正式名称『対魔術式駆動鎧(Anti-Art Attachment)』。
その役割はレディリー=タングルロード、フロイライン=クロイトゥーネ、『ドラゴン』などの、科学では理解できない領域に対する安全弁であり、万一の際に脳幹が出撃して撃滅することを目的としている。
概要
武装の内容としては刃物、銃、砲に始まり、要塞攻略用大口径レールガン、ガトリング砲、速射砲、大型ミサイルコンテナ、火炎放射器、レーザービーム、ブースター、ドリル、液体窒素、殺人マイクロ波など。
武装単体でも御坂美琴を大きく上回る火力を持つが、その本領はアレイスターの魔術を打ち出すことができること。
弱体化術式も込みであるが、唯一あの魔神を殺害することに成功している。
新約18巻にて第11学区のコンテナに秘匿されたオリジナルパーツを食蜂を連れて分解調査したところ、食蜂曰く内部の電子回路の一部が「おまじないに出てきそうな形」だという。
通電の際、周囲に「魔法陣と類似した磁場」が形成され、この磁場がアンテナとなってアレイスター=クロウリーの力を受信しているらしい。
クロウリーは本来であれば魔神になれる程の力を持つ、言ってみれば準魔神クラスの人物なのだが、A.A.A.はそんな彼の力を放つ為の端末のようなもの。
そのため駆動鎧を名乗っているが、肉体の延長という観点で言えばむしろサイボーグに近い。
恋査の甲体を全能力者に対応したコピー機とすれば、こちらはアレイスターに特化したコピー機といえる。
兵器でありながら魔術の使用を前提としているため、十全な使用には双方の知識が必要となる。
そして現場での運用を一任できるほどの知識を持ち、なおかつ武装を扱える技量を持つ者は、脳幹以外に存在しない。
脳幹は学区一つ一つに専用の武器庫を構えている。
第二三学区のものは学校の体育館よりはるかに大きな航空機の整備場にいくつもの射出用コンテナとそれを牽引する大型トレーラーで空間が埋まっている。
第七学区のものは業務用冷凍倉庫に偽装してあり、電力消費量が大きくとも誰も不思議がらない。
美琴版A.A.A.
新約15巻で美琴は偶然武器庫に立ち入り、脳幹が使用していたA.A.A.のスペアを持ち出している。
このオリジナルパーツは第一一学区のコンテナの中に隠し、それを元に美琴なりのアレンジを加えた改造版を運用している。当時は「大熱波」だったとはいえ常盤台中学に専用のハンガーを設置し常盤台生に整備の手伝いをさせるなど、隠蔽する気はない。なお木原唯一の襲撃を受け、校舎とハンガーは大きな被害を受けた。
A.A.A.の電子制御をハッキングする事で使用可能としたが、美琴は原理や構造をきちんと把握出来てない上、魔術に関わる品なので使用する度に負荷がかかる。今のところは鼻血で済んでいるが、土御門やアクセラレータ、浜面といった例とくらべると、副作用はかなり小さい。
※土御門達の場合は魔術を行使した際に吐血・血涙に加えて、全身の肌から血が吹き出すなど、文字通り命懸けだったので、少量の鼻血や頭痛で済んでいる美琴は、まだ完全には魔術を行使していないと言える。
美琴単体では負荷が大きかったが（具体的には頭部に強い鈍痛を感じるなど）、食蜂操祈と共同で運用する事で負荷の軽減に成功。
装着者に合わせて形状を変化させるため、作中ではジェット機、バイク、トランクなどに変形させている。
なおA.A.A.と接触した美琴はクロウリーにプランの障害となる危険対象と認識され、新約17巻でクロウリーに呪殺されかけた（クロウリー的にはプランで重要なのはクローンの方なので美琴は既に不要なんだとか)。
加えてアレイスターの方から美琴版へのリンクを行わないようにしているため、美琴単体では単なる火力兵器としてしか運用できていない。
テレマ系魔術/Magick
オティヌス曰く、A.A.A.は魔術師アレイスター=クロウリー本式の魔術〈Magick〉の色が濃いらしい。
元ネタのテレマとは、グノーシスを反映した神秘主義(近代魔術思想)の一つ。そのためか旧約3巻でインデックスが学園都市とグノーシスに共通点を見出していた。
テレマ思想を提唱したクロウリーは「魔術とは 意志に従って変化を起こす科学にして業である」と定義しており、これは本作でも引用されている。
〈Magick〉というのは〈ホルスの時代〉における魔術体系で、狭義での〈Magick〉はカバラ的儀式・占星術・ヨーガなどアブノーマルを大いに含む非日常的な魔術行為だが、広義だと〈意志〉下の全ての日常的な行為こそ魔術儀式と定義されている。
琉華の解析によると、
- エジプトの伝承からかけ離れたイシス、オシリス、ホルスの3神
- アブラ・クアタブラの護符(※テレマの性魔術アブラハダブラとは別物)
- 呼び出されし従わぬ者
…など明らかにクロウリー絡みの法則が組み込まれているらしい。
また、美琴が新約18巻でさらに解析を進めると「神浄の討魔」という言葉も見つかっている。
豊山琉華によるとA.A.A.の存在は「世界は統一した理論で説明できてしまう」、科学サイドと魔術サイドという枠組みをぶっ壊す事が出来る代物。
そもそも学園都市は、テレマ僧院を科学に偽装した姿である。元を辿れば「超能力」と称した思春期の心性と薬物作用を網羅した超常誘発方式と「魔術」に境界線はなかった。
その2つが根本的な部分で別の理論に思えたのも、全てはたった一人の邪悪により世界が「魔術」と「科学」に分断されていた為であった。
世界を二分した元凶がアレイスターであり、A.A.A.の根底にもまたアレイスターが存在する。
この時の琉華の考察は作品の根幹に限りなく近いものだったのだろう。
使用者
- 木原脳幹...持ち主。科学と魔術両方の知識を持ち、魔術使用も含めた性能を最大限に発揮できる。
- 御坂美琴...簒奪者。木原唯一との戦いで接触し、ハッキングして持ち出している。
- 木原唯一...エレメントを使い擬似的に再現した。唯一の解釈によるものなので単なる火力兵器であり魔術を使うことはできない。
関連イラスト
余談
御坂美琴にはこれとは別に、娘TYPE誌上の「いまどきのムスメカ」連載で描かれたレールガン装備があり、アーマーガールズプロジェクトで立体化もされていて（デザインは明貴美加）、御坂妹の超電磁投射砲とお揃いのデザインとなっている。しかし、御坂妹の装備が劇場版に登場したのに対し、この装備の存在故かこちらがとあるシリーズのメディアに出たことはなく、超電磁砲とは別に（真の意味合いでの）レールガンの存在についての知名度は高くない。
