようだ。(例:『原石』)


一方、上述の限界からか世界全部を丸々作り変えるような“出力∞”の力に対しては全く敵わず、上条の存在を維持するくらいにしかその効果が発揮されない。

そのため、コンビニ感覚でそれを成してしまう魔神達が登場してからは、精神・能力両方の意味で“切り札”的要素は失われていった。


右手の奥に潜むモノ編集

竜王の顎/透明な何か編集

※詳細はリンク先を参照。


右腕が切断・破壊された場合、断面から竜王の顎または目に見えない「謎の力」が発生し、それらの現象が収まると共に右腕が再生する事が幾度も確認されている。

右手だけを奪っても「幻想殺し」の力は奪われた右手から急激に失われ、新たに生えてきた右手に再び宿るため、上条からこの力を(一時的にでも)失わせる事は絶対に不可能となっている。まるで「上条当麻の右手にこそ本物の力が宿る」という絶対的なルールが存在するように。


また新約7巻にて恋査(#028)が自身の機能を使用して幻想殺しを使用しようとした際、解析不能な作用でボディの大部分が破損した事もある。

この事態をアレイスターは新約20巻で「よりにもよって君の内側と繋げようとするとは」と言及している。彼の『計画』に必要不可欠なものである事、そして何かを目撃したフィアンマがアレイスターに口封じのために襲撃されるなどの描写からも、その本質はやはりただの無効化能力という訳ではないのだろう。


ドラゴン編集

上条に潜む力はこれまで幻想殺しに関連すると推測されていたが、リバースでは上記の神浄の討魔と共に別種の力である可能性が提示されている。


解釈・考察編集

無印の頃から度々触れられ、新約に入ってからはその機会が増えていき、以下のような実態や歴史が明かされるようになっていった。

ただし、いずれも「それぞれの立ち位置から解釈し結論づけたもの」に過ぎず、確証は得られていない。


10万3000冊もの魔道書を記憶し、世界中のありとあらゆる魔術を記録・解析するインデックスが語るには魔術ではない


あらゆる能力者が発するAIM拡散力場の集合体という存在である風斬は、超能力でも説明できないという事を口にしている。

もしも幻想殺しが超能力ならば、それから発せられるAIM拡散力場で自分は消滅しているはず、とのこと。


学園都市統括理事会の一人貝積継敏のブレインを務める雲川は、彼との会話で幻想殺しに触れていた。

幻想殺しは『原石』の類だと言った貝積に対し、「単に『原石』というカテゴリにまとめない方が良い」と自身もよく分かっていないながらも愉快そうに雲川は告げた。


神の右席』という特別な肩書きがあった故か、幻想殺しの正体について彼なりの答えを得ていた様子。

曰く、上条当麻の幻想殺しは未完成で、本来の性能が回復していない

しかし、あらゆる魔術を打ち消すその効力と、それが『右手』に備わっている事には大きな意味がある。さらに記憶を失う前の上条当麻ならそれを知っていたと受け取れる言い方をしていた。

残念ながらその答えを口にする前に横槍が入り、物語からも退場してしまったため、二度とテッラが上条の前に現れる事は無くなってしまった。


だが、オッレルスが言うには「左方のテッラは、あるいは右方のフィアンマよりも幻想殺しの正体を知るために近かった人材」と評されている。

『神の子』を人の手で処刑するという力関係の矛盾に目をつけた着眼点と、そこから『光の処刑』という独自の術式を構築した、という経緯にオッレルスは何かしらの見当を得ていた模様。


上条当麻と同じ特別な右手を持ち、その身に『世界を救う力』を宿していたフィアンマは幻想殺しを「神聖なる右手が自然と備えてしまった浄化作用の一種」と解釈していた。

彼が重要視していたのは「上条当麻の右手そのもの」であったため、それに宿る幻想殺しはただの付属品ぐらいにしか認識していないようであった。

この事からも上述のテッラがフィアンマよりも幻想殺しの正体に近かった事が分かる。


かつて魔神に成り損なった男、オッレルスは上述の推測を軽くまとめつつ、次のような解釈を上条に告げた。


「君は、というか、君の右手に宿っているその力は、全ての魔術師の怯えと願いが集約したものだと言っても良い」


世界を思うままに変えれるほどの力を持つ魔神だが、もしも変えた世界を元に戻したかった時、何が元の世界であったのかが分からなくなってしまう懸念がある。

そんな可能性は怖い、何か元の世界の基準となる保険が欲しい。その魔神の怯えと願いが魔術師に影響された結果、幻想殺しが生まれたとオッレルスは推測している。

さらに、どうやら時代や神話のターニングポイントでは幻想殺しによく似た力が確認されているようで、それは武器となったり壁画となったり洞窟となったり、様々な形となって時代のあちこちに出現した。ただし幻想殺しがそれらと地続きの『一つの力』なのか、別の形に組み上げられて自然発生した『複数の力』なのかは分からない模様。


完全な魔神である僧正は、幻想殺しによって運命論の外にいる上条を世界の採点者と称した。さらに幻想殺しは上条当麻の本質(魂)に吸い寄せられたとも口にしている。

ただ彼ら魔神は、どちらかと言えば上条当麻そのものを求めており、幻想殺しはそのオマケという認識のようだった。


もう一つの特異な右手、理想送り。この力について魔神のネフテュスは、上条当麻がオティヌスの『理解者』となった事で幻想殺しの元となった魔術師(魔神)の願いが洩れ、それが上里の何かに惹かれて宿った、と言った。

しかし「細かい検証は済ませていない」とも述べており、実際上里が右手に違和感を覚えた時期と上条がオティヌスの『理解者』となったタイミングが一致しない事から、他の者の解釈・考察と同じく確定ではない。


一方その力を宿す上里本人は、理想送りを疎ましく思っていたのもあって、右手よりは自身の周りに目を向けていた。

理想送りの問題が一段落した後の上条との会話では「自分の周りにいた女の子達が急に異能を身につけたのはやはり不自然で、それは右手の影響が少なからずあったのかもしれない事」「この特異な右手が生み出す歪みは上条当麻の周辺でも存在するが、それは上条の常識で説明できるはずのものという事」の二つを告げている。


ある事件で上条当麻が二つの存在に分かれ、幻想殺しをもう一人の上条に持っていかれた際、かつて先代の幻想殺しを所持していた魔術結社『黄金夜明』の魔術師フォーチュンは、タロットカードと自分の存在を例に出しながら仮説を立てた。


「あなたの右腕にはそれなりの秘密があるのよね。それは図面なのかしら、あるいは力の源?」


「幻想殺しは上条当麻の右手に宿るルールが存在する」という事象に突っ込んだもので、そもそも幻想殺しはどんな基準で上条当麻を選んでいるのかと掘り下げた。

曰く、今存在する二人の上条当麻は互いに何かが欠けた状態にあり、もしかしたら向こうに持っていかれた幻想殺しも完全なものじゃないかもしれない、ということ。

タロットで言うなら、双方共に彷徨う〇番(愚者)

これも、あくまでフォーチュンの仮説に過ぎず、彼女自身もあくまで参考程度に留めておくよう念押ししている。付け加えて『黄金』に所属していた彼女自身も、幻想殺しを正確に読み解けているかは怪しい様子。


正体の推論編集

世界の『基準点』にして『修復点』説編集

現状、最有力説。上記にもある通り、『魔神』に類するオッレルス僧正によると、その正体は全ての魔術師達の怯えと願いが集約したもの

歪められた世界を正す為に存在する『世界の基準点(修復点)』として機能すると言われている。


『魔神』はあまりにも強すぎた。

魔術の神達に宿る「無限」の力はちっぽけな地球だけでなく「世界」単位で影響しており、宇宙全体を思いのままに歪める。

例えば世界を構成する素粒子、あるいは生死の概念、温度や質量、層が異なる重なった世界(位相)……このような根幹部分にさえ作用し世界の在り方を変えてしまう。

それこそ無印1巻での魔神の説明のように1+1=3となり、リンゴは下から上に落下し、死んだ者が生き返る、既存の法則では考えられない歪な世界が誕生する。


同時に魔術師達は歪んだ世界をあるべき形に戻す力を無意識下で願った。

もしも「元の世界」への足掛かりとなる不変的な基準点があれば、リセット地点・バックアップのような力があれば、と。

そんな魔術師達の夢・願い・怯えが凝縮した力が『幻想殺し』として顕れたのである。


魔神やアレイスター曰く、どうやら事象の中心は上条当麻の方にあるらしい。

幻想殺しは事象の中心である神浄の討魔という真名の持ち主、その魂の輝きに惹かれて吸い寄せられたとのこと。


後に、魔神オティヌスが実際にそう扱って世界を元に戻した事、同質の『理想送り』が現れた経緯が判明した事の二点が、この「幻想殺し=世界の基準点」説を後押ししている。

では何故そのような力が存在する? 何が幻想殺しを本当の意味で形創った? そもそも魔神やアレイスターは一体何をどこまで知っている? このように不明な部分もまだまだ多い。


ちなみに幻想殺しと理想送りを形作った願いは、全ての魔術師達のものと表記されるが、大元を辿れば魔神達の願いである。

これは魔術サイドの勢力の99.9%以上を魔神が占めており、世界中の魔術師は彼らの影響を無意識に受けているのだ。


パナケア編集

かつて魔術と科学、双方の技術を扱った組織『グレムリン』を率いた魔神オティヌスは、幻想殺しは人と世界を癒やす役割を持ったものと推測していた。


「マクロな宇宙とミクロな人体は互いにリンクする。これは『黄金』と『薔薇』を貫いている共通の理屈だ。……つまり、拡大解釈さえできるなら人間に効く薬を作れば世界を癒やす事もできるという理屈になってしまう。人間、私が言っている普遍の薬とはそういうモノだよ。セカイの良くない部分を優しく癒やすにせよ、冷たく切り取るにせよ、だ」


浄化する。あるいは討ち滅ぼす。

それは古の魔術結社『薔薇十字』が目指すものであり、かの達人にも当てはめられた。世界の病を治すため、ガラスの棺を砕いて世界を旅し、目的を果たせば自分から元の場所に戻る。

確かにこの性質は、世界の法則を歪ませる異能を打ち消し、切断されても上条当麻の右手に戻る幻想殺しと酷似している。

しかしこの仮説はすぐにオティヌス自身が否定しており、幻想殺しには何か別の価値が眠っている事を示唆した。


テレマ関係説編集

幻想殺しは魔術師アレイスター=クロウリーの計画に組み込まれていた。


クロウリーは禁書でもテレマの法を持論として掲げ、聖守護天使エイワスを召喚して「法の書」が完成した1904年に審判が下り、今の時代は十字教の支配体制が消滅した「次(ホルス)の時代(アイオーン)」であると主張している。


これについて説明すると実在するクロウリーは人が生きる時代をエジプトの神の名を借りて3つに区分しているのだが、この区分は彼が創設した宗教「テレマ教」において重要な意味を持っている。

  • イシスの時代

キリスト教(禁書では十字教)より前の原始宗教の時代。

  • オシリスの時代

キリスト教が支配する時代。

  • ホルスの時代

神に隷属する時代が終わり、人間一人ひとりが真の意志に目覚めて神となる時代。


そして右方のフィアンマの目指していた「神上」は、クロウリーのテレマ的なプランとは近かったらしい。

  • フィアンマ

異形の力で満たされた神殿=ベツレヘムの星を用意する

その中で右腕の力=聖なる右を精練する

その力でもって位相そのものの厚みを再調整し、世界を「天界」に作り変える

  • クロウリー

科学に擬態させたテレマ僧院=異能の力が存在する「学園都市」を創る

その中で上条当麻(?)を活躍させて何かの成長を促す

(学園都市の治安が悪かったり、意外と隙だらけなのも上条を活躍させるため)


しかし、クロウリーが言うには

「オシリスの時代……つまり十字教単一支配下の法則ではなく、その先のホルスの時代をフォーマットに定めていれば、私と似たような地点を目指していたかもしれないな」

「……たかが十字教程度で、あの右手や幻想殺し……そして『神浄(かみじょう)』を説明しようと考えた事。それ自体が、君の失敗だ」

…との事でフィアンマの力は旧時代たる「オシリスの時代」に囚われたままだった。


クロウリーの計画(プラン)で重要になるという設定上、幻想殺しもしくは竜王の顎の正体はテレマ教に関係する何かではないかと予想されている。


上条=ハディート説編集

竜王の顎」「神浄の討魔」「アレイスター=クロウリー」も参照。


禁書黎明期より存在する有名な考察ネタの一つで、テレマの神格ハディートとの記号的対応がかなり多い事で知られる。禁書ではハディト表記である。


本来の力・正しい使用法…?編集

左方のテッラ曰く、今の幻想殺しは本来の性能を発揮できていないらしい。

新約21巻では、「記憶喪失の上条がそうと信じ込んでいる幻想殺し」の力が本当に正しいものなのかと疑問視されている。


先代編集

ブライスロードの秘宝編集

幻想殺しと同質の力は過去にも様々な形で存在していた。

それらがどの時代に生まれ、誰がどんな理由で創ったのかは不明だが時代・神話の転換点にはいつも幻想殺しと同質の力が出現していたようである。


例えば現実の歴史にも刻まれている魔術結社黄金夜明の全盛時代。

19世紀~20世紀にかけて活躍し近代西洋魔術の礎を作った偉大な魔術結社の終焉は、まさに歴史のターニングポイントと言えるだろう。

その時代の幻想殺しは「ブライスロードの秘宝」と呼ばれ、それは矢の形をした究極の追儺霊装として機能していた。


突き刺さっていたのはたった一本の矢であった。

ただし素材は鉄でも木でもない。濁った色のワックスを固めたような何か。先端が歪な五つ又に分かれた、何かを掴もうとする掌のような……。

『鏃は骨、矢羽は革、本体の矢柄は蝋……それもまた、血肉が蝋と化した屍蝋』

つまり。

それこそが。

『幻想殺し。とある聖者の右手を素材に製造された究極の追儺霊装。元は召喚失敗の際に退却せぬ者を魔法陣の向こうへ追い返すために用意されていた秘中の秘となる兵器です』

  ~新約とある魔術の禁書目録18巻~


ミナ=メイザース曰く「異世界から召喚された者を元の世界に追い返す力」

「火花」(魔術の使用から発生する運命)を払う力も持っているらしく、まさに追儺のための霊装であった。

無印終盤でガブリエルを追い返したのは、図らずも正しい使い方の一つであった事になる。


秘宝はブライスロードにある『黄金夜明』の拠点で厳重に保管されていた。

しかし『黄金夜明』に所属する魔術師の内乱(史実上のブライスロードの戦い)でクロウリーが持ち出して使用。メイザースウェストコットを始末した。

メイザースとの決戦の最中に破壊されてしまったが、その力は時代を超えて「別の器」に宿る事になる。


幻想殺しという一つの伝説が『この時代』から消えていく。

どこに? 決まっている、のちに上条当麻へ辿り着くための、別の道へだ。

  ~新約とある魔術の禁書目録18巻~




余談だが、クロウリーが語るところによれば、素材となった遺体は元々別の場所に存在したらしく、それを『黄金』の魔術師達が勝手に盗んで加工したらしい。


『とある聖者』が誰なのか、生前から幻想殺しを持っていたのかは不明。(もし生前から持っているのなら、幻想殺しは持ち主の死後も残留するという事になる。)





コラボでの描写編集

セルフコラボ小説『とある魔術のヘヴィーな座敷童が簡単な殺人妃の婚活事情』では、テュール神の因果律操作を無効化している描写もある。

しかし別のセルフコラボ小説『合コンやってみました。ただしオールスターで世界の危機ではあるけども。』では、『未踏召喚://ブラッドサイン』のヒロイン「白き女王」が世界を消し飛ばした際、上条個人に対しても幻想殺しの力が働いている描写がなかった。


コラボ企画『とある魔術の電脳戦機』では電脳戦機バーチャロンの世界からもたらされたV-クリスタルやリバース・コンバートによる情報の物質化および物質の情報化、精神干渉、ひいてはタングラムの因果律操作のような現象も超絶的テクノロジーや宇宙の法則を超えるような超"科学的原理"で引き起こされた故か幻想殺しでは無効化することができなかった。

※ただ上条がテムジンでやってのけたように幻想殺しの───ひいては上条に宿る力をバーチャロイドの中枢・V-コンバータを介して機体にフィードバックさせる事は可能な模様。


因果律の操作や世界の破壊についてはタングラムや白き女王など、一定の法則を超越した存在を考慮すると「力の強弱」「法則の上下関係」「対象が個人か世界か」「魔術的な現象」という色んな判定が関わってくるものと思われる。


とある魔術の電脳戦機』枠で『スーパーロボット大戦X-Ω』に参戦した際にはコードギアスシリーズのブリタニア騎士にかけられたギアスを打ち消す場面が存在する。こちらは上述した事情もあって、ある意味で『願い』繋がりのクロスオーバーとも言える。逆も同様で、ギアスキャンセラーが幻想殺しと同様の効果を発揮した(とあるシリーズの「能力」とコードギアスの「ギアス」が同一と見なされている世界観のため)。


余談編集

アニメ版では発動時に特徴的なSEが使用されており、かねてから人気が高かったが『とある魔術の禁書目録Ⅲ』ではなぜか変更されF1カーが通り過ぎるような音となっていたため、賛否両論となっていた(変更理由についてはいろいろと大人の事情があった様子)

その後、放送された『とある科学の超電磁砲T』では旧バージョンに近いSE(旧バージョンと比べると甲高い)になっていたため「幻想殺しのSE」がトレンド入りしていた。


関連タグ編集

とある魔術の禁書目録 上条当麻 竜王の顎 神浄の討魔

アレイスター=クロウリー 黄金夜明 セレマ 学園都市(とある魔術の禁書目録)

魔神(とある魔術の禁書目録) 右方のフィアンマ 上里翔流


反魔法(ブラッククローバー):似たような能力。

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